幕恋 『高杉晋作 第拾話』
2009年12月10日 携帯アプリ「よいしょ…っと」
まだすやすやと眠っている晋作さんの枕もとにお水と紙包みをそっと用意する。
……なんとか、咳は止まったみたいだけど。
目が覚めたらちゃんと飲ませてあげよう……。昨日みたいにわがまま言われたんじゃ、治るもんも治らないよ。
ため息をついて、晋作さんの寝顔に目をやって。ふと思う。
そう言えば、熱はないのかな……?
確かめようと額に手を伸ばしたその時、晋作さんがゆっくりと目を開く。
そしてしばらく、寝ぼけたようにぼーっとわたしの顔を見つめて何度か瞬きすると呟いた。
「こんな……気分だったのか」
……起き抜けに何??気分がどうしたって???
「何が?」
「ほら、いつかお前の寝顔を見ていたら、起きた途端に怒っただろう?」
ああ……。そう言えばそんなこともあったなぁ……。
寝顔見られた挙句に荷物探られて……(溜息)
「あの時は何故お前がそんなに怒ったのかわからなかったが、ようやくわかった」
口元を押さえる晋作さんの……日頃見慣れない表情にちょっとドキッとする。
照れ……てる??
うわっ!!珍しい~~~っ!
「照れなくていいのに」
「っなっ!」
言葉にあげた顔は、いつもよりも血色が良くて。やっぱり照れているのだと確信する。
たまには、いつもの仕返しでからかっちゃおうかな~♪
「顔、真っ赤だよ?」
「う、五月蝿い!仕方ないだろうが!」
「ふふ。可愛い寝顔だったな~」
「こ、この野郎…覚えていろよ」
晋作さんは視線をそらしつつ、ボソリとそう言う。
一通り晋作さんをからかい終わったら、ふと思い出した。……そう、薬だ。
「いけない、忘れるところだった。晋作さん、はい……これ飲んで」
水と紙包みを晋作さんに手渡すと「苦いんだよな、これ」とかなんとか言って顔をしかめつつ……それでもなんとか飲み干した。
ふぅ、と一つ大きなため息を吐く晋作さんに、内心でわたしもほっとしていた。
これで少しは落ち着いてくれるといいんだけど……。
「ん?そういえば…」
「どうしたの?」
「なんでおまえがこれを持ってるんだ」
……う。
まぁ、確かに疑問に思うよなぁ……(苦笑)
わたしは、例のお祭りの件を桂さんに話すことになって、そうしたらこの薬を手渡されたのだと説明する。
晋作さんは「余計なことを…」なーんて口では言いながら、でも、その顔は心なしか嬉しそうに見えた。
本当に、不思議な関係。晋作さんと、桂さんって。
やっぱりこう……繋がってるって感じ。
「あ!ねぇ、今日は確か大事なことがある日でしょ?」
「あぁ。そうだ」
そう、だからこそこうして衣替えをして、みんなで集まって会合だってしてたわけだから。
……晋作さんの体調は気になるけど、大事なことがあるならしなければならないんだろう。
てか、調子が悪いんだからやめた方がいい……なんて、言ったって聞くわけがない。…確実。
それならせめて。
「だったら、それまでちゃんと休んでいた方がいいよ」
「ん、まぁ確かにそうだ」
納得してくれたらしい晋作さんに、わたしは立ち上がって言う。
「じゃあわたしは他の部屋に行ってるから、ちゃんと寝ておくんだよ?」
「ええっ!?お前は傍にいてくれないのか!!」
まったく!いい大人のクセにそんな甘えた事を!
第一、傍にいてあげたいのはやまやまでも、わたしがいるとすぐそうやってはしゃいで大人しくしてないでしょうに。
「はい、おやすみなさい!」
そう言って、晋作さんを布団へ押し込むとぶーぶー言っている晋作さんを尻目に部屋を出た。
その先の廊下で桂さんに出会った。丁度良かったので、昨日のことを話しておく。
…そして。気になっていた事もある。桂さんに、聞きたいと、思っていた。
「そう…晋作は君に話したのだね?」
「…はい…」
わたしは、晋作さんにはどうしても……直接聞きたかったけど聞けなかったことがあった。
聞けば答えてくれたのかもしれない。でも。
答えさせたくなかった……というか。説明させたくなかったこと。
それを、思い切って桂さんに聞いてみる。
「『ろうがい』って、どんな病気なんですか?」
「晋作本人には聞かなかったのかい?」
わたしが言葉に頷くと、桂さんはニッコリと笑ってみせる。
「本人に問い詰めたりしなかったのは思慮深い事だよ。偉かったね」
そんな風に褒められても、気持ちは重いままだった。
別に、わたしは偉くなんかない。
……それは、説明されなくてもなんとなく感じるものがあったせいでもあったろう。
そして、だからなんとなく、晋作さんの口から聞きたくなかった。
多分、そうなのだ。
「…晋作は、いまでこそああやって元気に振舞っているが、いずれは動けなくなる」
突然話し始めた桂さんの言葉に耳を疑う。
桂さんは、淡々と。続ける。
「その内に体の力も、自由も奪われ……起き上がることさえ、ままならなくなるだろう…」
え???
声が、どこか遠く聞こえる。視界が、闇に包まれる。
「そして……そのまま死に至るかもしれない……。労咳とはそういう病なのだよ…」
えーと……、あれ?
桂さんは、今、誰の話を……???
わたしは今、誰のことを、聞いていたんだっけ……。
桂さんの声が……聞こえる。わたしを呼ぶ声。遠く、遠くから…。
「大丈夫っ?」
「あ…ごめん……なさい」
「話さない方がよかったようだね」
あまりの話に動揺を隠せなかったわたしを見て、桂さんが悲しげに苦笑した。けど。
「いいえ!そんなことありません!」
わたしは、気付いたら大声で叫んでいた。
「わたし、知らなかったら色々後悔しました!だから……ッ!」
驚いて、見開かれた桂さんの目が優しく細められる。
「わかったよ。ありがとう」
……大声を出したら少しだけ落ち着いた。
晋作さんの話……それは事実なんだ。だったら、わたしにできることは受け入れること以外に、ない。
すると、桂さんが静かな口調でまた話し始めた。
「私から頼みがあるんだが」
「なんでしょう」
「もし君が晋作のことを少しでも…憎からず想っているのならば」
「……はい」
「これまでと変わらず、全力で付き合ってやって欲しい」
それは、そのつもりだ。
だって、わたしが晋作さんに出来ることなんてそれくらいしかないんだから。
桂さんは、晋作さんを「同情や憐れみを喜ぶ男ではないから」と、付け加えて優しく笑った。
うん。これまでと変わらずに……いや、これまで以上に晋作さんと目一杯…精一杯一緒にいるんだ…!!!
「出かける支度はできたか!?」
晋作さんの言葉に、わたしは頷いた。わたしたち……晋作さんと、桂さんとわたしは、藩邸に行く為の準備を整えていた。
晋作さんによれば、大久保さんももう着いているはずだという。
「うん。できてる。行こう」
素直に答えたわたしに晋作さんが目を丸くする。
「おいおい、どうした?やけに素直じゃないか!」
「わたしが素直だと、ダメ?」
聞くと、そう言うわけじゃないが…と笑って答える晋作さん。が、ふと笑うのを止めてわたしを見た。
「……はっ!!もしや!!」
「え?な、何?」
「お前…大久保さんに会いたいんじゃ…っ!」
がくーーーっ。
なんで発想がそうなるのかな……。晋作さんの思考回路は計り知れない…!
「そんなワケないじゃないっもう!!」
「よしよし!やっといつもの調子が出てきたな!それでこそお前だ!」
言っていつものように先頭きって歩き出す晋作さん。
チラっと桂さんを振り返ると、やれやれといった表情でこちらを見ていた。……きっと、本当は危ないとか思ってるんだろうなぁ…。
なんだか先が思いやられる…(苦笑)
そんなこんなな複雑な思いを抱えて辿り付いた長州藩邸。出迎えてくれたのは(最初に遭遇しただけ、とも言う)意外なことに大久保さんだった。
「なんだ、田舎の小娘、お前も来たのか」
……のっけから嫌味ッ!?
いやいやいや!しかしここでキレてはいけない…!この人はこういう人!この人はこういう人!(ブツブツ)
「こ、こんにちは。…相変わらず、毒舌が絶好調ですね……」
ささやかなわたしの反撃!
「まぁな。お前が相手だと、私は饒舌になるようだ」
ふふん。と得意げに笑った大久保さんを見て、何故敗北感を感じるんだろう…!!!
とりあえずもう、こんな小さな反撃なんて気付かないんだっ、この人はっ!
そこに、ずいっと晋作さんが割って入る。
「大久保さん、残念だがこいつは大久保さんに会いに来たワケじゃないぜ」
「何故、言い切れる」
すっと目を細める大久保さん。
あああ……。いい大人同士なのに…!この2人が話しているとなんでこんなに緊張するんだろう…っ。
「こいつの口からはっきり聞いたからな!」
それ…ここで言わなくていいでしょう??晋作さん……。
「おい小娘、それは確かか!?」
大久保さんに迫られて、嘘をつくわけにもいかず。視線をそらしながら「あ、はい。言いました~」と答える。
ところが、大久保さんの反応は想像したものからかけ離れていて。何故か嬉しそうに大笑いしている。
怪訝に見つめる晋作さんとわたしの前で、ひとしきり笑い終わった大久保さんがニヤリと笑んだ。
「小娘の照れ隠しは、やはり芸がないな」
なっ!!!
そういう取り方ッ!?
なんでそう都合よく解釈できるの!?ある意味この人すごいよっ!!!(泣)
「……まさか、お前……!」
晋作さんまで間に受ける!?この人もある意味……っ(泣)
「照れ隠しじゃありませんっ!」
答えた言葉にかぶさるようにして晋作さんが真顔で寄って来る。
「本当か!?」
「うん。だって、わたし晋作さんに嘘ついたことないもの」
さらっと答えると、晋作さんは嬉しそうに「確かに!」と答える。
もう……本当にこの人は…。
「わかったらもう大久保さんのからかいに反応しないで!」
「待て。私はからかってなどいない。至って本気だ」
それもどうだ……
本気だと言われたら言われたで恐ろしいよ、大久保さん……!
と、そんなやりとりを今まで黙って聞いていた桂さんがここで口を開いた。
「さて、お二方。昨日と同じ言葉を、もう一度私に言わせたいか?」
……っ!
出たっ!大迫力桂さんっ(命名)
声がっ!雰囲気が!顔がっ……!!!笑顔でも…いや、笑顔だからこそ怖すぎるッ!!!
だけど。多少押されはしたものの、そこはそれ。受ける方もある意味大物な2人だ。
大久保さんも動じる様子はなかったし、晋作さんは「仕方ない…」とかつまらなさそうに言い出して、結局わたしに「いい子で待ってるように」とか言い残してみんなと奥の部屋へと消えていく。
今日は大きな会合だから、と。
言ってたなぁ……、と、庭を見つつぼーっと思った。
と、言うことは時間がかかるってことだ。
もうこの辺にも慣れてきたし、迷子にももうならないと思う。
そう。後は。
「何かあった時のために、もっとこの辺に慣れておきたいんだよね」ええええッ!?またソレ言い出すの!?学習能力ないのかよッ!
わたしは胸の前できゅっと手を握りしめて藩邸の出口へ向かった。
外は今日もいい天気で、爽やかな空気も気持ちいい。
のに。
今は……晋作さんのことばかりが、頭をめぐる。
桂さんから聞いた言葉が頭から離れなくて、ずっと、ずっと響いてる気がしていた。
……わたしは、あんまりにも何も知らなさ過ぎる。
痛感していた。
桂さんから聞いた話を、もっとちゃんと受け止めるには。
きっと、もっと知らなきゃいけないことが沢山あるような気がする。
「晋作さん…」
つい、1人心地で呟いたその時。
通りでばったり出くわしたのは、沖田さんだった。
もちろん、覚えている。この人は晋作さん達の敵で。だからあまり関わらない方がいい事。穏便に、立ち去ろうと思っていたのに。
目の前の沖田さんに晋作さん…梅之助の病状を聞かれて。『労咳』について話をしていたら。
「僕でよければいつでも相談にのるよ?」
なんて言ってくれて。
……その笑顔が優しくて、どこか……人を安心させる何かがあるな、なんて思った。
この時のわたしは、沖田さんが晋作さんの敵…なんてことを忘れて。ただただ、労咳という病について知っている人として、純粋に話をしてみたいな、と思っていたのだ。
誰かを…この思いを打ち明けて、楽になれる誰かを無意識に求めていたのだ。
実質もしかしたら、藩邸を出たのだってそれが理由だったのかもしれない。
だから、沖田さんに「立ち話もなんだから甘味処にでも行きませんか?」と誘われても断らなかった。
────それが、晋作さん達の、敵の発言ではあっても。
そして。
色々話をしているうちに、沸いて来る、疑問。
どうしてこの人が……晋作さんの敵、なんだろう。本当にいい人で。甘いものが好きvとか言っちゃう可愛げなお兄さんなのに。
見知らぬわたしに付き合って、話を聞いてくれる優しい人なのに。
そんな風にぼーっとしていたら、ふと気付いたように沖田さんが外を見る。
「ところで、もう大分暮れてきたけど、大丈夫?」
「え?あ!もうこんな!」
思いがけず話し込んでしまった……!気付けば辺りは夕焼けと夜が混ざり始めていた。注意力なさすぎ~~~(泣)
「いけない!みんな、心配してるかも!」
「じゃあ、僕が家の近くまで送ろうか?」
「あ……!いえ、大丈夫ですっ」
申し出は、それでもなんとか断った。
沖田さんは、いい人だけど。
でも、やっぱり、わたしが晋作さん達の所に居るって分かったら晋作さん達に迷惑をかけるかもしれないんだよね…。
わたしは沖田さんに別れを告げて、長州藩邸への道を急いだ。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「本当に面白い子だな」
時間が経つのを忘れてしまったのは、総司の方かもしれなかった。
こんなに長い間、話しこむつもりなんて少しもなかったのに。
パタパタとかけていく少女の後姿を眺めながら、思わず笑みがこぼれた。
「…ん?」
ふと足元を見ると、色鮮やかなかんざしが落ちている。
彼女の落としたものだろうか。髪は特に結っていないようだったけど。
しかし、逆に考えれば髪に飾らないものを持っている───それは、よっぽど大事だから、なのだろう。
「君も、君の持ち主の所へ戻りたいだろうね」
総司はかんざしを懐へ忍ばせると、彼女の後を追いはじめた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
すっかり暮れてしまった大通りを走って、ようやく土佐藩邸についた。
……もう、会合は終わってるのかな……?
思いながら、中に入ろうとすると入り口を棒で塞がれた。棒を辿って見上げると、怖い顔をした門番の人が立っている。
「あのっ、わたし高杉さんの連れなんです」
出る時に居たかどうか定かではない門番の人に必死で訴えた。
「朝まで中に居て、また帰ってきたんです」
だけど。
門番は口もきかないし、入れてもらえる気配はない。
……どうしよう……どうしたんだろう……。
説得する糸口もこれ以上何も思い浮かばないわたしの前に、藩邸の中から見知った顔が現れる。
「大久保さん!」
良かった。これでわたしが怪しい人じゃないって言ってもらえる!!
「大久保さん、わたし…」
「お前」
わたしの言葉を遮って、大久保さんが話し始めた。
「新撰組の沖田と通じていると言うのは、本当か?」
今までに聞いたことがない、冷たい口調…。冷たい表情。
態度の大きな人、とか…これまで色々思ってたけど。今日の…今の、大久保さんはどれにも当てはまらなくて、まるで知らない人みたいだ。
大久保さんが鼻で笑う。
「ふらふら出歩くお前に子守りのつもりで警護をつけたら、随分突飛な一報だ」
「……」
「……否定は?」
わたしは、思わずうつむいた。
……沖田さんがみんなの敵なのは知っていた。たった今まで一緒に居たのも本当だ。
でも、わたしはそれでもどうしても沖田さんと話がしたかった。
今日、したかったのだ。
……だって、晋作さんの病気のことを……気兼ねなく聞けそうな唯一の…この世界での知り合いで。
でも。
だからこそそれに関して言い訳は出来ないと思った。
わたしは胸の前で手をギュッと握りしめながら、振り絞るように声を出す。
「わたし……さっきまで一緒にいました……。どうしても、どうしても聞きたいことがあったんです。……ごめんなさ」
ダンッ!!!
物音に、びっくりして顔を上げた。
それは大久保さんが脇にあった門壁を殴りつけた音で。
「否定しろと言ったんだっ!!この阿呆がっ!!」
そう言った大久保さんの肩は、わずかに震えていた……。
「どうしたんだ!!」
騒ぎを聞きつけて、藩邸の中から晋作さんと桂さんが飛び出してきた。
「おいっ、何があったんだ!」
「わたし…わたし……」
大久保さんの剣幕に事情がよくわからないわたしでもただならぬモノを感じた。晋作さんの問いにも、身体が震えて言葉が出てこない。
「大久保さん…っ。あんた、こいつに何をしたんだっ!!」
晋作さんがズイッと詰め寄る。
けど、次の瞬間!胸倉を掴まれたのは晋作さんの方だった。
「貴様っ!そんなに大事なら!!」
ちらと、大久保さんがわたしを見た。
「何故この馬鹿女の首に縄でもつけておかないっ!!何故1人で出歩かせたっ!!こいつの周りに気を割かなかった……っ!」
晋作さんも、大久保さんの様子にいつものような茶々を入れることもなく聞いている。
「分からんはずもなかろう!!」
大久保さんは目を見開いて、晋作さんに叫んだ。
「新撰組との関わりが知れた以上!もうこいつを高杉君のところにおいておくわけにはいかんぞっ!!」
大久保さんの言葉で、やっと事態を理解する。
そして、自分の考えの浅はかさも。
そう。敵対している彼らに…どんな事情があったにしろ関わってはダメだったのだ。わたし達の世界で言う『喧嘩』やそういうもので、いがみ合っているわけではないのだから。
けれど、それに気付いたときにはもう既に……手遅れだった……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
って、終わりかよッ!!オイッ!!!な、第拾話でした~(苦笑)
いやいや、続きが気になりすぎて(まぁねぇ…)先に拾壱話冒頭読んでからここ書いちゃったvvお祭りの夜以来の続きが気になる展開でした♪
この後は高杉さんがカッコイイ♪そして、ここまでは大久保さんがカッコイイ(泣)
『否定しろと言ったんだっ!!この阿呆がっ!!』で、ちょっと……オチました(爆)
なんなんでしょうか……。たまらない、オトコマエvvv
今までは晋作さんにかなり傾いてましたけど……大久保さんもイイ…!
日頃と違う熱いカンジもイイと思いますですよ。大久保さん…!
そんで、沖田さんは……あの後、どうしたんでしょうかね……(汗)
バレ……て、ます、よ、ね???
視点が沖田さんに変わらなかったことだけが、そら恐ろしいポイント…??(苦笑)
いっそこのまま制裁として藩邸をたたき出して欲しかった……と、ちょっとだけ、思う……(遠い目)
……主人公、イタすぎ……(げっそり)
今日の選択肢
照れなくていいのに
照れ隠しじゃありません
まだすやすやと眠っている晋作さんの枕もとにお水と紙包みをそっと用意する。
……なんとか、咳は止まったみたいだけど。
目が覚めたらちゃんと飲ませてあげよう……。昨日みたいにわがまま言われたんじゃ、治るもんも治らないよ。
ため息をついて、晋作さんの寝顔に目をやって。ふと思う。
そう言えば、熱はないのかな……?
確かめようと額に手を伸ばしたその時、晋作さんがゆっくりと目を開く。
そしてしばらく、寝ぼけたようにぼーっとわたしの顔を見つめて何度か瞬きすると呟いた。
「こんな……気分だったのか」
……起き抜けに何??気分がどうしたって???
「何が?」
「ほら、いつかお前の寝顔を見ていたら、起きた途端に怒っただろう?」
ああ……。そう言えばそんなこともあったなぁ……。
寝顔見られた挙句に荷物探られて……(溜息)
「あの時は何故お前がそんなに怒ったのかわからなかったが、ようやくわかった」
口元を押さえる晋作さんの……日頃見慣れない表情にちょっとドキッとする。
照れ……てる??
うわっ!!珍しい~~~っ!
「照れなくていいのに」
「っなっ!」
言葉にあげた顔は、いつもよりも血色が良くて。やっぱり照れているのだと確信する。
たまには、いつもの仕返しでからかっちゃおうかな~♪
「顔、真っ赤だよ?」
「う、五月蝿い!仕方ないだろうが!」
「ふふ。可愛い寝顔だったな~」
「こ、この野郎…覚えていろよ」
晋作さんは視線をそらしつつ、ボソリとそう言う。
一通り晋作さんをからかい終わったら、ふと思い出した。……そう、薬だ。
「いけない、忘れるところだった。晋作さん、はい……これ飲んで」
水と紙包みを晋作さんに手渡すと「苦いんだよな、これ」とかなんとか言って顔をしかめつつ……それでもなんとか飲み干した。
ふぅ、と一つ大きなため息を吐く晋作さんに、内心でわたしもほっとしていた。
これで少しは落ち着いてくれるといいんだけど……。
「ん?そういえば…」
「どうしたの?」
「なんでおまえがこれを持ってるんだ」
……う。
まぁ、確かに疑問に思うよなぁ……(苦笑)
わたしは、例のお祭りの件を桂さんに話すことになって、そうしたらこの薬を手渡されたのだと説明する。
晋作さんは「余計なことを…」なーんて口では言いながら、でも、その顔は心なしか嬉しそうに見えた。
本当に、不思議な関係。晋作さんと、桂さんって。
やっぱりこう……繋がってるって感じ。
「あ!ねぇ、今日は確か大事なことがある日でしょ?」
「あぁ。そうだ」
そう、だからこそこうして衣替えをして、みんなで集まって会合だってしてたわけだから。
……晋作さんの体調は気になるけど、大事なことがあるならしなければならないんだろう。
てか、調子が悪いんだからやめた方がいい……なんて、言ったって聞くわけがない。…確実。
それならせめて。
「だったら、それまでちゃんと休んでいた方がいいよ」
「ん、まぁ確かにそうだ」
納得してくれたらしい晋作さんに、わたしは立ち上がって言う。
「じゃあわたしは他の部屋に行ってるから、ちゃんと寝ておくんだよ?」
「ええっ!?お前は傍にいてくれないのか!!」
まったく!いい大人のクセにそんな甘えた事を!
第一、傍にいてあげたいのはやまやまでも、わたしがいるとすぐそうやってはしゃいで大人しくしてないでしょうに。
「はい、おやすみなさい!」
そう言って、晋作さんを布団へ押し込むとぶーぶー言っている晋作さんを尻目に部屋を出た。
その先の廊下で桂さんに出会った。丁度良かったので、昨日のことを話しておく。
…そして。気になっていた事もある。桂さんに、聞きたいと、思っていた。
「そう…晋作は君に話したのだね?」
「…はい…」
わたしは、晋作さんにはどうしても……直接聞きたかったけど聞けなかったことがあった。
聞けば答えてくれたのかもしれない。でも。
答えさせたくなかった……というか。説明させたくなかったこと。
それを、思い切って桂さんに聞いてみる。
「『ろうがい』って、どんな病気なんですか?」
「晋作本人には聞かなかったのかい?」
わたしが言葉に頷くと、桂さんはニッコリと笑ってみせる。
「本人に問い詰めたりしなかったのは思慮深い事だよ。偉かったね」
そんな風に褒められても、気持ちは重いままだった。
別に、わたしは偉くなんかない。
……それは、説明されなくてもなんとなく感じるものがあったせいでもあったろう。
そして、だからなんとなく、晋作さんの口から聞きたくなかった。
多分、そうなのだ。
「…晋作は、いまでこそああやって元気に振舞っているが、いずれは動けなくなる」
突然話し始めた桂さんの言葉に耳を疑う。
桂さんは、淡々と。続ける。
「その内に体の力も、自由も奪われ……起き上がることさえ、ままならなくなるだろう…」
え???
声が、どこか遠く聞こえる。視界が、闇に包まれる。
「そして……そのまま死に至るかもしれない……。労咳とはそういう病なのだよ…」
えーと……、あれ?
桂さんは、今、誰の話を……???
わたしは今、誰のことを、聞いていたんだっけ……。
桂さんの声が……聞こえる。わたしを呼ぶ声。遠く、遠くから…。
「大丈夫っ?」
「あ…ごめん……なさい」
「話さない方がよかったようだね」
あまりの話に動揺を隠せなかったわたしを見て、桂さんが悲しげに苦笑した。けど。
「いいえ!そんなことありません!」
わたしは、気付いたら大声で叫んでいた。
「わたし、知らなかったら色々後悔しました!だから……ッ!」
驚いて、見開かれた桂さんの目が優しく細められる。
「わかったよ。ありがとう」
……大声を出したら少しだけ落ち着いた。
晋作さんの話……それは事実なんだ。だったら、わたしにできることは受け入れること以外に、ない。
すると、桂さんが静かな口調でまた話し始めた。
「私から頼みがあるんだが」
「なんでしょう」
「もし君が晋作のことを少しでも…憎からず想っているのならば」
「……はい」
「これまでと変わらず、全力で付き合ってやって欲しい」
それは、そのつもりだ。
だって、わたしが晋作さんに出来ることなんてそれくらいしかないんだから。
桂さんは、晋作さんを「同情や憐れみを喜ぶ男ではないから」と、付け加えて優しく笑った。
うん。これまでと変わらずに……いや、これまで以上に晋作さんと目一杯…精一杯一緒にいるんだ…!!!
「出かける支度はできたか!?」
晋作さんの言葉に、わたしは頷いた。わたしたち……晋作さんと、桂さんとわたしは、藩邸に行く為の準備を整えていた。
晋作さんによれば、大久保さんももう着いているはずだという。
「うん。できてる。行こう」
素直に答えたわたしに晋作さんが目を丸くする。
「おいおい、どうした?やけに素直じゃないか!」
「わたしが素直だと、ダメ?」
聞くと、そう言うわけじゃないが…と笑って答える晋作さん。が、ふと笑うのを止めてわたしを見た。
「……はっ!!もしや!!」
「え?な、何?」
「お前…大久保さんに会いたいんじゃ…っ!」
がくーーーっ。
なんで発想がそうなるのかな……。晋作さんの思考回路は計り知れない…!
「そんなワケないじゃないっもう!!」
「よしよし!やっといつもの調子が出てきたな!それでこそお前だ!」
言っていつものように先頭きって歩き出す晋作さん。
チラっと桂さんを振り返ると、やれやれといった表情でこちらを見ていた。……きっと、本当は危ないとか思ってるんだろうなぁ…。
なんだか先が思いやられる…(苦笑)
そんなこんなな複雑な思いを抱えて辿り付いた長州藩邸。出迎えてくれたのは(最初に遭遇しただけ、とも言う)意外なことに大久保さんだった。
「なんだ、田舎の小娘、お前も来たのか」
……のっけから嫌味ッ!?
いやいやいや!しかしここでキレてはいけない…!この人はこういう人!この人はこういう人!(ブツブツ)
「こ、こんにちは。…相変わらず、毒舌が絶好調ですね……」
ささやかなわたしの反撃!
「まぁな。お前が相手だと、私は饒舌になるようだ」
ふふん。と得意げに笑った大久保さんを見て、何故敗北感を感じるんだろう…!!!
とりあえずもう、こんな小さな反撃なんて気付かないんだっ、この人はっ!
そこに、ずいっと晋作さんが割って入る。
「大久保さん、残念だがこいつは大久保さんに会いに来たワケじゃないぜ」
「何故、言い切れる」
すっと目を細める大久保さん。
あああ……。いい大人同士なのに…!この2人が話しているとなんでこんなに緊張するんだろう…っ。
「こいつの口からはっきり聞いたからな!」
それ…ここで言わなくていいでしょう??晋作さん……。
「おい小娘、それは確かか!?」
大久保さんに迫られて、嘘をつくわけにもいかず。視線をそらしながら「あ、はい。言いました~」と答える。
ところが、大久保さんの反応は想像したものからかけ離れていて。何故か嬉しそうに大笑いしている。
怪訝に見つめる晋作さんとわたしの前で、ひとしきり笑い終わった大久保さんがニヤリと笑んだ。
「小娘の照れ隠しは、やはり芸がないな」
なっ!!!
そういう取り方ッ!?
なんでそう都合よく解釈できるの!?ある意味この人すごいよっ!!!(泣)
「……まさか、お前……!」
晋作さんまで間に受ける!?この人もある意味……っ(泣)
「照れ隠しじゃありませんっ!」
答えた言葉にかぶさるようにして晋作さんが真顔で寄って来る。
「本当か!?」
「うん。だって、わたし晋作さんに嘘ついたことないもの」
さらっと答えると、晋作さんは嬉しそうに「確かに!」と答える。
もう……本当にこの人は…。
「わかったらもう大久保さんのからかいに反応しないで!」
「待て。私はからかってなどいない。至って本気だ」
それもどうだ……
本気だと言われたら言われたで恐ろしいよ、大久保さん……!
と、そんなやりとりを今まで黙って聞いていた桂さんがここで口を開いた。
「さて、お二方。昨日と同じ言葉を、もう一度私に言わせたいか?」
……っ!
出たっ!大迫力桂さんっ(命名)
声がっ!雰囲気が!顔がっ……!!!笑顔でも…いや、笑顔だからこそ怖すぎるッ!!!
だけど。多少押されはしたものの、そこはそれ。受ける方もある意味大物な2人だ。
大久保さんも動じる様子はなかったし、晋作さんは「仕方ない…」とかつまらなさそうに言い出して、結局わたしに「いい子で待ってるように」とか言い残してみんなと奥の部屋へと消えていく。
今日は大きな会合だから、と。
言ってたなぁ……、と、庭を見つつぼーっと思った。
と、言うことは時間がかかるってことだ。
もうこの辺にも慣れてきたし、迷子にももうならないと思う。
そう。後は。
「何かあった時のために、もっとこの辺に慣れておきたいんだよね」ええええッ!?またソレ言い出すの!?学習能力ないのかよッ!
わたしは胸の前できゅっと手を握りしめて藩邸の出口へ向かった。
外は今日もいい天気で、爽やかな空気も気持ちいい。
のに。
今は……晋作さんのことばかりが、頭をめぐる。
桂さんから聞いた言葉が頭から離れなくて、ずっと、ずっと響いてる気がしていた。
……わたしは、あんまりにも何も知らなさ過ぎる。
痛感していた。
桂さんから聞いた話を、もっとちゃんと受け止めるには。
きっと、もっと知らなきゃいけないことが沢山あるような気がする。
「晋作さん…」
つい、1人心地で呟いたその時。
通りでばったり出くわしたのは、沖田さんだった。
もちろん、覚えている。この人は晋作さん達の敵で。だからあまり関わらない方がいい事。穏便に、立ち去ろうと思っていたのに。
目の前の沖田さんに晋作さん…梅之助の病状を聞かれて。『労咳』について話をしていたら。
「僕でよければいつでも相談にのるよ?」
なんて言ってくれて。
……その笑顔が優しくて、どこか……人を安心させる何かがあるな、なんて思った。
この時のわたしは、沖田さんが晋作さんの敵…なんてことを忘れて。ただただ、労咳という病について知っている人として、純粋に話をしてみたいな、と思っていたのだ。
誰かを…この思いを打ち明けて、楽になれる誰かを無意識に求めていたのだ。
実質もしかしたら、藩邸を出たのだってそれが理由だったのかもしれない。
だから、沖田さんに「立ち話もなんだから甘味処にでも行きませんか?」と誘われても断らなかった。
────それが、晋作さん達の、敵の発言ではあっても。
そして。
色々話をしているうちに、沸いて来る、疑問。
どうしてこの人が……晋作さんの敵、なんだろう。本当にいい人で。甘いものが好きvとか言っちゃう可愛げなお兄さんなのに。
見知らぬわたしに付き合って、話を聞いてくれる優しい人なのに。
そんな風にぼーっとしていたら、ふと気付いたように沖田さんが外を見る。
「ところで、もう大分暮れてきたけど、大丈夫?」
「え?あ!もうこんな!」
思いがけず話し込んでしまった……!気付けば辺りは夕焼けと夜が混ざり始めていた。注意力なさすぎ~~~(泣)
「いけない!みんな、心配してるかも!」
「じゃあ、僕が家の近くまで送ろうか?」
「あ……!いえ、大丈夫ですっ」
申し出は、それでもなんとか断った。
沖田さんは、いい人だけど。
でも、やっぱり、わたしが晋作さん達の所に居るって分かったら晋作さん達に迷惑をかけるかもしれないんだよね…。
わたしは沖田さんに別れを告げて、長州藩邸への道を急いだ。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「本当に面白い子だな」
時間が経つのを忘れてしまったのは、総司の方かもしれなかった。
こんなに長い間、話しこむつもりなんて少しもなかったのに。
パタパタとかけていく少女の後姿を眺めながら、思わず笑みがこぼれた。
「…ん?」
ふと足元を見ると、色鮮やかなかんざしが落ちている。
彼女の落としたものだろうか。髪は特に結っていないようだったけど。
しかし、逆に考えれば髪に飾らないものを持っている───それは、よっぽど大事だから、なのだろう。
「君も、君の持ち主の所へ戻りたいだろうね」
総司はかんざしを懐へ忍ばせると、彼女の後を追いはじめた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
すっかり暮れてしまった大通りを走って、ようやく土佐藩邸についた。
……もう、会合は終わってるのかな……?
思いながら、中に入ろうとすると入り口を棒で塞がれた。棒を辿って見上げると、怖い顔をした門番の人が立っている。
「あのっ、わたし高杉さんの連れなんです」
出る時に居たかどうか定かではない門番の人に必死で訴えた。
「朝まで中に居て、また帰ってきたんです」
だけど。
門番は口もきかないし、入れてもらえる気配はない。
……どうしよう……どうしたんだろう……。
説得する糸口もこれ以上何も思い浮かばないわたしの前に、藩邸の中から見知った顔が現れる。
「大久保さん!」
良かった。これでわたしが怪しい人じゃないって言ってもらえる!!
「大久保さん、わたし…」
「お前」
わたしの言葉を遮って、大久保さんが話し始めた。
「新撰組の沖田と通じていると言うのは、本当か?」
今までに聞いたことがない、冷たい口調…。冷たい表情。
態度の大きな人、とか…これまで色々思ってたけど。今日の…今の、大久保さんはどれにも当てはまらなくて、まるで知らない人みたいだ。
大久保さんが鼻で笑う。
「ふらふら出歩くお前に子守りのつもりで警護をつけたら、随分突飛な一報だ」
「……」
「……否定は?」
わたしは、思わずうつむいた。
……沖田さんがみんなの敵なのは知っていた。たった今まで一緒に居たのも本当だ。
でも、わたしはそれでもどうしても沖田さんと話がしたかった。
今日、したかったのだ。
……だって、晋作さんの病気のことを……気兼ねなく聞けそうな唯一の…この世界での知り合いで。
でも。
だからこそそれに関して言い訳は出来ないと思った。
わたしは胸の前で手をギュッと握りしめながら、振り絞るように声を出す。
「わたし……さっきまで一緒にいました……。どうしても、どうしても聞きたいことがあったんです。……ごめんなさ」
ダンッ!!!
物音に、びっくりして顔を上げた。
それは大久保さんが脇にあった門壁を殴りつけた音で。
「否定しろと言ったんだっ!!この阿呆がっ!!」
そう言った大久保さんの肩は、わずかに震えていた……。
「どうしたんだ!!」
騒ぎを聞きつけて、藩邸の中から晋作さんと桂さんが飛び出してきた。
「おいっ、何があったんだ!」
「わたし…わたし……」
大久保さんの剣幕に事情がよくわからないわたしでもただならぬモノを感じた。晋作さんの問いにも、身体が震えて言葉が出てこない。
「大久保さん…っ。あんた、こいつに何をしたんだっ!!」
晋作さんがズイッと詰め寄る。
けど、次の瞬間!胸倉を掴まれたのは晋作さんの方だった。
「貴様っ!そんなに大事なら!!」
ちらと、大久保さんがわたしを見た。
「何故この馬鹿女の首に縄でもつけておかないっ!!何故1人で出歩かせたっ!!こいつの周りに気を割かなかった……っ!」
晋作さんも、大久保さんの様子にいつものような茶々を入れることもなく聞いている。
「分からんはずもなかろう!!」
大久保さんは目を見開いて、晋作さんに叫んだ。
「新撰組との関わりが知れた以上!もうこいつを高杉君のところにおいておくわけにはいかんぞっ!!」
大久保さんの言葉で、やっと事態を理解する。
そして、自分の考えの浅はかさも。
そう。敵対している彼らに…どんな事情があったにしろ関わってはダメだったのだ。わたし達の世界で言う『喧嘩』やそういうもので、いがみ合っているわけではないのだから。
けれど、それに気付いたときにはもう既に……手遅れだった……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
って、終わりかよッ!!オイッ!!!な、第拾話でした~(苦笑)
いやいや、続きが気になりすぎて(まぁねぇ…)先に拾壱話冒頭読んでからここ書いちゃったvvお祭りの夜以来の続きが気になる展開でした♪
この後は高杉さんがカッコイイ♪そして、ここまでは大久保さんがカッコイイ(泣)
『否定しろと言ったんだっ!!この阿呆がっ!!』で、ちょっと……オチました(爆)
なんなんでしょうか……。たまらない、オトコマエvvv
今までは晋作さんにかなり傾いてましたけど……大久保さんもイイ…!
日頃と違う熱いカンジもイイと思いますですよ。大久保さん…!
そんで、沖田さんは……あの後、どうしたんでしょうかね……(汗)
バレ……て、ます、よ、ね???
視点が沖田さんに変わらなかったことだけが、そら恐ろしいポイント…??(苦笑)
いっそこのまま制裁として藩邸をたたき出して欲しかった……と、ちょっとだけ、思う……(遠い目)
……主人公、イタすぎ……(げっそり)
今日の選択肢
照れなくていいのに
照れ隠しじゃありません
幕恋 『高杉晋作 第九話』
2009年12月9日 携帯アプリ「はぁ…疲れた~」
わたしは一つ大きく伸びをした。
「色々と手伝ってもらってすまなかったね」
声に振り返ると、桂さんが立っていた。すごく新鮮な気分で桂さんを見上げる。
今日の桂さんは、いつもの…着物ではなくて。みんなは『隊服』と呼ぶ、黒い…洋服を身につけていて。ついでに言うなら髪の毛も短くさっぱり切ってて。
そう、随分印象が変わり……わたしにしてみると、時代の違いはともかく馴染みのある格好に変わっている。かっこいい…!!カッコイイよっ!桂さん~~~~っ!!!!
今日は藩邸のみんなが桂さんが着ているみたいな服に衣替えをするというので、一日中手伝いをして過ごしたのだ。朝から藩邸の中は大騒ぎで。今やっと一息…と言う感じだ。
「桂さんもお疲れ様でした」
「今日はとても助かったよ。とりあえずは落ち着いたから、少し休むといい」
「ありがとうございます」
わたしが笑うと、桂さんも笑い……それから肩をすくめる。
「それにしても、みんなを見慣れないのは仕方ないとして、私自身も少々心もとないよ」
「そうなんですか?」
「首元が特に、ね」
あぁ…。なるほど。桂さんは衣替えをするにあたってあんなにキレイだった長い髪をバッサリと切っちゃったのだ。……なんとなく、わかるかも。その気持ち。
「わたしも髪切った時そんな感じしますよ」
言って和やかに笑うわたし達に、横から聞きなれた声が聞こえた。
「おい!オレ様抜きで何を楽しそうに話してやがる!」
わたしは半眼で声の主───晋作さんを見て呟く。
「あ。諸悪の根源…」
「こら!人聞きの悪い事を言うな!」
まるで自分はまったく関係ないかのような態度の晋作さんだが、今日はもう。それはもう大変だったのだ。
わたしがみんなの髪を整えていれば、『断髪式だー!!!』と言ってみんなの髪をめちゃくちゃに切りまくり。届いた隊服をわたしはサイズごとに分けておいたはずなのに、誰かさんがぐちゃぐちゃにしちゃったから結局最初からサイズを探して割り当てることになり。
そう、口ではとても言い表せないくらい大変だったのだ。
「誰だ!そんな事をしたのは!!」
「晋作じゃないか」
「晋作さんだよ」
見事に桂さんとわたしの返答がカブる。
「え!オレかっ!」
晋作さんがびっくりした顔でそういうけど、びっくりは正直こっちだよ…。なんでこうも自覚がないのかなぁ……(苦笑)
呆れるわたしの前で晋作さんは大笑いしている。
「そりゃ、悪かったな!……だが」
ずいっと晋作さんがわたしに顔を寄せる。
「お前がいい動きをしてくれたお陰で、助かった」
……いつだって不意に見せる、真剣な目とか…声。それにドキドキさせられっぱなしのわたしは、呆れた様子を装って聞く。
「晋作さん、反省してる?」
「ああ、してるぞ!」
……どうもそうは見えないんだけどな……。
「あ!その顔は疑っているだろう!」
「だって、とても反省してるように見えないんだもん」
「こーら!このオレを信じろ!」
あいかわらずの、近すぎる距離のままで晋作さんが微笑む。
なんだかもう……何言われても恥ずかしい…!!だから、わたしは「うん」と素直に答えるしかできなかった。
その時、桂さんが口を開く。
「さて。そろそろ彼らも着く頃だ。部屋へ行くよ」
「お。もうそんな時間か。ほら、ついてこい」
「え?あ、うん」
晋作さんに促されて、わたしは2人の後を着いて歩き出す。…誰が来るのかも知らないままで。
部屋にいたのは龍馬さんと慎ちゃん、武市さんだった。みんな、藩邸のみんなと同じ服を着てる。髪もバッサリ切って、現代っぽい!
「みんなも着替えたんですね。すっごく似合ってますっ!」
ほんとにほんとにっ!
特に武市さんと慎ちゃんは髪が長かった分、桂さんと同じようにすごいイメージチェンジだ。慎ちゃんに「格好いいっスか?」と聞かれたわたしは、ものすごい勢いで褒めちぎる。
武市さんは「首筋がなんだか涼しすぎるんだけどね」などと、桂さんと同じことを言っている。
「2人とも、短い髪型すっごくステキです!」
わたしがそう言った時、不満げな声が背後であがる。
「おいおい!なんでそっちのシンちゃんとはそんなに盛り上がるんだ!」
「え?」
振り返ると、幾分拗ねた様子の晋作さん。
「オレの時にはそんなに注目しなかったじゃないか!」
「朝、いっぱい褒めたのに」
晋作さんにそう答えると、またしても背後から不満そうな声が……。
「ワシにも、なんもゆーてくれんね……」
はっ……!!!りょ、龍馬さんっ・・…!!!
確かに、ちょっと、忘れてた、かも…………。
「ご、ごめんなさい。つい……」
いったん言葉を切ってから、わたしは慌てて話を繋ぐ。き、気まずすぎるっ!!!!
「そ、それより、今日はみんなどうしたんですか?」
強引過ぎる話題の転換に、のってくれたのは武市さんだった。
「明日、重要な会合があるんだ」
「そうそう。このあと、大事なお客様も来るんぜよ」
あぁ…、そうなのか。すると、これからその打ち合わせかな?
「じゃあわたし、そろそろ自分の部屋に戻って……」
これぞ天の助けと言おうか。会合の打ち合わせなんかにわたしが居ても仕方がない…と言うか。そう言って部屋を出ようとしたわたしの腕を強引に引っ張る手。
「きゃっ!」
バランスを崩したわたしは、そのまま腕を引っ張った人物の膝の上にすっぽりと収まる形で座り込んでしまった。
誰かなんて考えるまでもない。こんな無茶な真似するのは。
「晋作さん!あ、危ないよっ!」
わたしはこの状態が恥ずかしくて晋作さんの膝の上からもがいて降りようとする
……けど。
「お前はここでいい」
晋作さんはさも当然のように言って、わたしを後ろからふわりと抱え込んだ。
「え…」
そ、そんなこと言われたって、きっとこれから大事な話し合いでしょ?それをこんな…わたしは晋作さんの膝の上で??
あっ、ありえないよっ!!!こんなシチュエーション!
ジタバタするわたしを逃がすまいとするみたいに、晋作さんはぎゅうっと抱え込んでくる。
どどど……どうしたらっ!!!!(悲鳴)
「高杉さん、一緒に居たい気持ちはわかったが、こん子は話を聞かせない方がええ」
「えー!いたって構わないだろ!」
子供のようにそう言って、晋作さんは相変わらずわたしを離そうとしない。
わたしは、身動きも出来ないほどきつく晋作さんに抱きしめられてしまって。……ふと気付いたけどわたしの首のあたりには晋作さんの顔がっ……かおっ…!!!
心臓がドキドキして、自分でも鼓動の音がうるさいくらいだ。
こんなにドキドキしてたら、晋作さんにも気付かれるよぉ~~~~っ!!!!
「ここの話を知る人間にしてしまったら、危険に巻き込むことになる」
龍馬さんの説得はそれなりに晋作さんに届いたらしい。唸った晋作さんの腕が幾分ゆるくなる。
そこで桂さんがダメ押しとばかりに口を開いた。
「あ。それともう一つ。これから来るお客さんの部屋の準備を彼女に頼みたかったんだ。……借りても構わないかな?」
その言葉に、ようやく晋作さんがわたしを解放する。
途端、わたしは晋作さんの膝の上から転がるように離れた。
だっ……だめだ!顔が熱くて、クラクラするっ!!!
自分でも赤面していることを自覚しているわたしは「準備に行ってきます!」と明後日の方向を向いて言い放ち、バタバタと部屋を後にする。
そして、廊下に出てから大きく一つ深呼吸をした。
相変わらずドキドキは治まらない。顔が、熱い。
抱きしめる腕のたくましさとか、わたしがすっぽり納まってしまう腕の中とか……。彼氏もいない高校生には刺激が強すぎる…!!!(笑)
自分でもおかしいとわかるくらいにぎこちない歩みで、わたしは自分を落ち着けるために歩き出した。ら。
「小娘!」
と声をかけられた。……そんな呼び方をするのはこの世にただ1人。
「大久保さ……ん?」
これが漫画とかなら『コチーン』とか擬音があてられそうなほど。見事なほどに硬直してわたしは大久保さんを見た。
大久保さんも、着替えてる……っていうか。…何かが、強烈に…違う。何なんだろう。
「人の顔を見ながら固まるな!無礼者!」
ああ……この上から目線、確実に本物の大久保さんだ……って、目線!?
「あーっ!!」
「!?」
いきなり叫んだわたしに今度は大久保さんが硬直する。
「目が出てる!!」
「はっ?」
「大久保さん、髪切って目が出てます!」
思わず指差したわたしの手を「人に指を向けるな!」と払われた。そうして大久保さんがいつものようにふんぞり返る。
「すみません…つい」
素直に謝ったわたしの目に、今まで気付かなかったのがおかしいくらい存在感のある人物が立っていた。…ちょうど、大久保さんの後ろだ。
目が合うと、にこりと笑って挨拶をしてくれる。
「こんにちは」
「こ、こんにちは!」
随分と大柄な人だ。……気付かないなんて、どう考えてもすごい動揺してたとしか思えない…。
……晋作さんのせいで。
「私の古くからの友人、西郷隆盛だ」
西郷?うーん。どこかで聞いた名前だなぁ…。って西郷隆盛知らないなんて(以下割愛)
なんだろ。最近CMとか…何かで。
「あ!犬の人だ!」
「犬の人?」
怪訝そうに問い返してくる大久保さんを、わたしは笑って誤魔化した。あはは…そうだそうだ。TVの話なんてわかるわけないじゃん。
肩身がどんどん狭くなるわたしに、西郷さんはやさしく話し掛けてくれる。
「おはん、長州人かい?」
「あ、いえ」
そりゃ、この藩邸にいるんだからそう思うよね。なんと答えたものかと悩んでいたら、ぼそっと大久保さんが口を挟む。
「家出娘だ」
「ち、違います!」
「家出娘で田舎娘だろう」
カッチーン!!!
「田舎娘!?なんでですか!!」
「そんな真っ赤な顔をして、田舎娘そのままだ」
フフン。とでも笑いたげな大久保さんの視線から避けるようにしてわたしは頬を触る。
うわ…。まだわたし顔赤いんだ……。重症だよ……(泣)
「そう言えば、お前は一体いつまでここにいるんだ?」
「え?」
突然。
冷水でもかけられたかのように身体が冷えていく。
いつまで。
それは、考えなくちゃいけないことだったハズなのに、逃げていたことだった。
あの神社も見つかって……なのに、わたしは……あれから一度も行こうとしていない。いや、連れて行こうとしてくれた晋作さんでさえ止めて。
……行くのを、嫌がって……?
「どうした?」
大久保さんがわたしの顔を覗き込んでくる。態度は大きな人だけど、時々すごくうがったことを聞いて来る人だ、と思う。
まるで、わざとそう仕向けているかのようだ。
「…ふん。口にだせんか」
「……すみません……」
謝って俯くだけのわたしに、強い声が聞こえてくる。
「お前の居たい場所を言ってみろ」
顔を上げる。
「……居たい、場所?」
「居たい場所が無い訳はあるまい。簡単な答えだ」
わたしの居たい…場所。…………わたし、の……。
わからない。
答えがどこにあるのか、わからない。大久保さんの言う通り、簡単なはずの問いかけだった。少なくともこの世界に来た当初、居たい場所はもとのあの世界…あの場所に他ならなかったハズで。
なのに、今は答えがすぐに出せずにいる。……何故か。
「おなごにそれほど手厳しいとは。珍しいな、利通」
苦笑しながら西郷さんがそう言う。
…てか、珍しい!?え……?出会った時から彼はこうだし、全体的にみなさんに上から目線でお話になっている所しか見たことないんですがっ!?
「こいつはいいんだ。まぁ、もっとも当然私の元へ身を寄せたいと言うのだろうがな!」
「おい!待ちやがれ!」
「し、晋作さん?」
いつの間に来ていたのやら、現れた晋作さんにびっくりする。
「さーて、こいつへの手出しは大久保さんでも見逃せねぇぞ?」
し…晋作さん……。目が笑ってないんですけど……(泣)
「ほぉ?それは面白い。どう見逃せないのか聞かせてもらいたいものだ」
返す大久保さんも、満面の笑顔がかえって凄みをきかせてて怖い……っ!
「お取り込みのところ、失礼」
そんな2人の間に割って入ってきたのは、他の誰でもない桂さんだった。彼は、大きく息をつくと、2人を見据えて口を開く。
「長州藩、高杉晋作殿。薩摩藩、大久保利通殿。お二方共、明日は何の日か、お分かりか?」
桂さんの静かな言葉に、一瞬空気が張る。
晋作さんと大久保さんの表情を見た桂さんが、そこでふっと笑んだ。
「分かっておいでなら結構。さ、部屋へ」
…なんだかよくわからないけど、すごい迫力……。
みんな大人しく部屋へ入っていく。
多分ここに居たのが誰だったとしても、今のには逆らえなかったと思うよ…(苦笑)それくらい、すごかった。
硬直したままのわたしに向かって、今度はいつものように微笑んで
「悪かったね。君は自分の部屋でゆっくりしておいで」
言われて、わたしは何の為にあの部屋を抜けたのかを唐突に思い出した。
「あ!あのっ!わたし、部屋の準備とか出来てなくて!」
わたしがおずおずとそう言うと、桂さんが優しく笑う。
「ああ、あれかい?あれは単なる方便だよ。君を出してあげたくてね」
ああ。なんだ、そうだったんだ。
納得するわたしに笑いかけると、桂さんも部屋に戻っていく。
障子の閉まる音が聞こえて、力が抜けた。
そうして、一人残された廊下でさっきの大久保さんの言葉が頭をよぎる。
わたしの……本当に居たい場所。
それはまだ……今はまだ、見つけられないような気が、していた。
夜になって、昼間みんなが話し合いをしていた部屋の前を通りかかる。そこで、ばったり桂さんに出会った。けど、1人みたい??
話を聞くと、寺田屋組はもう帰ってしまったらしく、残りは奥の部屋で酒盛りの真っ最中…とのこと。
ってことは、晋作さんも、かな?
チラと奥の部屋に目をやると、桂さんが言う。
「気になるかも知れないが、男だらけの乱暴な場だ。君は部屋にいなさい。いいね?」
「は…はい」
「いい子だ」
言って、桂さんも奥の部屋に入っていく。
……っていうか、昼間の一件から妙な迫力を感じちゃうんだよね~。桂さん。
さっきだって、有無は言わせません。みたいな迫力だったし。。。
とりあえず、喉が渇いただけなわけだし。水を飲んだら部屋に戻ろうっと。
そう思って廊下の角を曲がろうとしたところ、死角の方からきた晋作さんとぶつかった。
「晋作さ……えっ?」
ぐらり、と。晋作さんの身体がわたしにもたれるように崩れた。
慌てて支えるわたしに、ぷーんとお酒の匂いがする。
「…晋作さん……飲み過ぎたの?」
呆れながらそう言うわたしの背中側で、急に晋作さんが咳き込み始めた。
「…ごほっ…ごほっごほっごほっごほ!」
「!?晋作さん!!」
あの夜と同じように、激しく咳き込み始める晋作さん。無意識に掴まれる腕が痛い。
「晋作さん!晋作さん!大丈夫!?」
問いかけても、答える余裕もなく咳き込みつづける晋作さん。
そこで、わたしは思い出した。桂さんにもらった、あの紙包みを。
ポケットに手を突っ込んで取り出し、震える手で開く。
「晋作さん、待っててね!今……あ」
これ、粉だから水がなくちゃいくらなんでも飲めない…。
咳き込む晋作さんを横から覗き込んで声をかける。
「晋作さん。今水を取ってくるから少しだけ待ってて」
言ってそこから離れようとしたわたしの手を晋作さんが掴んだ。
「行く……な」
「でもっ!」
「部屋に行く…肩を貸してくれ」
苦しそうな息の中で、搾り出すような声で喋る晋作さん。
ああ…確かに、こんな晋作さんを廊下に1人残しておくなんてできない…。
わたしは、紙包みをしまって晋作さんの腕を取る。彼の腕を首にかけて、全力で立ち上がらせた。
「しっかり掴まってね」
ここからなら、わたしの部屋が一番近い。早く寝かせてあげないと…!
必死で支えて、なんとかわたしの部屋へ。
「晋作さん、横になれる?」
「ん……」
わたしは、晋作さんの身体を離さないようにゆっくりと畳に近づけていく。
「っ!ごほっ!」
その時、また晋作さんが大きく咳き込んで。不自然な体勢でなんとか保っていたわたしのバランスが崩れた。
そのまま2人で畳の上に倒れこんでしまう。
「げほっ……!」
支えようとした都合上晋作さんにのしかかられるように倒れこんだわたしから、上半身だけ起き上がるけど、それでも彼は私の膝の上で苦しそうに咳き込む。
は、早く、薬を飲ませなきゃ!!
「晋作さん、水とって来るから、膝から下ろすよ?」
「イヤ…だ……」
ぎゅうっとスカートを握ったままで。子供のように晋作さんが呟く。
「でも、薬飲まなきゃ……」
言いかけた言葉は、咳き込む晋作さんの辛そうな声で掻き消える。
なんで……。
どんなに頼んでも、晋作さんはわたしの膝の上からガンとして動かない。…離さない。
「お願いだから、晋作さんっ!」
声を荒げたその時、彼が何かを呟いた。
「……た……か?」
「え?」
「幻滅した……か?と、聞いた……」
膝の上で。寂しそうに……そう、言う晋作さん。
「な、何言ってるのっ」
「は…はは……。情けない姿だし……な」
呟く晋作さんに、わたしはキレた。
「馬鹿っ!」
「ば、馬鹿!?」
晋作さんは咳き込みながらも、顔を上げ、わたしの言葉に驚いた表情を浮かべている。
「こんな時に何を言うかと思えば、そんな馬鹿なこと…だいたい!」
「…だいたい?」
「晋作さんの無神経さには毎日幻滅しているしっ!1日10回くらいは幻滅してるんだからっ!……今更幻滅とか遅すぎるよ」
すごい勢いで言い切ったわたしに、呆然とする晋作さん。
と、不意に笑い始める。
「はははっ。病人にかける言葉じゃないな」
その言葉で……一つの事実が確定して。わたしは、重い口を開いた。
「…晋作さん……。やっぱり、病気なの?」これが病気じゃなかったらなんなのよっ(泣)
晋作さんは、苦笑気味に答える。
「あぁ。そうだ……。オレのこれを知っているのは…小五郎と坂本だけだ」
桂さんは、やっぱり知っていたんだ……。
「…女では、お前だけだぞ?」
それは喜ぶべきことなんだろうか……?よく、わからないけど。
冗談めかして言う彼に、わたしは問う。
「その……なんて病気?」
晋作さんは、答えにくそうにやや視線をはずして……それでも答えてくれる。
「……ろうがいだ……」
聞き覚えのある単語。沖田さんが言ってたのは、あれだったんだ……。
「ごほっごほっ!げほっ!」
「!?」
また咳き込む晋作さんに、我に帰る。
そうだよっ!!今そんなこと聞いたり…話してる場合じゃない!わたしは、わたしに出来ることをしなくっちゃ!
「晋作さん!水を取りに行かせて!」
「なぁ……」
必死でお願いするのに、晋作さんはそんなのどこ吹く風だ。いつもなら、飄々としてることを評価するところなんだろうけど、今回は一体……っ。
「オレがこんな姿見せられるのは、お前だけなんだぞ?」キター!!!殺し文句ッ!!!
「…晋作さん……」
「小五郎にだって、こんなところは見せた事がない。だから…」
ふわっと、晋作さんが身を伏せて。わたしの腰を抱くようにして膝の上で呟く。
「もうしばらく、こうしていさせろ」
そのまま、辛そうに咳き込みつづける晋作さん。『辛』と『幸』って漢字似てるよね……。好きな子の膝の上で、晋作はそれでも幸せだったろうと妄想してしまう(爆)
───わたしは。何も出来ずにただ、ひたすら晋作さんの背中をさすりつづける…。
どうしたら……どうしたら、晋作さんを助けてあげられるの……?
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ハイ!そんなこんなな九話でしたー!!!
晋作さん……結核…大丈夫なんスかね……(苦笑)史実では……若くして亡くなってますけどその……主人公ちゃんとは幸せな未来があるんでしょうかね!(笑)
…いや、まぁ、大丈夫か。乙女ゲーだしな(笑)
もう、日ごとに晋作が可愛く見えて仕方ねぇ……っ!!!(誰だ!アンタ)
「馬鹿ッ」とか主人公に言われて花がとんでる絵を見てマゾ?とかちょっと思ったり思わなかったり。
ハッ!!!
してみるとアレか。労咳の薬飲まないのもそういうプレ……(自主規制)
こほん!
あと、もうちょっと主人公に傾く過程が自然だったら言うことなかったなッ!!!
読んでくださってればわかる……かも知れないし、(そういう…メインストーリーに関わらない部分を端折ってるので)わからないかもしれませんが(爆)今回の幕恋は、逆ハーみたいなテイストなんですごく……むず痒いです。。。軽~く、取り合ってくれますv
大久保さんとか…イイよなぁ……。
執恋における山科さんを思い出すキャラだ……。
それに、武市さんもイイッ!今日、髪を切った姿を見て……たまらなくなりました。
はぁ~…、次回攻略は武市さんにしよう♪
って!!!晋作攻略、まだなんですけどっ(笑)
あと……4、5日あるか、ないか。
楽しんでやっていきたいと思いますvvv
今日の選択肢
もう。反省してる?
馬鹿!(花)
わたしは一つ大きく伸びをした。
「色々と手伝ってもらってすまなかったね」
声に振り返ると、桂さんが立っていた。すごく新鮮な気分で桂さんを見上げる。
今日の桂さんは、いつもの…着物ではなくて。みんなは『隊服』と呼ぶ、黒い…洋服を身につけていて。ついでに言うなら髪の毛も短くさっぱり切ってて。
そう、随分印象が変わり……わたしにしてみると、時代の違いはともかく馴染みのある格好に変わっている。かっこいい…!!カッコイイよっ!桂さん~~~~っ!!!!
今日は藩邸のみんなが桂さんが着ているみたいな服に衣替えをするというので、一日中手伝いをして過ごしたのだ。朝から藩邸の中は大騒ぎで。今やっと一息…と言う感じだ。
「桂さんもお疲れ様でした」
「今日はとても助かったよ。とりあえずは落ち着いたから、少し休むといい」
「ありがとうございます」
わたしが笑うと、桂さんも笑い……それから肩をすくめる。
「それにしても、みんなを見慣れないのは仕方ないとして、私自身も少々心もとないよ」
「そうなんですか?」
「首元が特に、ね」
あぁ…。なるほど。桂さんは衣替えをするにあたってあんなにキレイだった長い髪をバッサリと切っちゃったのだ。……なんとなく、わかるかも。その気持ち。
「わたしも髪切った時そんな感じしますよ」
言って和やかに笑うわたし達に、横から聞きなれた声が聞こえた。
「おい!オレ様抜きで何を楽しそうに話してやがる!」
わたしは半眼で声の主───晋作さんを見て呟く。
「あ。諸悪の根源…」
「こら!人聞きの悪い事を言うな!」
まるで自分はまったく関係ないかのような態度の晋作さんだが、今日はもう。それはもう大変だったのだ。
わたしがみんなの髪を整えていれば、『断髪式だー!!!』と言ってみんなの髪をめちゃくちゃに切りまくり。届いた隊服をわたしはサイズごとに分けておいたはずなのに、誰かさんがぐちゃぐちゃにしちゃったから結局最初からサイズを探して割り当てることになり。
そう、口ではとても言い表せないくらい大変だったのだ。
「誰だ!そんな事をしたのは!!」
「晋作じゃないか」
「晋作さんだよ」
見事に桂さんとわたしの返答がカブる。
「え!オレかっ!」
晋作さんがびっくりした顔でそういうけど、びっくりは正直こっちだよ…。なんでこうも自覚がないのかなぁ……(苦笑)
呆れるわたしの前で晋作さんは大笑いしている。
「そりゃ、悪かったな!……だが」
ずいっと晋作さんがわたしに顔を寄せる。
「お前がいい動きをしてくれたお陰で、助かった」
……いつだって不意に見せる、真剣な目とか…声。それにドキドキさせられっぱなしのわたしは、呆れた様子を装って聞く。
「晋作さん、反省してる?」
「ああ、してるぞ!」
……どうもそうは見えないんだけどな……。
「あ!その顔は疑っているだろう!」
「だって、とても反省してるように見えないんだもん」
「こーら!このオレを信じろ!」
あいかわらずの、近すぎる距離のままで晋作さんが微笑む。
なんだかもう……何言われても恥ずかしい…!!だから、わたしは「うん」と素直に答えるしかできなかった。
その時、桂さんが口を開く。
「さて。そろそろ彼らも着く頃だ。部屋へ行くよ」
「お。もうそんな時間か。ほら、ついてこい」
「え?あ、うん」
晋作さんに促されて、わたしは2人の後を着いて歩き出す。…誰が来るのかも知らないままで。
部屋にいたのは龍馬さんと慎ちゃん、武市さんだった。みんな、藩邸のみんなと同じ服を着てる。髪もバッサリ切って、現代っぽい!
「みんなも着替えたんですね。すっごく似合ってますっ!」
ほんとにほんとにっ!
特に武市さんと慎ちゃんは髪が長かった分、桂さんと同じようにすごいイメージチェンジだ。慎ちゃんに「格好いいっスか?」と聞かれたわたしは、ものすごい勢いで褒めちぎる。
武市さんは「首筋がなんだか涼しすぎるんだけどね」などと、桂さんと同じことを言っている。
「2人とも、短い髪型すっごくステキです!」
わたしがそう言った時、不満げな声が背後であがる。
「おいおい!なんでそっちのシンちゃんとはそんなに盛り上がるんだ!」
「え?」
振り返ると、幾分拗ねた様子の晋作さん。
「オレの時にはそんなに注目しなかったじゃないか!」
「朝、いっぱい褒めたのに」
晋作さんにそう答えると、またしても背後から不満そうな声が……。
「ワシにも、なんもゆーてくれんね……」
はっ……!!!りょ、龍馬さんっ・・…!!!
確かに、ちょっと、忘れてた、かも…………。
「ご、ごめんなさい。つい……」
いったん言葉を切ってから、わたしは慌てて話を繋ぐ。き、気まずすぎるっ!!!!
「そ、それより、今日はみんなどうしたんですか?」
強引過ぎる話題の転換に、のってくれたのは武市さんだった。
「明日、重要な会合があるんだ」
「そうそう。このあと、大事なお客様も来るんぜよ」
あぁ…、そうなのか。すると、これからその打ち合わせかな?
「じゃあわたし、そろそろ自分の部屋に戻って……」
これぞ天の助けと言おうか。会合の打ち合わせなんかにわたしが居ても仕方がない…と言うか。そう言って部屋を出ようとしたわたしの腕を強引に引っ張る手。
「きゃっ!」
バランスを崩したわたしは、そのまま腕を引っ張った人物の膝の上にすっぽりと収まる形で座り込んでしまった。
誰かなんて考えるまでもない。こんな無茶な真似するのは。
「晋作さん!あ、危ないよっ!」
わたしはこの状態が恥ずかしくて晋作さんの膝の上からもがいて降りようとする
……けど。
「お前はここでいい」
晋作さんはさも当然のように言って、わたしを後ろからふわりと抱え込んだ。
「え…」
そ、そんなこと言われたって、きっとこれから大事な話し合いでしょ?それをこんな…わたしは晋作さんの膝の上で??
あっ、ありえないよっ!!!こんなシチュエーション!
ジタバタするわたしを逃がすまいとするみたいに、晋作さんはぎゅうっと抱え込んでくる。
どどど……どうしたらっ!!!!(悲鳴)
「高杉さん、一緒に居たい気持ちはわかったが、こん子は話を聞かせない方がええ」
「えー!いたって構わないだろ!」
子供のようにそう言って、晋作さんは相変わらずわたしを離そうとしない。
わたしは、身動きも出来ないほどきつく晋作さんに抱きしめられてしまって。……ふと気付いたけどわたしの首のあたりには晋作さんの顔がっ……かおっ…!!!
心臓がドキドキして、自分でも鼓動の音がうるさいくらいだ。
こんなにドキドキしてたら、晋作さんにも気付かれるよぉ~~~~っ!!!!
「ここの話を知る人間にしてしまったら、危険に巻き込むことになる」
龍馬さんの説得はそれなりに晋作さんに届いたらしい。唸った晋作さんの腕が幾分ゆるくなる。
そこで桂さんがダメ押しとばかりに口を開いた。
「あ。それともう一つ。これから来るお客さんの部屋の準備を彼女に頼みたかったんだ。……借りても構わないかな?」
その言葉に、ようやく晋作さんがわたしを解放する。
途端、わたしは晋作さんの膝の上から転がるように離れた。
だっ……だめだ!顔が熱くて、クラクラするっ!!!
自分でも赤面していることを自覚しているわたしは「準備に行ってきます!」と明後日の方向を向いて言い放ち、バタバタと部屋を後にする。
そして、廊下に出てから大きく一つ深呼吸をした。
相変わらずドキドキは治まらない。顔が、熱い。
抱きしめる腕のたくましさとか、わたしがすっぽり納まってしまう腕の中とか……。彼氏もいない高校生には刺激が強すぎる…!!!(笑)
自分でもおかしいとわかるくらいにぎこちない歩みで、わたしは自分を落ち着けるために歩き出した。ら。
「小娘!」
と声をかけられた。……そんな呼び方をするのはこの世にただ1人。
「大久保さ……ん?」
これが漫画とかなら『コチーン』とか擬音があてられそうなほど。見事なほどに硬直してわたしは大久保さんを見た。
大久保さんも、着替えてる……っていうか。…何かが、強烈に…違う。何なんだろう。
「人の顔を見ながら固まるな!無礼者!」
ああ……この上から目線、確実に本物の大久保さんだ……って、目線!?
「あーっ!!」
「!?」
いきなり叫んだわたしに今度は大久保さんが硬直する。
「目が出てる!!」
「はっ?」
「大久保さん、髪切って目が出てます!」
思わず指差したわたしの手を「人に指を向けるな!」と払われた。そうして大久保さんがいつものようにふんぞり返る。
「すみません…つい」
素直に謝ったわたしの目に、今まで気付かなかったのがおかしいくらい存在感のある人物が立っていた。…ちょうど、大久保さんの後ろだ。
目が合うと、にこりと笑って挨拶をしてくれる。
「こんにちは」
「こ、こんにちは!」
随分と大柄な人だ。……気付かないなんて、どう考えてもすごい動揺してたとしか思えない…。
……晋作さんのせいで。
「私の古くからの友人、西郷隆盛だ」
西郷?うーん。どこかで聞いた名前だなぁ…。って西郷隆盛知らないなんて(以下割愛)
なんだろ。最近CMとか…何かで。
「あ!犬の人だ!」
「犬の人?」
怪訝そうに問い返してくる大久保さんを、わたしは笑って誤魔化した。あはは…そうだそうだ。TVの話なんてわかるわけないじゃん。
肩身がどんどん狭くなるわたしに、西郷さんはやさしく話し掛けてくれる。
「おはん、長州人かい?」
「あ、いえ」
そりゃ、この藩邸にいるんだからそう思うよね。なんと答えたものかと悩んでいたら、ぼそっと大久保さんが口を挟む。
「家出娘だ」
「ち、違います!」
「家出娘で田舎娘だろう」
カッチーン!!!
「田舎娘!?なんでですか!!」
「そんな真っ赤な顔をして、田舎娘そのままだ」
フフン。とでも笑いたげな大久保さんの視線から避けるようにしてわたしは頬を触る。
うわ…。まだわたし顔赤いんだ……。重症だよ……(泣)
「そう言えば、お前は一体いつまでここにいるんだ?」
「え?」
突然。
冷水でもかけられたかのように身体が冷えていく。
いつまで。
それは、考えなくちゃいけないことだったハズなのに、逃げていたことだった。
あの神社も見つかって……なのに、わたしは……あれから一度も行こうとしていない。いや、連れて行こうとしてくれた晋作さんでさえ止めて。
……行くのを、嫌がって……?
「どうした?」
大久保さんがわたしの顔を覗き込んでくる。態度は大きな人だけど、時々すごくうがったことを聞いて来る人だ、と思う。
まるで、わざとそう仕向けているかのようだ。
「…ふん。口にだせんか」
「……すみません……」
謝って俯くだけのわたしに、強い声が聞こえてくる。
「お前の居たい場所を言ってみろ」
顔を上げる。
「……居たい、場所?」
「居たい場所が無い訳はあるまい。簡単な答えだ」
わたしの居たい…場所。…………わたし、の……。
わからない。
答えがどこにあるのか、わからない。大久保さんの言う通り、簡単なはずの問いかけだった。少なくともこの世界に来た当初、居たい場所はもとのあの世界…あの場所に他ならなかったハズで。
なのに、今は答えがすぐに出せずにいる。……何故か。
「おなごにそれほど手厳しいとは。珍しいな、利通」
苦笑しながら西郷さんがそう言う。
…てか、珍しい!?え……?出会った時から彼はこうだし、全体的にみなさんに上から目線でお話になっている所しか見たことないんですがっ!?
「こいつはいいんだ。まぁ、もっとも当然私の元へ身を寄せたいと言うのだろうがな!」
「おい!待ちやがれ!」
「し、晋作さん?」
いつの間に来ていたのやら、現れた晋作さんにびっくりする。
「さーて、こいつへの手出しは大久保さんでも見逃せねぇぞ?」
し…晋作さん……。目が笑ってないんですけど……(泣)
「ほぉ?それは面白い。どう見逃せないのか聞かせてもらいたいものだ」
返す大久保さんも、満面の笑顔がかえって凄みをきかせてて怖い……っ!
「お取り込みのところ、失礼」
そんな2人の間に割って入ってきたのは、他の誰でもない桂さんだった。彼は、大きく息をつくと、2人を見据えて口を開く。
「長州藩、高杉晋作殿。薩摩藩、大久保利通殿。お二方共、明日は何の日か、お分かりか?」
桂さんの静かな言葉に、一瞬空気が張る。
晋作さんと大久保さんの表情を見た桂さんが、そこでふっと笑んだ。
「分かっておいでなら結構。さ、部屋へ」
…なんだかよくわからないけど、すごい迫力……。
みんな大人しく部屋へ入っていく。
多分ここに居たのが誰だったとしても、今のには逆らえなかったと思うよ…(苦笑)それくらい、すごかった。
硬直したままのわたしに向かって、今度はいつものように微笑んで
「悪かったね。君は自分の部屋でゆっくりしておいで」
言われて、わたしは何の為にあの部屋を抜けたのかを唐突に思い出した。
「あ!あのっ!わたし、部屋の準備とか出来てなくて!」
わたしがおずおずとそう言うと、桂さんが優しく笑う。
「ああ、あれかい?あれは単なる方便だよ。君を出してあげたくてね」
ああ。なんだ、そうだったんだ。
納得するわたしに笑いかけると、桂さんも部屋に戻っていく。
障子の閉まる音が聞こえて、力が抜けた。
そうして、一人残された廊下でさっきの大久保さんの言葉が頭をよぎる。
わたしの……本当に居たい場所。
それはまだ……今はまだ、見つけられないような気が、していた。
夜になって、昼間みんなが話し合いをしていた部屋の前を通りかかる。そこで、ばったり桂さんに出会った。けど、1人みたい??
話を聞くと、寺田屋組はもう帰ってしまったらしく、残りは奥の部屋で酒盛りの真っ最中…とのこと。
ってことは、晋作さんも、かな?
チラと奥の部屋に目をやると、桂さんが言う。
「気になるかも知れないが、男だらけの乱暴な場だ。君は部屋にいなさい。いいね?」
「は…はい」
「いい子だ」
言って、桂さんも奥の部屋に入っていく。
……っていうか、昼間の一件から妙な迫力を感じちゃうんだよね~。桂さん。
さっきだって、有無は言わせません。みたいな迫力だったし。。。
とりあえず、喉が渇いただけなわけだし。水を飲んだら部屋に戻ろうっと。
そう思って廊下の角を曲がろうとしたところ、死角の方からきた晋作さんとぶつかった。
「晋作さ……えっ?」
ぐらり、と。晋作さんの身体がわたしにもたれるように崩れた。
慌てて支えるわたしに、ぷーんとお酒の匂いがする。
「…晋作さん……飲み過ぎたの?」
呆れながらそう言うわたしの背中側で、急に晋作さんが咳き込み始めた。
「…ごほっ…ごほっごほっごほっごほ!」
「!?晋作さん!!」
あの夜と同じように、激しく咳き込み始める晋作さん。無意識に掴まれる腕が痛い。
「晋作さん!晋作さん!大丈夫!?」
問いかけても、答える余裕もなく咳き込みつづける晋作さん。
そこで、わたしは思い出した。桂さんにもらった、あの紙包みを。
ポケットに手を突っ込んで取り出し、震える手で開く。
「晋作さん、待っててね!今……あ」
これ、粉だから水がなくちゃいくらなんでも飲めない…。
咳き込む晋作さんを横から覗き込んで声をかける。
「晋作さん。今水を取ってくるから少しだけ待ってて」
言ってそこから離れようとしたわたしの手を晋作さんが掴んだ。
「行く……な」
「でもっ!」
「部屋に行く…肩を貸してくれ」
苦しそうな息の中で、搾り出すような声で喋る晋作さん。
ああ…確かに、こんな晋作さんを廊下に1人残しておくなんてできない…。
わたしは、紙包みをしまって晋作さんの腕を取る。彼の腕を首にかけて、全力で立ち上がらせた。
「しっかり掴まってね」
ここからなら、わたしの部屋が一番近い。早く寝かせてあげないと…!
必死で支えて、なんとかわたしの部屋へ。
「晋作さん、横になれる?」
「ん……」
わたしは、晋作さんの身体を離さないようにゆっくりと畳に近づけていく。
「っ!ごほっ!」
その時、また晋作さんが大きく咳き込んで。不自然な体勢でなんとか保っていたわたしのバランスが崩れた。
そのまま2人で畳の上に倒れこんでしまう。
「げほっ……!」
支えようとした都合上晋作さんにのしかかられるように倒れこんだわたしから、上半身だけ起き上がるけど、それでも彼は私の膝の上で苦しそうに咳き込む。
は、早く、薬を飲ませなきゃ!!
「晋作さん、水とって来るから、膝から下ろすよ?」
「イヤ…だ……」
ぎゅうっとスカートを握ったままで。子供のように晋作さんが呟く。
「でも、薬飲まなきゃ……」
言いかけた言葉は、咳き込む晋作さんの辛そうな声で掻き消える。
なんで……。
どんなに頼んでも、晋作さんはわたしの膝の上からガンとして動かない。…離さない。
「お願いだから、晋作さんっ!」
声を荒げたその時、彼が何かを呟いた。
「……た……か?」
「え?」
「幻滅した……か?と、聞いた……」
膝の上で。寂しそうに……そう、言う晋作さん。
「な、何言ってるのっ」
「は…はは……。情けない姿だし……な」
呟く晋作さんに、わたしはキレた。
「馬鹿っ!」
「ば、馬鹿!?」
晋作さんは咳き込みながらも、顔を上げ、わたしの言葉に驚いた表情を浮かべている。
「こんな時に何を言うかと思えば、そんな馬鹿なこと…だいたい!」
「…だいたい?」
「晋作さんの無神経さには毎日幻滅しているしっ!1日10回くらいは幻滅してるんだからっ!……今更幻滅とか遅すぎるよ」
すごい勢いで言い切ったわたしに、呆然とする晋作さん。
と、不意に笑い始める。
「はははっ。病人にかける言葉じゃないな」
その言葉で……一つの事実が確定して。わたしは、重い口を開いた。
「…晋作さん……。やっぱり、病気なの?」これが病気じゃなかったらなんなのよっ(泣)
晋作さんは、苦笑気味に答える。
「あぁ。そうだ……。オレのこれを知っているのは…小五郎と坂本だけだ」
桂さんは、やっぱり知っていたんだ……。
「…女では、お前だけだぞ?」
それは喜ぶべきことなんだろうか……?よく、わからないけど。
冗談めかして言う彼に、わたしは問う。
「その……なんて病気?」
晋作さんは、答えにくそうにやや視線をはずして……それでも答えてくれる。
「……ろうがいだ……」
聞き覚えのある単語。沖田さんが言ってたのは、あれだったんだ……。
「ごほっごほっ!げほっ!」
「!?」
また咳き込む晋作さんに、我に帰る。
そうだよっ!!今そんなこと聞いたり…話してる場合じゃない!わたしは、わたしに出来ることをしなくっちゃ!
「晋作さん!水を取りに行かせて!」
「なぁ……」
必死でお願いするのに、晋作さんはそんなのどこ吹く風だ。いつもなら、飄々としてることを評価するところなんだろうけど、今回は一体……っ。
「オレがこんな姿見せられるのは、お前だけなんだぞ?」キター!!!殺し文句ッ!!!
「…晋作さん……」
「小五郎にだって、こんなところは見せた事がない。だから…」
ふわっと、晋作さんが身を伏せて。わたしの腰を抱くようにして膝の上で呟く。
「もうしばらく、こうしていさせろ」
そのまま、辛そうに咳き込みつづける晋作さん。『辛』と『幸』って漢字似てるよね……。好きな子の膝の上で、晋作はそれでも幸せだったろうと妄想してしまう(爆)
───わたしは。何も出来ずにただ、ひたすら晋作さんの背中をさすりつづける…。
どうしたら……どうしたら、晋作さんを助けてあげられるの……?
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ハイ!そんなこんなな九話でしたー!!!
晋作さん……結核…大丈夫なんスかね……(苦笑)史実では……若くして亡くなってますけどその……主人公ちゃんとは幸せな未来があるんでしょうかね!(笑)
…いや、まぁ、大丈夫か。乙女ゲーだしな(笑)
もう、日ごとに晋作が可愛く見えて仕方ねぇ……っ!!!(誰だ!アンタ)
「馬鹿ッ」とか主人公に言われて花がとんでる絵を見てマゾ?とかちょっと思ったり思わなかったり。
ハッ!!!
してみるとアレか。労咳の薬飲まないのもそういうプレ……(自主規制)
こほん!
あと、もうちょっと主人公に傾く過程が自然だったら言うことなかったなッ!!!
読んでくださってればわかる……かも知れないし、(そういう…メインストーリーに関わらない部分を端折ってるので)わからないかもしれませんが(爆)今回の幕恋は、逆ハーみたいなテイストなんですごく……むず痒いです。。。軽~く、取り合ってくれますv
大久保さんとか…イイよなぁ……。
執恋における山科さんを思い出すキャラだ……。
それに、武市さんもイイッ!今日、髪を切った姿を見て……たまらなくなりました。
はぁ~…、次回攻略は武市さんにしよう♪
って!!!晋作攻略、まだなんですけどっ(笑)
あと……4、5日あるか、ないか。
楽しんでやっていきたいと思いますvvv
今日の選択肢
もう。反省してる?
馬鹿!(花)
幕恋 『高杉晋作 第八話』
2009年12月8日 携帯アプリ「ん……」
今日もいつものように、遠くで鳴くスズメの鳴き声で目覚め……る、ハズだったんだけど。
……気のせいかもしれない。夢だったのかもしれない。だから布団の中で、耳を澄ます。
「カシラーっ!自分でどうにかして下さいっ!!」
「んだとーっ!オレ様がやってやるからこっちに来させろ!!」
……。
夢じゃない、ようだ。
なんだろ、外で大騒ぎしてるみたいだけど。しかも、晋作さんも一緒だ。
「カ、カシラーっ!!無理ですっ!!あーっ!!」
「待て!!こっちもまだ準備ができてないだ…って、おわぁーっ!!!」
賑やかなそのやりとりを聞いて、自然に笑みがこぼれる。
良かった。あの様子じゃ、今日は元気みたい……。
脳裏に昨日の……日頃は見ない辛そうなカオの晋作さんがよぎった。
……本当に大丈夫なんだろうか。只事じゃない様子だった彼が頭から離れない。『ろうがい』が何か。はぐらかされたような気もするし。
……なんだか、胸がもやもやする……。不安や、心配や。色々で。
わたしは、考えを振り払うようにパンッと両頬を叩いた。
とりあえず、早く支度してごはん食べに行こう!そう思い、わたしは身支度を整えると急いで自分の部屋を出た。
「…あ。桂さん、おはようございます」
いつも食事をいただく部屋に入ると、すでにそこには桂さんが座っていて。
「おはよう。丁度、朝食の用意もできたところだよ」
と微笑みながら言ってくれる。わたしも思わずにっこりと笑って、穏やかな空気が流れる。
……朝から癒されるなぁ~。
そういえば。
「あの、晋作さんは…?」
さっきの騒ぎがした方向をちらりと見ながら聞いてみた。
すると、桂さんはおかしそうに笑いながら「晋作を待っていたら日が暮れてしまうよ」と言い、「先にいただこう」と朝食を勧めてくれる。
……けど。晋作さんってここでは偉い人、なんだよね?先に食べちゃっていいのかな。
そう思ったわたしのことなど、桂さんはお見通しだったようで。
「なんの問題もないよ」
と笑ってくれる。
……ほんと、桂さんも相手の考えてることがよくわかる人だ。こういうとこ、晋作さんと似てるのかも。
「じゃぁ。いただきます」
そうして和やかに朝食を取り始めたわたし達だけど。
食事中の会話の中で、つい……。そう、つい。昨日お祭りに行ったことを口走りそうになってしまって……。
一人テンパりそうになりながら、言い訳を始めようとしたその時。意外なことに桂さんは笑って言う。
「私が気付かなかったとでも?」
……う。お、お見通しってヤツ…なのですね。。。返す言葉もなく、私は黙り込んだ。
「もしかして、君の言う事ならば聞くかと思ったんだけど、駄目だったようだね」
「す…すみません…」
「まぁ、仕方ない。ああなった晋作は言うことを聞かないから」
苦笑する桂さん。本当に困ったヤツだ、と言わんばかりの優しげな困り顔で。
…そうだ。
こんな風にずっと傍にいて見守っている桂さんなら、昨日の様子が変だった晋作さんのことだって、知っているんじゃないだろうか。
「あの…その、昨日お祭りに行ったとき、晋作さんがすごく咳き込んだんです…」
「咳き込んだ?」
「ただ咳が出たって言うんじゃなくて、ものすごく苦しそうで」
昨日の、あの晋作さんが頭から離れない。
「通りがかった沖田さんが『ろうがいか?』って聞いてて…」
「沖田?まさか……」
サッと顔色の変わった桂さんに、昨日晋作さんから聞いた関係を思い出す。
だから、慌ててわたしは言葉を繋いだ。
「あっ、あの!大丈夫です!晋作さんのこと、バレてませんから!」
言葉に桂さんは大きな溜息をついた。
「やはり、あの…沖田なんだね?」
「は、はい……」
「全く、君達は…」
放っておくと、また長いお説教が始まりそうな桂さんに、わたしは間髪入れずに畳み掛ける。……昨日晋作さんにはぐらかされたこと。
「あの、ろうがいって、何ですか?」
そう聞くと。桂さんは軽く一度瞳を閉じ。それから、わたしを真っ直ぐ見つめる。
「晋作には、聞かなかったのかい?」
「聞いたんですが、教えてくれなくて」
わたしの答えに、桂さんは大きな息をついて「そうか……」とだけ答える。
少しの間。
沈黙を破って桂さんが言ったのは、「本人が話すまでは待っていてあげなさい」ということ。
でも、多分それは大事なことだと思うのだ。わたしとの結婚を引き合いに出すほどに。それはきっと、覚悟が必要なのだと……言われたのと同じなんだと思う。
引き下がるつもりがないわたしを見て取ったのか、桂さんは小さな紙包みをいくつかわたしに手渡してくれた。
「……?これは?何か、粉が入ってますね」
「次に晋作が咳き込むようなことがあったら、それを飲ませてやりなさい」
「これを?」
……ってことは、これは薬??
桂さんが持っているということは、晋作さんの常備薬……みたいなモノ、なのかしら?
「お守り代わりに、君が持っているといい」
「はい……」
わたしはその紙包みを受け取り、制服のポケットに大事にしまいこんだ。
うん。薬があるなら大丈夫だよね!
……ん?けど、だったらなんで晋作さんは薬を持ち歩かないんだろう…。たまたま飲み忘れて症状が出たとか、そういうことなのかな…??
自分の部屋に戻り、日向に座ってしばらく庭を眺めていた。
そして、ふと思い出す。昨日、夜闇の中に見た神社……。
そういえばなんかゴタゴタして忘れてたけど。神社が見つかったって事は、わたし、もしかしたら帰れるんじゃ……?
でも、そうしたら。晋作さん達とも、お別れ?
ずきり、と胸が痛む。
わたしは、色々振り払うように頭を振った。
そう、いつまでもここに居させてもらえるわけじゃない。もし帰れるようになるんだったら、わたしは帰らなくちゃならない。
向こうで待っているはずの、カナちゃんや部活のみんなや、そして家族のために。
もちろん、わたしのためにも。
思う心に浮かぶのは、晋作さんの笑顔。屈託の無い、わたしの大好きな、あの。
「……わたしのため、か」
それはもちろんそうだ。たった一人でこの世界で生きていくことなんて、きっと出来ない。
だから、ただここにいるんじゃなくて、ちゃんと自分で帰る方法を考えなくちゃいけないんだ。
晋作さんに頼ってばっかりじゃ、ダメなんだ。
うん。今日、もう一度あの神社に行ってみようか。
そう思う気持ちと、でもみんなに勝手に外に出てはいけないと言われているから…という気持ちと。二つの気持ちが自分の中でせめぎあう。
「おい、どうした!ぼーっとして!」
「し、晋作さん!!」
急に現れた晋作さんにびっくりして思わずのけぞった。……どうしてこの人はこうも神出鬼没なんだろう(苦笑)
「何を考えてた?ん?言ってみろ!」
優しい表情でそう聞かれて。わたしは、本当に無意識に、ぽろっと洩らしてしまう。
「晋作さんのこと、考えてた」
「本当か!?」
「本当。嘘だと思うの?」
問うと、頬を赤らめた晋作さんが「そんなことは…」とかなんとか言いながら口ごもる。
……なんだか、珍しい物を見た!!
「どうしたの?晋作さん」
「どうしたってお前!好きな女に、貴方のことを考えていたの…なーんて言われたら、嬉しいだろうが!!」
そ…そんな女の子らしく言ってないと思うけどな…(汗)
なんか、そんな風に言われて照れられると、こっちも照れてしまう……。
そんなわたしの前で、晋作さんは肩を落として溜息をついた。
「それにしても、馬が言う事を聞きやしねぇ!」
「…馬?」
言われて、思い当たる。そういえば朝から賑やかだったっけ。
「今日は1日ヒマだから、お前を馬で遠乗りに連れて行ってやろうとしてたんだ。……せっかくお前に気晴らしをさせてやれると思ったのにな」
苦笑して申し訳なさそうに言う晋作さんの言葉が、わたしにはとても嬉しかった。
そっか、わたしのためだったんだ……。
「わたし、その気持ちだけで嬉しいよ」
言うと、晋作さんがわたしを見て嬉しそうに笑ってくれる。うん。晋作さんがそんな風に考えてくれてたのが、とても嬉しい。
「…それに」
「それに?」
「わたし、晋作さんと2人で、ゆっくり散歩できればそれでいい」
「そうか……。そうだな!よし、あの神社に行ってみるか!」
「え…?」
あの神社、と言われてドキッとした。なんで、この人は……。まるでわたしの考えていたことなんてお見通しと言わんばかりに……。
「なんでって?だってお前、行ってみたいだろう?」
きょとんとして、晋作さんが答える。「遠慮するなんて、らしくないぞ」なんて言いながら。
「お前が未来に戻れる手掛かりが見つかるかもしれないからな!さぁ、行くぞ!」
明るく言われて、わたしは複雑な気持ちのままで晋作さんの後に続く。
……なんだか、足が重い。
晋作さんは、わたしが未来へ帰る方法を見つけようとしてくれている。…わたしのために。
でも、彼は言葉に出しては『わたしを好きだ』と言っていた。
それって……どういうこと?なのかな。わたしが帰ることになれば、晋作さんと離れてしまうことになる。…きっと、もう一生会うことなんてない。
晋作さんが本当に…言葉通りに思ってくれているとするのなら、それでもいいのかな。
……わたし……わたしは……。
「おいこら高杉君、どこへ行く!」
ちょうど藩邸を出ようとした時、聞いたことのある声が晋作さんを呼び止める。
「あれ?大久保さん、どうしたんだ?」
晋作さんがわたしの隣でそう聞くと、大久保さんがにやりと笑って言った。
「どうしたもこうしたもない。吉報だ」
「吉報?」
「ああそうだ。岩倉が倒幕へ転換した」
大久保さんの言葉に、晋作さんが思わず…という感じで一歩踏み出した。
「岩倉が!?あれは、公武合体を推してたじゃないか!」
「ふん。ようやく現実がみえたんだろうよ。……で、例の客も明日には到着する予定だ。故、外などぶらつかず今日は藩邸で大人しくしていることだ」
ふふん。という声が聞こえそうな大久保さんの物言いに、けれど晋作さんはいつもの調子で、わたしの手を握って大久保さんの横を通り抜ける。
「ま、それはそれ!これはこれだ!!」
「ちょっ!」
わたしは強引に歩き出す晋作さんの手を必死で掴んで引き止める。晋作さんが不思議そうに振り返った。
「なんだ?どうしたんだ?」
「ねぇ、よくわからないけど、大事なことなんでしょ?今日は藩邸にいようよ」
背後で大久保さんの「ほう?」という小さな声が聞こえた。
晋作さんは、怪訝そうな顔をしてわたしを見る。
「だが、おまえだって少しでも戻る手掛かりが欲しいだろうが」
「それはそうだけど、神社はいつでも行けるよ!」
「いや、だから…」
ねぇ?よくわからないのよ、晋作さん。わたしも。
神社に行きたいような、行きたくないような。だから、もう少し……本当はもう少し待って欲しいの。わたしが、何を望んでいるのか。もうちょっと……見えるまで。
「うん!はい。決定!今日は藩邸にいること!」
にっこり笑って言い切ると、一瞬驚いたような顔をした晋作さんが、つまらなさそうな表情を浮かべて「ちぇっ……」とこぼす。
よし!諦めてくれた!
わたしは、神社に行かなくてもいい口実を得られて。うまく理由をこじつけられてホッとしていた。
と、背後で笑い声が聞こえる。最初だけは遠慮気味に。だけど、後半遠慮なく。
「くくっ……はははっ!!!やるな、小娘!」
「え…?」
振り返ると、よくやった…とでも言いたげな表情の大久保さん。
「天下の高杉晋作をこうも手懐けたか。お前たちは会うたびに面白い余興を見せるな」
そう言ってひとしきり笑うと、気が済んだのか「私はこれで」と言ってご機嫌な様子で帰っていく。
……わたしが晋作さんを手懐ける???そんなこと、出来てるワケないじゃない。
大久保さんの勘違いだよ…。
思いながら去っていく彼の後姿を見送っていると、入れ違いに大きな台車に乗った荷物が藩邸に運び込まれてきた。
「…すごい荷物…」
呆然と見守るわたしの横で、「おっ!!例のあれか!!」と晋作さんがなんだか大喜びな様子で。
「ねぇ、晋作さん。これは何?」
問うわたしに、晋作さんがにんまりと笑って「明日まで楽しみにしておけ」と内容を教えてくれない。……なんなんだろう…。もったいぶらずに教えてくれればいいのにな…。
気になって眠れなかったらどうするのよ、ねぇ??
詮索しても無駄か…と諦めたわたしがふと荷物から視線を外すと、荷を運んできた人たちが暑さから井戸を探しているのに気がついた。
「井戸ならわたし、案内しますよ」
晋作さんの側にいたら、荷物の中身も気になるし、それに……わたしの中のもやもやとした気持ちにもどうしても目を向けなければならなくなる。
……じっとしていて色々考えてしまうなら、動いている方が性に合っている。
わたしはそのまま、彼らの案内で走り回ることになった。
そして、その夜。
わたしは自分の部屋に戻るなり、手足を畳に投げ出した。
うーん。。。何日か部活動を休んでいる状況で久しぶりに物凄い勢いで動き回っちゃったな……。疲れた。
そのまま畳に倒れこんでいたわたしの耳に、楽器のような…音色が聞こえてきた。
日頃は聞きなれないその音に、わたしは起き上がり音色を辿って歩いていく。
すると。
楽器…三味線を弾く、晋作さんの姿がそこにあった。
月明かりの下、縁側に座って目を伏せて。……わたしは、三味線の曲なんて正直全然わからないけど。
月明かりに照らされた晋作さんは、すごく……格好良くて。
わたしはしばらく声をかけることすら出来ずに立ち尽くしていた。
その時、ふと晋作さんが顔を上げて。視線が合う。
晋作さんは嬉しそうにニコリと笑うと、わたしに手招きをした。それが嬉しくて、晋作さんの側に行く。
「なんだ、いつからそこにいたんだ?」
「えっと、ほんの少し前だよ」
答えながら腰掛ける。
「声をかけりゃあ良かったのに」
「そうなんだけど、びっくりしちゃって。晋作さんが三味線弾くなんて」
「ははは!なんだそりゃ、失礼な奴だな!」
いやいやいや。よぉく自分を鑑みてくださいよ。意外だと思いますよ?晋作さんに三味線。
…とは言わず(笑)聞いてみる。
「晋作さん、三味線弾くの好きなの?」
「ああ、好きだ」
手元の三味線に視線を落とし、優しげに微笑む晋作さん。
「そっか。……どんな時に弾くの?」
静か動かと言われれば、どちらかといえば後者のイメージが強いこの人が、何を思って三味線を弾くのか……あんな切なげな音色を奏でるのか、気になった。
「そうだな…。雑念が多い時なんぞは、自分の心を落ち着かせるために弾いたりする」
「…心を?」
「ああ、無心になれるような気がするしな」
答えて、それからふとわたしを見る。
「だが、なんでそんな事を聞くんだ?」
答えることに、躊躇わなかった。わたしは晋作さんを見上げたままで真っ直ぐ見つめて答える。
「格好よかったから」
「へ?」
「格好よかったから」
「な、なんだそりゃ!」
段々、わかってきてるんだよ??晋作さんが結構照れ屋さんだとか。ストレートにものを言うくせに、ストレートに言われるのは弱い、だとか。
ちょっとずつ、知っていく…知っていける貴方が、好きだと思ってる。
「三味線弾いてる晋作さん見て、格好いいなって思ったから!」
「ま…まったくこいつは……!」
誤魔化すように晋作さんが大声を張り上げた。
「よし!じゃあ、お前のことをどれだけ好きか、このオレ様が都都逸で歌ってやる!聞けっ!」
庭に下りた晋作さんが、ビーン!と三味線をつま弾く。
『どどいつ』ってなんだろう…とは思ったけど、間もなく歌いだした晋作さんの声にただ耳を傾けることにする。
「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」
よく通る晋作さんの声が、済んだ空気の中三味線の音とともに響く。
月の光を背にした晋作さんのその姿は、本当に本当にステキで…。息をしてこの空気を壊すことすら、してはいけないように感じた。
歌い終えた晋作さんと、彼の部屋に戻ってくると。
「ははは!それなりに緊張するもんだな!」
晋作さんが照れ隠しのようにそう言って大声で笑う。
「で、どうだった?」
そう言って、真っ直ぐこっちを向いてわたしの返事を待つ晋作さん。
わたしは素直に答える。
「すごく……すごく感動した!」
「よし!」
「だけど、その…」
「ん?なんだ?」
軽く聞いて来る晋作さんに……その点だけは言いにくい。。。
けど、聞いておかないと……。
意味が……よくわからなかったんだ、と。
歌っている分にはもちろんいいのだけど、いかんせんわたしには難しい…。
それも素直に言ってしまうと、晋作さんは優しく答えてくれる。
「意味か…。まぁ、簡単に言えば……」
「うん」
「世界の全ての奴をぶっ殺してでも、おまえとずっと一緒に在りたい!って感じか?」
「ええっ!何それっ!」
あんなキレイな旋律とは正反対のその説明にわたしは思わず笑ってしまった。
と、頭にのせられる晋作さんのあったかくて、大きな手。
「…どうしたの?」
「お前の頭は、いい子いい子してやりたくなる頭なんだ」
微笑んで、わたしの頭を撫でる手はやっぱり優しくて。
……色々言うくせに、結局そうやって子供扱いするんだから……。
そう思って、少しムクれたわたしの目の前に、突然かんざしが差し出された。
……どこかで見たことのある、それ。
「え、これっ!」
あのお祭りの夜。わたしが欲しかったあのかんざし。
思わず晋作さんを見上げる。
「そんな可愛い頭のお前に、似合うと思ってな」
「でもこれ、わたしが欲しかったかんざし!どうしてわかったの!?」
「前にも言ったろう?惚れた女の事は、何でもわかる!」
手渡されたかんざしに視線を落とす。手も、心も。なんだかあったかい。
「…うれしい。すっごくうれしい!ありがとう、晋作さん!」
答えたわたしに満足そうに笑うと、晋作さんは言う。
「よし!機嫌は直ったな?じゃあ、イイ子はさっさと風呂に入って寝ろ!」
「もう!また子供扱いするんだから!」
わたしはすっくと立ち上がる。かんざしは握り締めたまま。
「おやすみなさいっ!」
わたしは、そう言って晋作さんの部屋を後にした。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「お前とずっと一緒に在りたい……」
晋作は、ついさっき少女が出て行った戸口を見つめていた。
「だから……」
一瞬言葉に詰まる。続けたい言葉など一つしかない。
「…───帰るな…か」
さっき。
危うく言いそうになった言葉を、独り呟いた。
晋作は、彼女に。「必ず帰してやる」と約束した。
だから。
拳をきつく握り締めて、窓から月を見上げる。……そして、自嘲した。
「なーに。単なる月夜の独り言だ」
大丈夫だと。自分に言い聞かせる。
大丈夫、自分は出来る。
繋いだ手を、放すことくらい……。
彼の気持ちには関係なく、夜はただ更けていく……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
と、いうわけで!八話でしたーーーっ!!!
ここでついに大変な事態に……っ!そう。レヴューの途中でたまらん眠くなり、二日かけて書くハメになりました。
……いやぁ…ずっと睡眠不足だからな……。
これ、書いてると時間かかるんだよな……。(平均2、3時間(爆))
でも、ずっと気になっていたことを試すイミでも良かったです。
今回一時中断してから再開した事で、『プレイ制限は、ゲームを開始した時間から換算される』とか『一時中断しても、過去ログは遡れる』など。
……章を終わらせさえしなければ大丈夫だな!と、心強い気分になりました。(いや、そもそも過去ログなんてほとんど必要ないんですけど、けど、こういった形態でレヴュー書いたら、ねぇ……。どうしても……)
あと、頑張れば20時間ごとに起動してちょっとでもはやく読み進めることが可能、と。
…晋作の次のキャラは、楽しくやろう……(遠い目)
今更コレはやめれないし(爆)
さておき。
なんだかもう、もどかしくてたまらないんですがーーーーっ!!!
主人公ちゃんが鈍いのがマズいんでしょうねぇ……。多分。
加えて晋作が若干……奥手っぽい……??(苦笑)だめだーーーーっ!!こんなカップルッ!!!!
と、いう、ダメ出しがモロに反映された内容になっていってるのがわかって…スミマセン。
ゲームはやっていない、というアナタ。実際の主人公ちゃんは乙女心ってモノがわかってないので、揺れる感じが薄いです…(笑)いや、あたしがベタ過ぎ(好き)なのか・・・?
個人的には、アレです。理想は『天は赤い河のほとり』な展開が理想なんですけど、晋作の鉄の理性が邪魔をする~~~(爆)
今日の選択肢
晋作さんのこと(花)
三味線弾くの好き?(スチルなんで、反応がわからない…)
今日もいつものように、遠くで鳴くスズメの鳴き声で目覚め……る、ハズだったんだけど。
……気のせいかもしれない。夢だったのかもしれない。だから布団の中で、耳を澄ます。
「カシラーっ!自分でどうにかして下さいっ!!」
「んだとーっ!オレ様がやってやるからこっちに来させろ!!」
……。
夢じゃない、ようだ。
なんだろ、外で大騒ぎしてるみたいだけど。しかも、晋作さんも一緒だ。
「カ、カシラーっ!!無理ですっ!!あーっ!!」
「待て!!こっちもまだ準備ができてないだ…って、おわぁーっ!!!」
賑やかなそのやりとりを聞いて、自然に笑みがこぼれる。
良かった。あの様子じゃ、今日は元気みたい……。
脳裏に昨日の……日頃は見ない辛そうなカオの晋作さんがよぎった。
……本当に大丈夫なんだろうか。只事じゃない様子だった彼が頭から離れない。『ろうがい』が何か。はぐらかされたような気もするし。
……なんだか、胸がもやもやする……。不安や、心配や。色々で。
わたしは、考えを振り払うようにパンッと両頬を叩いた。
とりあえず、早く支度してごはん食べに行こう!そう思い、わたしは身支度を整えると急いで自分の部屋を出た。
「…あ。桂さん、おはようございます」
いつも食事をいただく部屋に入ると、すでにそこには桂さんが座っていて。
「おはよう。丁度、朝食の用意もできたところだよ」
と微笑みながら言ってくれる。わたしも思わずにっこりと笑って、穏やかな空気が流れる。
……朝から癒されるなぁ~。
そういえば。
「あの、晋作さんは…?」
さっきの騒ぎがした方向をちらりと見ながら聞いてみた。
すると、桂さんはおかしそうに笑いながら「晋作を待っていたら日が暮れてしまうよ」と言い、「先にいただこう」と朝食を勧めてくれる。
……けど。晋作さんってここでは偉い人、なんだよね?先に食べちゃっていいのかな。
そう思ったわたしのことなど、桂さんはお見通しだったようで。
「なんの問題もないよ」
と笑ってくれる。
……ほんと、桂さんも相手の考えてることがよくわかる人だ。こういうとこ、晋作さんと似てるのかも。
「じゃぁ。いただきます」
そうして和やかに朝食を取り始めたわたし達だけど。
食事中の会話の中で、つい……。そう、つい。昨日お祭りに行ったことを口走りそうになってしまって……。
一人テンパりそうになりながら、言い訳を始めようとしたその時。意外なことに桂さんは笑って言う。
「私が気付かなかったとでも?」
……う。お、お見通しってヤツ…なのですね。。。返す言葉もなく、私は黙り込んだ。
「もしかして、君の言う事ならば聞くかと思ったんだけど、駄目だったようだね」
「す…すみません…」
「まぁ、仕方ない。ああなった晋作は言うことを聞かないから」
苦笑する桂さん。本当に困ったヤツだ、と言わんばかりの優しげな困り顔で。
…そうだ。
こんな風にずっと傍にいて見守っている桂さんなら、昨日の様子が変だった晋作さんのことだって、知っているんじゃないだろうか。
「あの…その、昨日お祭りに行ったとき、晋作さんがすごく咳き込んだんです…」
「咳き込んだ?」
「ただ咳が出たって言うんじゃなくて、ものすごく苦しそうで」
昨日の、あの晋作さんが頭から離れない。
「通りがかった沖田さんが『ろうがいか?』って聞いてて…」
「沖田?まさか……」
サッと顔色の変わった桂さんに、昨日晋作さんから聞いた関係を思い出す。
だから、慌ててわたしは言葉を繋いだ。
「あっ、あの!大丈夫です!晋作さんのこと、バレてませんから!」
言葉に桂さんは大きな溜息をついた。
「やはり、あの…沖田なんだね?」
「は、はい……」
「全く、君達は…」
放っておくと、また長いお説教が始まりそうな桂さんに、わたしは間髪入れずに畳み掛ける。……昨日晋作さんにはぐらかされたこと。
「あの、ろうがいって、何ですか?」
そう聞くと。桂さんは軽く一度瞳を閉じ。それから、わたしを真っ直ぐ見つめる。
「晋作には、聞かなかったのかい?」
「聞いたんですが、教えてくれなくて」
わたしの答えに、桂さんは大きな息をついて「そうか……」とだけ答える。
少しの間。
沈黙を破って桂さんが言ったのは、「本人が話すまでは待っていてあげなさい」ということ。
でも、多分それは大事なことだと思うのだ。わたしとの結婚を引き合いに出すほどに。それはきっと、覚悟が必要なのだと……言われたのと同じなんだと思う。
引き下がるつもりがないわたしを見て取ったのか、桂さんは小さな紙包みをいくつかわたしに手渡してくれた。
「……?これは?何か、粉が入ってますね」
「次に晋作が咳き込むようなことがあったら、それを飲ませてやりなさい」
「これを?」
……ってことは、これは薬??
桂さんが持っているということは、晋作さんの常備薬……みたいなモノ、なのかしら?
「お守り代わりに、君が持っているといい」
「はい……」
わたしはその紙包みを受け取り、制服のポケットに大事にしまいこんだ。
うん。薬があるなら大丈夫だよね!
……ん?けど、だったらなんで晋作さんは薬を持ち歩かないんだろう…。たまたま飲み忘れて症状が出たとか、そういうことなのかな…??
自分の部屋に戻り、日向に座ってしばらく庭を眺めていた。
そして、ふと思い出す。昨日、夜闇の中に見た神社……。
そういえばなんかゴタゴタして忘れてたけど。神社が見つかったって事は、わたし、もしかしたら帰れるんじゃ……?
でも、そうしたら。晋作さん達とも、お別れ?
ずきり、と胸が痛む。
わたしは、色々振り払うように頭を振った。
そう、いつまでもここに居させてもらえるわけじゃない。もし帰れるようになるんだったら、わたしは帰らなくちゃならない。
向こうで待っているはずの、カナちゃんや部活のみんなや、そして家族のために。
もちろん、わたしのためにも。
思う心に浮かぶのは、晋作さんの笑顔。屈託の無い、わたしの大好きな、あの。
「……わたしのため、か」
それはもちろんそうだ。たった一人でこの世界で生きていくことなんて、きっと出来ない。
だから、ただここにいるんじゃなくて、ちゃんと自分で帰る方法を考えなくちゃいけないんだ。
晋作さんに頼ってばっかりじゃ、ダメなんだ。
うん。今日、もう一度あの神社に行ってみようか。
そう思う気持ちと、でもみんなに勝手に外に出てはいけないと言われているから…という気持ちと。二つの気持ちが自分の中でせめぎあう。
「おい、どうした!ぼーっとして!」
「し、晋作さん!!」
急に現れた晋作さんにびっくりして思わずのけぞった。……どうしてこの人はこうも神出鬼没なんだろう(苦笑)
「何を考えてた?ん?言ってみろ!」
優しい表情でそう聞かれて。わたしは、本当に無意識に、ぽろっと洩らしてしまう。
「晋作さんのこと、考えてた」
「本当か!?」
「本当。嘘だと思うの?」
問うと、頬を赤らめた晋作さんが「そんなことは…」とかなんとか言いながら口ごもる。
……なんだか、珍しい物を見た!!
「どうしたの?晋作さん」
「どうしたってお前!好きな女に、貴方のことを考えていたの…なーんて言われたら、嬉しいだろうが!!」
そ…そんな女の子らしく言ってないと思うけどな…(汗)
なんか、そんな風に言われて照れられると、こっちも照れてしまう……。
そんなわたしの前で、晋作さんは肩を落として溜息をついた。
「それにしても、馬が言う事を聞きやしねぇ!」
「…馬?」
言われて、思い当たる。そういえば朝から賑やかだったっけ。
「今日は1日ヒマだから、お前を馬で遠乗りに連れて行ってやろうとしてたんだ。……せっかくお前に気晴らしをさせてやれると思ったのにな」
苦笑して申し訳なさそうに言う晋作さんの言葉が、わたしにはとても嬉しかった。
そっか、わたしのためだったんだ……。
「わたし、その気持ちだけで嬉しいよ」
言うと、晋作さんがわたしを見て嬉しそうに笑ってくれる。うん。晋作さんがそんな風に考えてくれてたのが、とても嬉しい。
「…それに」
「それに?」
「わたし、晋作さんと2人で、ゆっくり散歩できればそれでいい」
「そうか……。そうだな!よし、あの神社に行ってみるか!」
「え…?」
あの神社、と言われてドキッとした。なんで、この人は……。まるでわたしの考えていたことなんてお見通しと言わんばかりに……。
「なんでって?だってお前、行ってみたいだろう?」
きょとんとして、晋作さんが答える。「遠慮するなんて、らしくないぞ」なんて言いながら。
「お前が未来に戻れる手掛かりが見つかるかもしれないからな!さぁ、行くぞ!」
明るく言われて、わたしは複雑な気持ちのままで晋作さんの後に続く。
……なんだか、足が重い。
晋作さんは、わたしが未来へ帰る方法を見つけようとしてくれている。…わたしのために。
でも、彼は言葉に出しては『わたしを好きだ』と言っていた。
それって……どういうこと?なのかな。わたしが帰ることになれば、晋作さんと離れてしまうことになる。…きっと、もう一生会うことなんてない。
晋作さんが本当に…言葉通りに思ってくれているとするのなら、それでもいいのかな。
……わたし……わたしは……。
「おいこら高杉君、どこへ行く!」
ちょうど藩邸を出ようとした時、聞いたことのある声が晋作さんを呼び止める。
「あれ?大久保さん、どうしたんだ?」
晋作さんがわたしの隣でそう聞くと、大久保さんがにやりと笑って言った。
「どうしたもこうしたもない。吉報だ」
「吉報?」
「ああそうだ。岩倉が倒幕へ転換した」
大久保さんの言葉に、晋作さんが思わず…という感じで一歩踏み出した。
「岩倉が!?あれは、公武合体を推してたじゃないか!」
「ふん。ようやく現実がみえたんだろうよ。……で、例の客も明日には到着する予定だ。故、外などぶらつかず今日は藩邸で大人しくしていることだ」
ふふん。という声が聞こえそうな大久保さんの物言いに、けれど晋作さんはいつもの調子で、わたしの手を握って大久保さんの横を通り抜ける。
「ま、それはそれ!これはこれだ!!」
「ちょっ!」
わたしは強引に歩き出す晋作さんの手を必死で掴んで引き止める。晋作さんが不思議そうに振り返った。
「なんだ?どうしたんだ?」
「ねぇ、よくわからないけど、大事なことなんでしょ?今日は藩邸にいようよ」
背後で大久保さんの「ほう?」という小さな声が聞こえた。
晋作さんは、怪訝そうな顔をしてわたしを見る。
「だが、おまえだって少しでも戻る手掛かりが欲しいだろうが」
「それはそうだけど、神社はいつでも行けるよ!」
「いや、だから…」
ねぇ?よくわからないのよ、晋作さん。わたしも。
神社に行きたいような、行きたくないような。だから、もう少し……本当はもう少し待って欲しいの。わたしが、何を望んでいるのか。もうちょっと……見えるまで。
「うん!はい。決定!今日は藩邸にいること!」
にっこり笑って言い切ると、一瞬驚いたような顔をした晋作さんが、つまらなさそうな表情を浮かべて「ちぇっ……」とこぼす。
よし!諦めてくれた!
わたしは、神社に行かなくてもいい口実を得られて。うまく理由をこじつけられてホッとしていた。
と、背後で笑い声が聞こえる。最初だけは遠慮気味に。だけど、後半遠慮なく。
「くくっ……はははっ!!!やるな、小娘!」
「え…?」
振り返ると、よくやった…とでも言いたげな表情の大久保さん。
「天下の高杉晋作をこうも手懐けたか。お前たちは会うたびに面白い余興を見せるな」
そう言ってひとしきり笑うと、気が済んだのか「私はこれで」と言ってご機嫌な様子で帰っていく。
……わたしが晋作さんを手懐ける???そんなこと、出来てるワケないじゃない。
大久保さんの勘違いだよ…。
思いながら去っていく彼の後姿を見送っていると、入れ違いに大きな台車に乗った荷物が藩邸に運び込まれてきた。
「…すごい荷物…」
呆然と見守るわたしの横で、「おっ!!例のあれか!!」と晋作さんがなんだか大喜びな様子で。
「ねぇ、晋作さん。これは何?」
問うわたしに、晋作さんがにんまりと笑って「明日まで楽しみにしておけ」と内容を教えてくれない。……なんなんだろう…。もったいぶらずに教えてくれればいいのにな…。
気になって眠れなかったらどうするのよ、ねぇ??
詮索しても無駄か…と諦めたわたしがふと荷物から視線を外すと、荷を運んできた人たちが暑さから井戸を探しているのに気がついた。
「井戸ならわたし、案内しますよ」
晋作さんの側にいたら、荷物の中身も気になるし、それに……わたしの中のもやもやとした気持ちにもどうしても目を向けなければならなくなる。
……じっとしていて色々考えてしまうなら、動いている方が性に合っている。
わたしはそのまま、彼らの案内で走り回ることになった。
そして、その夜。
わたしは自分の部屋に戻るなり、手足を畳に投げ出した。
うーん。。。何日か部活動を休んでいる状況で久しぶりに物凄い勢いで動き回っちゃったな……。疲れた。
そのまま畳に倒れこんでいたわたしの耳に、楽器のような…音色が聞こえてきた。
日頃は聞きなれないその音に、わたしは起き上がり音色を辿って歩いていく。
すると。
楽器…三味線を弾く、晋作さんの姿がそこにあった。
月明かりの下、縁側に座って目を伏せて。……わたしは、三味線の曲なんて正直全然わからないけど。
月明かりに照らされた晋作さんは、すごく……格好良くて。
わたしはしばらく声をかけることすら出来ずに立ち尽くしていた。
その時、ふと晋作さんが顔を上げて。視線が合う。
晋作さんは嬉しそうにニコリと笑うと、わたしに手招きをした。それが嬉しくて、晋作さんの側に行く。
「なんだ、いつからそこにいたんだ?」
「えっと、ほんの少し前だよ」
答えながら腰掛ける。
「声をかけりゃあ良かったのに」
「そうなんだけど、びっくりしちゃって。晋作さんが三味線弾くなんて」
「ははは!なんだそりゃ、失礼な奴だな!」
いやいやいや。よぉく自分を鑑みてくださいよ。意外だと思いますよ?晋作さんに三味線。
…とは言わず(笑)聞いてみる。
「晋作さん、三味線弾くの好きなの?」
「ああ、好きだ」
手元の三味線に視線を落とし、優しげに微笑む晋作さん。
「そっか。……どんな時に弾くの?」
静か動かと言われれば、どちらかといえば後者のイメージが強いこの人が、何を思って三味線を弾くのか……あんな切なげな音色を奏でるのか、気になった。
「そうだな…。雑念が多い時なんぞは、自分の心を落ち着かせるために弾いたりする」
「…心を?」
「ああ、無心になれるような気がするしな」
答えて、それからふとわたしを見る。
「だが、なんでそんな事を聞くんだ?」
答えることに、躊躇わなかった。わたしは晋作さんを見上げたままで真っ直ぐ見つめて答える。
「格好よかったから」
「へ?」
「格好よかったから」
「な、なんだそりゃ!」
段々、わかってきてるんだよ??晋作さんが結構照れ屋さんだとか。ストレートにものを言うくせに、ストレートに言われるのは弱い、だとか。
ちょっとずつ、知っていく…知っていける貴方が、好きだと思ってる。
「三味線弾いてる晋作さん見て、格好いいなって思ったから!」
「ま…まったくこいつは……!」
誤魔化すように晋作さんが大声を張り上げた。
「よし!じゃあ、お前のことをどれだけ好きか、このオレ様が都都逸で歌ってやる!聞けっ!」
庭に下りた晋作さんが、ビーン!と三味線をつま弾く。
『どどいつ』ってなんだろう…とは思ったけど、間もなく歌いだした晋作さんの声にただ耳を傾けることにする。
「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」
よく通る晋作さんの声が、済んだ空気の中三味線の音とともに響く。
月の光を背にした晋作さんのその姿は、本当に本当にステキで…。息をしてこの空気を壊すことすら、してはいけないように感じた。
歌い終えた晋作さんと、彼の部屋に戻ってくると。
「ははは!それなりに緊張するもんだな!」
晋作さんが照れ隠しのようにそう言って大声で笑う。
「で、どうだった?」
そう言って、真っ直ぐこっちを向いてわたしの返事を待つ晋作さん。
わたしは素直に答える。
「すごく……すごく感動した!」
「よし!」
「だけど、その…」
「ん?なんだ?」
軽く聞いて来る晋作さんに……その点だけは言いにくい。。。
けど、聞いておかないと……。
意味が……よくわからなかったんだ、と。
歌っている分にはもちろんいいのだけど、いかんせんわたしには難しい…。
それも素直に言ってしまうと、晋作さんは優しく答えてくれる。
「意味か…。まぁ、簡単に言えば……」
「うん」
「世界の全ての奴をぶっ殺してでも、おまえとずっと一緒に在りたい!って感じか?」
「ええっ!何それっ!」
あんなキレイな旋律とは正反対のその説明にわたしは思わず笑ってしまった。
と、頭にのせられる晋作さんのあったかくて、大きな手。
「…どうしたの?」
「お前の頭は、いい子いい子してやりたくなる頭なんだ」
微笑んで、わたしの頭を撫でる手はやっぱり優しくて。
……色々言うくせに、結局そうやって子供扱いするんだから……。
そう思って、少しムクれたわたしの目の前に、突然かんざしが差し出された。
……どこかで見たことのある、それ。
「え、これっ!」
あのお祭りの夜。わたしが欲しかったあのかんざし。
思わず晋作さんを見上げる。
「そんな可愛い頭のお前に、似合うと思ってな」
「でもこれ、わたしが欲しかったかんざし!どうしてわかったの!?」
「前にも言ったろう?惚れた女の事は、何でもわかる!」
手渡されたかんざしに視線を落とす。手も、心も。なんだかあったかい。
「…うれしい。すっごくうれしい!ありがとう、晋作さん!」
答えたわたしに満足そうに笑うと、晋作さんは言う。
「よし!機嫌は直ったな?じゃあ、イイ子はさっさと風呂に入って寝ろ!」
「もう!また子供扱いするんだから!」
わたしはすっくと立ち上がる。かんざしは握り締めたまま。
「おやすみなさいっ!」
わたしは、そう言って晋作さんの部屋を後にした。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「お前とずっと一緒に在りたい……」
晋作は、ついさっき少女が出て行った戸口を見つめていた。
「だから……」
一瞬言葉に詰まる。続けたい言葉など一つしかない。
「…───帰るな…か」
さっき。
危うく言いそうになった言葉を、独り呟いた。
晋作は、彼女に。「必ず帰してやる」と約束した。
だから。
拳をきつく握り締めて、窓から月を見上げる。……そして、自嘲した。
「なーに。単なる月夜の独り言だ」
大丈夫だと。自分に言い聞かせる。
大丈夫、自分は出来る。
繋いだ手を、放すことくらい……。
彼の気持ちには関係なく、夜はただ更けていく……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
と、いうわけで!八話でしたーーーっ!!!
ここでついに大変な事態に……っ!そう。レヴューの途中でたまらん眠くなり、二日かけて書くハメになりました。
……いやぁ…ずっと睡眠不足だからな……。
これ、書いてると時間かかるんだよな……。(平均2、3時間(爆))
でも、ずっと気になっていたことを試すイミでも良かったです。
今回一時中断してから再開した事で、『プレイ制限は、ゲームを開始した時間から換算される』とか『一時中断しても、過去ログは遡れる』など。
……章を終わらせさえしなければ大丈夫だな!と、心強い気分になりました。(いや、そもそも過去ログなんてほとんど必要ないんですけど、けど、こういった形態でレヴュー書いたら、ねぇ……。どうしても……)
あと、頑張れば20時間ごとに起動してちょっとでもはやく読み進めることが可能、と。
…晋作の次のキャラは、楽しくやろう……(遠い目)
今更コレはやめれないし(爆)
さておき。
なんだかもう、もどかしくてたまらないんですがーーーーっ!!!
主人公ちゃんが鈍いのがマズいんでしょうねぇ……。多分。
加えて晋作が若干……奥手っぽい……??(苦笑)だめだーーーーっ!!こんなカップルッ!!!!
と、いう、ダメ出しがモロに反映された内容になっていってるのがわかって…スミマセン。
ゲームはやっていない、というアナタ。実際の主人公ちゃんは乙女心ってモノがわかってないので、揺れる感じが薄いです…(笑)いや、あたしがベタ過ぎ(好き)なのか・・・?
個人的には、アレです。理想は『天は赤い河のほとり』な展開が理想なんですけど、晋作の鉄の理性が邪魔をする~~~(爆)
今日の選択肢
晋作さんのこと(花)
三味線弾くの好き?(スチルなんで、反応がわからない…)
幕恋 『高杉晋作 第七話』
2009年12月7日 携帯アプリ「いやっ!近寄らないで!」
「あらら、冷たいね~」
「この間はとんだ邪魔が入っちまったからなぁ」
言って男たちがゲラゲラと下品に笑った。こいつら……懲りない男たちね…っ!
…ん??
身を引いたわたしの目に、男たちの背後にゆらりと立った人物の顔が見えて、一気に脱力する。
「その邪魔って言うのは、オレの事か?」
「高杉っ!」
びくっと身をふるわせた男が振り返りざまにそう叫ぶ。
「さぁて、オレの女に何か用か?」
笑顔でそう凄まれて、男たちはあっという間に逃げ腰で……ていうか、むしろ逃げ出した。が、その二人の着物を晋作さんがむんずと掴むと、無造作に足元に引き倒す。
「オレはなぁ、学習しない奴が一番嫌いなんだ」
にっこりと笑う、その笑顔がそこはかとなく怖い…っ。ここまで笑顔で、そして次の言葉を発した時には目だけは少しも笑っていなかった。
「さぁ、遊んでいこうぜ?」
ヤバイ…。また本気だ…っ!!「助けてくれ!」と叫ぶ男たちに晋作さんは言い放つ。
「お前らなぁ…一度ならず、二度までもこのオレ様の女に手を出そうとしたんだ!それなりの覚悟あってのことだろうが!!」
晋作さんの手が刀にかかり。その迫力のせいなのか、男たちは逃げ出すことも出来ずに動かずに居る。
これじゃ、いつかの夜と同じだ…!わたしは、また晋作さんにしがみついて止めようと試みた。……だって、言葉だけで止められるとは思えない…!
それくらい、晋作さんが本気で怒っているのがわかったから。
「こら、放せ!危ないだろうが!」
「そう思うんだったら、やめて!お願いっ!」
「お前なぁっ!状況がわかってんのか!……っ!」
そう、晋作さんが叫んだ直後だった。
あんなに怒っていた晋作さんがスッと手を刀から放すと、わたしの腕をぐいっと引いて歩き始めた。男たちがいる場所から離れるように。
晋作さんに腕を引かれるまま歩きながら振り返ると、男たちが命拾いしたとばかりに逃げ出していくのが見えた。
その後も晋作さんはドンドン歩いていく。
……急にどうしたんだろう…。痛いほど腕を引っ張られて。無言のままで。
いつもと違う空気に、只事ではないのだと直感でそう思う。
そして。
人気のない草むらに来たその時。晋作さんの姿と、腕を引く力が消えた。
「ごほっ!!ご…!!ごほっごほっごほっ…っ!!」
咳き込む声で、消えたのではないと気付いた。
晋作さんが強く咳き込んで、うずくまっている。
「晋作さん…!晋作さんっ!どうしたの?大丈夫!?」
晋作さんはうずくまったまま何度も何度も咳き込んで、わたしの声も聞こえているのかいないのか、答えないままだ。
わたしはどうしたらいいのかわからなくて、晋作さんの背中を何度も撫でる。
しばらくそうしていると、咳は治まってきたけど。相変わらず喋ることは出来ない様子で肩でぜいぜいと苦しそうに呼吸している。
……只事じゃない。藩邸に、なんとか連れて帰らないと…!!!
「もうちょっとだけ頑張って!!わたしが藩邸に連れて帰ってあげるから!」
暗闇と、状況と。泣きそうなのはやまやまだったけど、今わたしが弱気でいるわけにはいかない!わたしは晋作さんに肩を貸して何とか立ち上がらせようとする…のだけど。
どんなに力を入れて踏ん張っても。晋作さんの大きな身体はなかなか持ち上がらない。
……どうしよう…!このままじゃ晋作さんが……!
と、その時背後から声がした。
「あれ?君はこの間の」
この…人。大通りでわたしの事珍妙珍妙連呼した……。(沖田さんです)
「!ごほっごほっ……!!」
横で晋作さんがまた咳き込む。
うん。なりふり構ってる場合じゃないよっ!!!
わたしは目の前の…顔見知りでしかない彼に頼み込む。早く家に連れて帰りたいので手を貸して欲しいと。
目の前の…月明かりで見て、今思ったけど。キレイなカオの青年はふっと笑う。
「わかった。とにかく、君は落ち着いて」
「あ……」
なんだろう、この人。声……なのかな?雰囲気なのかな?自分の頭にのぼった血が冷めるみたいな気分。
そう、今はわたし落ちつかなくちゃ。
「大丈夫。僕にできることなら、手を貸しますから」
「ありがとう……ございます」
わたしは、ほっと息をついた。それを見て、彼は自己紹介する。
「僕は、新撰組の沖田総司。困った時はお互い様。気にしなくていいですよ」
「新撰組…?」(を、知らないのはもう…バカとかどうとかいう領域を超えてますーーー(泣))
沖田さんの言った、その『新撰組』を知らないことでとても珍しそうな反応を返される。
あ……。これ、知ってて当然のことなのね…。慌ててわたしはこの辺の事に詳しくないのだと言い訳する。
「新撰組……沖…田……」
横で、晋作さんが小さく。本当に小さく呟くのが聞こえた。
「え……なに…」
「それで、彼をどこかまで運べばいいのかな?」
「はい。えっと」
道を答えようとして口ごもる。そういえば、ここはどの辺なの??結局晋作さんに強引に連れてこられたので自分のいる位置すら怪しい……。
「あっちの方向に……なると思うんですが……」
なーんて。怪しいことこの上ない道案内を試みてみた。その時。
フラリと晋作さんが立ち上がった。
「無理したらダメだよっ!!!」
「…お前は知らんやろが。沖田はんと言えば、池田屋の英雄さんでっせ。そんな新撰組の偉いさんに……迷惑かけるワケ、いきまへん…っ!」
「喋らないで!また咳が出ちゃう!」
彼を止めつつ、でも違和感も感じている。なんだか、晋作さん、喋り方が変??
「いつも心配かけてすまんなぁ……。だが、お前の梅之助様はそんなにやわやないさかいに……」
梅之助…?
……お前の…梅之助さま……って、晋作さんのこと??
「梅之助様を信じられないんか…」
多分、無理してるんだろう。辛そうな表情のまま……でも、何かを訴えるように晋作さんがわたしを見つめる。
晋作さんが正直何を言いたいのか。さっぱりわからなかったけど。
ただ、わかったこともある。名前、と。この人に頼ってはダメなのだということ。
わたしは、崩れ落ちそうな晋作さんの身体を必死で支える。大丈夫。わかったよ、と思いを込めて。
「う…梅之助さん、無理しないで」
言葉にふぅと息をついた晋作さんに、沖田さんの声がかかる。
「梅之助さん、あんたもしや……労咳なのかい?」
言葉に晋作さんは答えない。……ろうがいって、なに……??
「!?…ごほっ、ごほっごほっ!!」
その時晋作さんがまた大きく咳き込んで、その勢いでわたしの身体ごと崩れ落ちそうになる。
「危ないっ!」
バランスを崩したわたし達を支えようと、沖田さんが手を伸ばす。けど。
「大丈夫…や、さか……い」
沖田さんの手がわたし達に触れるより一瞬早く、晋作さんの手が真っ直ぐに突き出される。
それは、明らかに沖田さんを拒否する意思表示。
「……仕方、ないかな」
新撰組は、京の人たちに嫌われているから。と、幾分自嘲気味に沖田さんが笑う。
「行こう……」
フラフラと歩き出す晋作さんを追って、わたしは彼に肩を貸す。
けど、顔だけをクルリと振り向かせて沖田さんを見た。
「あ……あの、沖田さんっ!」
「はい?」
佇むその人は、とても悲しそうに見えた。晋作さんは嫌がっているけれど、あの人はわたし達を助けようと手を差し延べてくれた…。
その事だけは間違いのない事実で、だから。
「すみません!でも、ありがとうございました!」
ふっと、優しげな笑みを浮かべる沖田さん。
「いいんですよ。気にせず、気をつけてお帰り」
かなり酷いことをしたと思うのに。笑みにも言葉にも、嘘はないように聞こえた。
優しそうな人。
今度、もし会うことがあったらもう一度ちゃんとお詫びとお礼を言わなくちゃ!
そう決意して、隣を歩く晋作さんを思う。
こんなに具合が悪そうなのに、急いで歩いてる……。まるでここから少しでも早く離れたがってるみたいだ。
頼りない足取りで歩く晋作さんを、わたしは必死で支える。
「晋作さん、しっかり」
「……あぁ……」
咳は大分治まったようだけど、まだ息は荒い。
実は晋作さんを支える腕も、だんだん感覚がなくなってきている。
でも、周りには相変わらず人影がなくて。
…少し休んでもらう方がいいかも。このまま腕に力が入らなくなったら晋作さんが転びそうになっても、助けてあげられない…。
「晋作さん、この草むら抜けたら、少し休もうね」
「ん…わかった……」
相変わらず、肩で息をする晋作さんは本当に苦しそうだった。
だから、思わず聞いてしまう。
「大丈夫?このまま歩ける?」
「ああ、大丈夫…だ……歩こう…」
そう答えられてから、気付いた。そんな聞き方したらダメだった、と。
大丈夫?って聞かれたら、晋作さんは大丈夫って答えるに決まってる。そういう人だ。
つくづく、自分の未熟さがイヤになる。わたしが悲しい時、晋作さんは自然に…わたしがそうと感じないような言葉や…態度で楽にしてくれたのに。
わたしは、そんなことすらしてあげられない。辛いのを代わってあげることもできなければ、和らげることもできない。支える事だって、ままならない。
いや、ダメだ!!!今ここで落ち込んでもしょうがない!
「わかった!もう少し、頑張って」
「……ああ……。…重く、ないか?」
「平気平気!わたしこう見えても力あるんだから!」
絶対気付かれたくない!だから、わたしは笑って元気よく答える。
もう、腕の感覚がほとんどないけど。支えられなくなって倒れたら…怪我でもさせてしまったらどうしようかと、不安だけど。
でも、それを出してしまったら結局また、晋作さんに無理をさせてしまう。……それだけは、せめて避けたい。
わたしの体にかかるズシリとした晋作さんの重みを必死で支えて、一歩一歩、晋作さんに合わせて慎重に歩く。
しばらく歩きつづけていると、なんとか草むらを抜け出した。
「あ!階段があるよ。少し腰掛け……!?」
わたしは言いかけた言葉を続けることができなかった。
既視感。…とでもいうのだろうか。ふと目に入ってきた情景に、眩暈がする。
そうだ、ここは。
「どうした?」
「晋作さん……ここ…わたしが探していた……お寺」
「え!?」
晋作さんも、目の前のそれをじっと見る。
「間違い…ないのか?」
「うん……」
昼と、夜。光の加減で随分と印象は変わって見えるけど間違いないと思う。
ここが、わたしが飛ばされた場所、だ。
「はは……なるほど」
晋作さんが小さく笑った。
「見つからないワケだ……」
「え…?な、なんで…?」
晋作さんがじっと前を見つめている。
「……これは、神社……オレが探そうとしていたのは、寺だったからな……」
「あ…それって、違うの?」(こらーーーッ(泣)そんな常識レベルで間違わないでよッ!)
「ああ……違う」
ガーン!!!!衝撃の事実。じゃあ、私は今まで全くの見当違いをしてたワケだ…?
「そうか…ここが、そうなの、かっ……」
言葉の途中でまた晋作さんが辛そうに咳き込む。とにかく座ってもらおうと、晋作さんの体を支えてゆっくりと階段に座らせる。
そして、落ちる沈黙。
何を言えば良いのか、わからなかった。多分、晋作さんも同じなんだと思う。
今夜は、色々あったから……。
「なぁ…」
急に声をかけられて、わたしは晋作さんがまた苦しいのかと思って身構える。
…イヤ、身構えてもしょうがないけど。
結局そうではなくて、さっきの……晋作さんの演技(?)に合わせられたことを褒められる。
「そういえば、どうして突然あんな……」
「あれは、新撰組の沖田だったんだろう?」
ふっと笑い、晋作さんが続けた。
もしわたしが晋作さんに合わせる事ができず、彼が『高杉晋作』だと知れていたら。わたしが連れて帰れたのは晋作さんの胴体だけだっただろう、と。
それはつまり、晋作さんが殺されてたと、いうことで。
でも、沖田さんはそんなに悪い人には見えなかったのに。
そう言うと、珍しく厳しい口調で晋作さんに制された。
「良い、悪いじゃない」
びっくりしたのと、何を言っていいのかわからなかったことで。わたしはそれ以上何も言えなくなる。
「……すまん」
しばらくして、晋作さんがそう言って「なかなか、調子が戻らん」とちょっとおどけてみせた。そしてそのままわたしの頭をガシガシと乱暴に撫でる。
「まぁ、とにかく。新撰組は京の見廻りの中でも過激な奴らだからな」
幸いにして町の人たちにも嫌われているので、ああいった風に避けても不自然じゃなかった……ということらしい。
なんだか、この世界のことはよくわからないけど。とりあえず今回の一件に関しては『新撰組と高杉さん達は仲が悪い』と覚えておくように、と念を押された。
その後は、沖田さんがわたしを知っていたのは何故なのか、とか。実はわたしは土方さんにも会ったことがある、とか。
そんな話をして。
晋作さんに顔が広いと褒められたり、けれど『倒幕派』の人間(これが多分晋作さんたちのこと…なのよね?)と親交があると知れたらわたしの身の安全も危うい。とも教えてもらった。
いつになくきつい眼差しで話す晋作さんが真剣で。
だから、わたしも新撰組の人たちには気をつけることを晋作さんと約束する。そうすると、
「よし!素直で偉いぞ!」
と、またガシガシ撫でられた。
「もう!またそうやって子供扱いする!」
「ははは、ほら、むくれるな!」
もう……。
でも、結構元気になってきたかな…?そう思えて、ほっとする。
さっきは本当にどうなることかと思ったけど。
……そういえば。
「ろうがい、って何?」
「っ!」
わたしが口にした途端、晋作さんが気まずそうな顔をして視線をそらしてしまう。
「…聞きたいか?」
「…え、…えっと……」
聞きたいか聞きたくないかと言われれば、聞きたい。
でも、晋作さんが言いたくないことを無理に聞くのも……気が引けるような。
「教えてやらなくもない……ただし。お前がオレと夫婦になると約束をしたら、だ!」
「え!?夫婦っ!?」
突然の言葉にアタフタしてしまう。
一体何がどうなるとそうなってしまうのか?今だって付き合っているとは程遠い関係だと思うし、そんな……仲じゃ、ないと思う。のに。
「こんな時に、ふざけないで下さい」
「ふざけていない」
晋作さんは間髪いれずに答え、真っ直ぐにわたしを見る。
「オレはお前が好きだ。そう望んだとしても不思議ではないだろう?」
「ふっ、ふしぎっ!不思議だよ!!!」
出会って数日、まだ良く知らない相手同士で、しかも晋作さんの言葉が事実だとすればわたしは未来の人間で、晋作さんは過去の……歴史の中の人だ。
いろんなイミで隔たりがあるだろうし、その溝が埋められるほどの…何かがあるわけじゃない、と思う。……少なくとも、今は、まだ。
「ほら、そんなに興奮するな」
「興奮なんてしてないから!」
精一杯強がると、晋作さんがわたしに手を差しのべた。
「ははは、本当に可愛い奴だ!ほら、藩邸に帰るぞ?」
冷えたその手を、差し延べられたのよりももっと静かに握り返す。
晋作さんの手。わたしより大きくて、ごつごつしてて。包み込んでくれる、手。
ずっと、こうしていたいな……。
そう思いながら、繋いだ手をきゅっと握ると。晋作さんも握り返してくれる。
わたし達は、そうして手を繋いだまま藩邸への帰路についた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ハイ、第七話でしたっ!!!
ん~~~。どうも選択肢を選んでる感じだと、そろそろ晋作さんに傾いてきているような返答を返すほうがウケる予感ですね…(どんな感想だ)
今回の2個目の選択は、多分『考えてみます(だっけ?)』そんな感じの返答のが良かったんではないかな、と。悔やんでおります(笑)
まぁ、でもあれで「ふざけてない」からのとうとうと語られる感じは凄く好きだったんで良かったですけど(笑)
ちょっと……主人公がイタすぎることだけは勘弁だなぁ…と思いますけど(苦笑)まぁ、しょうがないですよねぇ…。この主人公ちゃんが『歴女』だったり秀才だったりした日にゃ好みの人に付いて、歴史を変えちゃいますよねぇ…(怖)
しかしイタイ……。新撰組知らないのは、ナイわぁ……(爆)労咳だってわかるでしょ???
書き起こしてる一人称がまたその『わたし』視点だからほんと凹みますよね(笑)
晋作視点の時のが、三人称で語れるんで楽チンです(主人公拒否!?)
ま、読んでる側にも余計な情報を与えない為には、お馬鹿な主人公視点がやりやすくはあるでしょう。(だから、なんて感想だ…(泣))
思ったより簡単に二度目の災難が解決されてがっかり。
かんざしのエピソードはここで使わないのか、でがっかり。。(どうしよう。元の世界に戻る時に思い出として渡されたら(苦笑)泣くかも(ベタベタ))
そして何より。
せっかく寺…もとい神社、見つかったんですけどな展開にガッカリ。(笑)
龍でも召喚しろ。8人くらい仲間見つけて(メイン攻略キャラ、9人なのに!爆)
今日の選択肢
しがみついて止める(立ち絵なし)
ふざけないで
「あらら、冷たいね~」
「この間はとんだ邪魔が入っちまったからなぁ」
言って男たちがゲラゲラと下品に笑った。こいつら……懲りない男たちね…っ!
…ん??
身を引いたわたしの目に、男たちの背後にゆらりと立った人物の顔が見えて、一気に脱力する。
「その邪魔って言うのは、オレの事か?」
「高杉っ!」
びくっと身をふるわせた男が振り返りざまにそう叫ぶ。
「さぁて、オレの女に何か用か?」
笑顔でそう凄まれて、男たちはあっという間に逃げ腰で……ていうか、むしろ逃げ出した。が、その二人の着物を晋作さんがむんずと掴むと、無造作に足元に引き倒す。
「オレはなぁ、学習しない奴が一番嫌いなんだ」
にっこりと笑う、その笑顔がそこはかとなく怖い…っ。ここまで笑顔で、そして次の言葉を発した時には目だけは少しも笑っていなかった。
「さぁ、遊んでいこうぜ?」
ヤバイ…。また本気だ…っ!!「助けてくれ!」と叫ぶ男たちに晋作さんは言い放つ。
「お前らなぁ…一度ならず、二度までもこのオレ様の女に手を出そうとしたんだ!それなりの覚悟あってのことだろうが!!」
晋作さんの手が刀にかかり。その迫力のせいなのか、男たちは逃げ出すことも出来ずに動かずに居る。
これじゃ、いつかの夜と同じだ…!わたしは、また晋作さんにしがみついて止めようと試みた。……だって、言葉だけで止められるとは思えない…!
それくらい、晋作さんが本気で怒っているのがわかったから。
「こら、放せ!危ないだろうが!」
「そう思うんだったら、やめて!お願いっ!」
「お前なぁっ!状況がわかってんのか!……っ!」
そう、晋作さんが叫んだ直後だった。
あんなに怒っていた晋作さんがスッと手を刀から放すと、わたしの腕をぐいっと引いて歩き始めた。男たちがいる場所から離れるように。
晋作さんに腕を引かれるまま歩きながら振り返ると、男たちが命拾いしたとばかりに逃げ出していくのが見えた。
その後も晋作さんはドンドン歩いていく。
……急にどうしたんだろう…。痛いほど腕を引っ張られて。無言のままで。
いつもと違う空気に、只事ではないのだと直感でそう思う。
そして。
人気のない草むらに来たその時。晋作さんの姿と、腕を引く力が消えた。
「ごほっ!!ご…!!ごほっごほっごほっ…っ!!」
咳き込む声で、消えたのではないと気付いた。
晋作さんが強く咳き込んで、うずくまっている。
「晋作さん…!晋作さんっ!どうしたの?大丈夫!?」
晋作さんはうずくまったまま何度も何度も咳き込んで、わたしの声も聞こえているのかいないのか、答えないままだ。
わたしはどうしたらいいのかわからなくて、晋作さんの背中を何度も撫でる。
しばらくそうしていると、咳は治まってきたけど。相変わらず喋ることは出来ない様子で肩でぜいぜいと苦しそうに呼吸している。
……只事じゃない。藩邸に、なんとか連れて帰らないと…!!!
「もうちょっとだけ頑張って!!わたしが藩邸に連れて帰ってあげるから!」
暗闇と、状況と。泣きそうなのはやまやまだったけど、今わたしが弱気でいるわけにはいかない!わたしは晋作さんに肩を貸して何とか立ち上がらせようとする…のだけど。
どんなに力を入れて踏ん張っても。晋作さんの大きな身体はなかなか持ち上がらない。
……どうしよう…!このままじゃ晋作さんが……!
と、その時背後から声がした。
「あれ?君はこの間の」
この…人。大通りでわたしの事珍妙珍妙連呼した……。(沖田さんです)
「!ごほっごほっ……!!」
横で晋作さんがまた咳き込む。
うん。なりふり構ってる場合じゃないよっ!!!
わたしは目の前の…顔見知りでしかない彼に頼み込む。早く家に連れて帰りたいので手を貸して欲しいと。
目の前の…月明かりで見て、今思ったけど。キレイなカオの青年はふっと笑う。
「わかった。とにかく、君は落ち着いて」
「あ……」
なんだろう、この人。声……なのかな?雰囲気なのかな?自分の頭にのぼった血が冷めるみたいな気分。
そう、今はわたし落ちつかなくちゃ。
「大丈夫。僕にできることなら、手を貸しますから」
「ありがとう……ございます」
わたしは、ほっと息をついた。それを見て、彼は自己紹介する。
「僕は、新撰組の沖田総司。困った時はお互い様。気にしなくていいですよ」
「新撰組…?」(を、知らないのはもう…バカとかどうとかいう領域を超えてますーーー(泣))
沖田さんの言った、その『新撰組』を知らないことでとても珍しそうな反応を返される。
あ……。これ、知ってて当然のことなのね…。慌ててわたしはこの辺の事に詳しくないのだと言い訳する。
「新撰組……沖…田……」
横で、晋作さんが小さく。本当に小さく呟くのが聞こえた。
「え……なに…」
「それで、彼をどこかまで運べばいいのかな?」
「はい。えっと」
道を答えようとして口ごもる。そういえば、ここはどの辺なの??結局晋作さんに強引に連れてこられたので自分のいる位置すら怪しい……。
「あっちの方向に……なると思うんですが……」
なーんて。怪しいことこの上ない道案内を試みてみた。その時。
フラリと晋作さんが立ち上がった。
「無理したらダメだよっ!!!」
「…お前は知らんやろが。沖田はんと言えば、池田屋の英雄さんでっせ。そんな新撰組の偉いさんに……迷惑かけるワケ、いきまへん…っ!」
「喋らないで!また咳が出ちゃう!」
彼を止めつつ、でも違和感も感じている。なんだか、晋作さん、喋り方が変??
「いつも心配かけてすまんなぁ……。だが、お前の梅之助様はそんなにやわやないさかいに……」
梅之助…?
……お前の…梅之助さま……って、晋作さんのこと??
「梅之助様を信じられないんか…」
多分、無理してるんだろう。辛そうな表情のまま……でも、何かを訴えるように晋作さんがわたしを見つめる。
晋作さんが正直何を言いたいのか。さっぱりわからなかったけど。
ただ、わかったこともある。名前、と。この人に頼ってはダメなのだということ。
わたしは、崩れ落ちそうな晋作さんの身体を必死で支える。大丈夫。わかったよ、と思いを込めて。
「う…梅之助さん、無理しないで」
言葉にふぅと息をついた晋作さんに、沖田さんの声がかかる。
「梅之助さん、あんたもしや……労咳なのかい?」
言葉に晋作さんは答えない。……ろうがいって、なに……??
「!?…ごほっ、ごほっごほっ!!」
その時晋作さんがまた大きく咳き込んで、その勢いでわたしの身体ごと崩れ落ちそうになる。
「危ないっ!」
バランスを崩したわたし達を支えようと、沖田さんが手を伸ばす。けど。
「大丈夫…や、さか……い」
沖田さんの手がわたし達に触れるより一瞬早く、晋作さんの手が真っ直ぐに突き出される。
それは、明らかに沖田さんを拒否する意思表示。
「……仕方、ないかな」
新撰組は、京の人たちに嫌われているから。と、幾分自嘲気味に沖田さんが笑う。
「行こう……」
フラフラと歩き出す晋作さんを追って、わたしは彼に肩を貸す。
けど、顔だけをクルリと振り向かせて沖田さんを見た。
「あ……あの、沖田さんっ!」
「はい?」
佇むその人は、とても悲しそうに見えた。晋作さんは嫌がっているけれど、あの人はわたし達を助けようと手を差し延べてくれた…。
その事だけは間違いのない事実で、だから。
「すみません!でも、ありがとうございました!」
ふっと、優しげな笑みを浮かべる沖田さん。
「いいんですよ。気にせず、気をつけてお帰り」
かなり酷いことをしたと思うのに。笑みにも言葉にも、嘘はないように聞こえた。
優しそうな人。
今度、もし会うことがあったらもう一度ちゃんとお詫びとお礼を言わなくちゃ!
そう決意して、隣を歩く晋作さんを思う。
こんなに具合が悪そうなのに、急いで歩いてる……。まるでここから少しでも早く離れたがってるみたいだ。
頼りない足取りで歩く晋作さんを、わたしは必死で支える。
「晋作さん、しっかり」
「……あぁ……」
咳は大分治まったようだけど、まだ息は荒い。
実は晋作さんを支える腕も、だんだん感覚がなくなってきている。
でも、周りには相変わらず人影がなくて。
…少し休んでもらう方がいいかも。このまま腕に力が入らなくなったら晋作さんが転びそうになっても、助けてあげられない…。
「晋作さん、この草むら抜けたら、少し休もうね」
「ん…わかった……」
相変わらず、肩で息をする晋作さんは本当に苦しそうだった。
だから、思わず聞いてしまう。
「大丈夫?このまま歩ける?」
「ああ、大丈夫…だ……歩こう…」
そう答えられてから、気付いた。そんな聞き方したらダメだった、と。
大丈夫?って聞かれたら、晋作さんは大丈夫って答えるに決まってる。そういう人だ。
つくづく、自分の未熟さがイヤになる。わたしが悲しい時、晋作さんは自然に…わたしがそうと感じないような言葉や…態度で楽にしてくれたのに。
わたしは、そんなことすらしてあげられない。辛いのを代わってあげることもできなければ、和らげることもできない。支える事だって、ままならない。
いや、ダメだ!!!今ここで落ち込んでもしょうがない!
「わかった!もう少し、頑張って」
「……ああ……。…重く、ないか?」
「平気平気!わたしこう見えても力あるんだから!」
絶対気付かれたくない!だから、わたしは笑って元気よく答える。
もう、腕の感覚がほとんどないけど。支えられなくなって倒れたら…怪我でもさせてしまったらどうしようかと、不安だけど。
でも、それを出してしまったら結局また、晋作さんに無理をさせてしまう。……それだけは、せめて避けたい。
わたしの体にかかるズシリとした晋作さんの重みを必死で支えて、一歩一歩、晋作さんに合わせて慎重に歩く。
しばらく歩きつづけていると、なんとか草むらを抜け出した。
「あ!階段があるよ。少し腰掛け……!?」
わたしは言いかけた言葉を続けることができなかった。
既視感。…とでもいうのだろうか。ふと目に入ってきた情景に、眩暈がする。
そうだ、ここは。
「どうした?」
「晋作さん……ここ…わたしが探していた……お寺」
「え!?」
晋作さんも、目の前のそれをじっと見る。
「間違い…ないのか?」
「うん……」
昼と、夜。光の加減で随分と印象は変わって見えるけど間違いないと思う。
ここが、わたしが飛ばされた場所、だ。
「はは……なるほど」
晋作さんが小さく笑った。
「見つからないワケだ……」
「え…?な、なんで…?」
晋作さんがじっと前を見つめている。
「……これは、神社……オレが探そうとしていたのは、寺だったからな……」
「あ…それって、違うの?」(こらーーーッ(泣)そんな常識レベルで間違わないでよッ!)
「ああ……違う」
ガーン!!!!衝撃の事実。じゃあ、私は今まで全くの見当違いをしてたワケだ…?
「そうか…ここが、そうなの、かっ……」
言葉の途中でまた晋作さんが辛そうに咳き込む。とにかく座ってもらおうと、晋作さんの体を支えてゆっくりと階段に座らせる。
そして、落ちる沈黙。
何を言えば良いのか、わからなかった。多分、晋作さんも同じなんだと思う。
今夜は、色々あったから……。
「なぁ…」
急に声をかけられて、わたしは晋作さんがまた苦しいのかと思って身構える。
…イヤ、身構えてもしょうがないけど。
結局そうではなくて、さっきの……晋作さんの演技(?)に合わせられたことを褒められる。
「そういえば、どうして突然あんな……」
「あれは、新撰組の沖田だったんだろう?」
ふっと笑い、晋作さんが続けた。
もしわたしが晋作さんに合わせる事ができず、彼が『高杉晋作』だと知れていたら。わたしが連れて帰れたのは晋作さんの胴体だけだっただろう、と。
それはつまり、晋作さんが殺されてたと、いうことで。
でも、沖田さんはそんなに悪い人には見えなかったのに。
そう言うと、珍しく厳しい口調で晋作さんに制された。
「良い、悪いじゃない」
びっくりしたのと、何を言っていいのかわからなかったことで。わたしはそれ以上何も言えなくなる。
「……すまん」
しばらくして、晋作さんがそう言って「なかなか、調子が戻らん」とちょっとおどけてみせた。そしてそのままわたしの頭をガシガシと乱暴に撫でる。
「まぁ、とにかく。新撰組は京の見廻りの中でも過激な奴らだからな」
幸いにして町の人たちにも嫌われているので、ああいった風に避けても不自然じゃなかった……ということらしい。
なんだか、この世界のことはよくわからないけど。とりあえず今回の一件に関しては『新撰組と高杉さん達は仲が悪い』と覚えておくように、と念を押された。
その後は、沖田さんがわたしを知っていたのは何故なのか、とか。実はわたしは土方さんにも会ったことがある、とか。
そんな話をして。
晋作さんに顔が広いと褒められたり、けれど『倒幕派』の人間(これが多分晋作さんたちのこと…なのよね?)と親交があると知れたらわたしの身の安全も危うい。とも教えてもらった。
いつになくきつい眼差しで話す晋作さんが真剣で。
だから、わたしも新撰組の人たちには気をつけることを晋作さんと約束する。そうすると、
「よし!素直で偉いぞ!」
と、またガシガシ撫でられた。
「もう!またそうやって子供扱いする!」
「ははは、ほら、むくれるな!」
もう……。
でも、結構元気になってきたかな…?そう思えて、ほっとする。
さっきは本当にどうなることかと思ったけど。
……そういえば。
「ろうがい、って何?」
「っ!」
わたしが口にした途端、晋作さんが気まずそうな顔をして視線をそらしてしまう。
「…聞きたいか?」
「…え、…えっと……」
聞きたいか聞きたくないかと言われれば、聞きたい。
でも、晋作さんが言いたくないことを無理に聞くのも……気が引けるような。
「教えてやらなくもない……ただし。お前がオレと夫婦になると約束をしたら、だ!」
「え!?夫婦っ!?」
突然の言葉にアタフタしてしまう。
一体何がどうなるとそうなってしまうのか?今だって付き合っているとは程遠い関係だと思うし、そんな……仲じゃ、ないと思う。のに。
「こんな時に、ふざけないで下さい」
「ふざけていない」
晋作さんは間髪いれずに答え、真っ直ぐにわたしを見る。
「オレはお前が好きだ。そう望んだとしても不思議ではないだろう?」
「ふっ、ふしぎっ!不思議だよ!!!」
出会って数日、まだ良く知らない相手同士で、しかも晋作さんの言葉が事実だとすればわたしは未来の人間で、晋作さんは過去の……歴史の中の人だ。
いろんなイミで隔たりがあるだろうし、その溝が埋められるほどの…何かがあるわけじゃない、と思う。……少なくとも、今は、まだ。
「ほら、そんなに興奮するな」
「興奮なんてしてないから!」
精一杯強がると、晋作さんがわたしに手を差しのべた。
「ははは、本当に可愛い奴だ!ほら、藩邸に帰るぞ?」
冷えたその手を、差し延べられたのよりももっと静かに握り返す。
晋作さんの手。わたしより大きくて、ごつごつしてて。包み込んでくれる、手。
ずっと、こうしていたいな……。
そう思いながら、繋いだ手をきゅっと握ると。晋作さんも握り返してくれる。
わたし達は、そうして手を繋いだまま藩邸への帰路についた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ハイ、第七話でしたっ!!!
ん~~~。どうも選択肢を選んでる感じだと、そろそろ晋作さんに傾いてきているような返答を返すほうがウケる予感ですね…(どんな感想だ)
今回の2個目の選択は、多分『考えてみます(だっけ?)』そんな感じの返答のが良かったんではないかな、と。悔やんでおります(笑)
まぁ、でもあれで「ふざけてない」からのとうとうと語られる感じは凄く好きだったんで良かったですけど(笑)
ちょっと……主人公がイタすぎることだけは勘弁だなぁ…と思いますけど(苦笑)まぁ、しょうがないですよねぇ…。この主人公ちゃんが『歴女』だったり秀才だったりした日にゃ好みの人に付いて、歴史を変えちゃいますよねぇ…(怖)
しかしイタイ……。新撰組知らないのは、ナイわぁ……(爆)労咳だってわかるでしょ???
書き起こしてる一人称がまたその『わたし』視点だからほんと凹みますよね(笑)
晋作視点の時のが、三人称で語れるんで楽チンです(主人公拒否!?)
ま、読んでる側にも余計な情報を与えない為には、お馬鹿な主人公視点がやりやすくはあるでしょう。(だから、なんて感想だ…(泣))
思ったより簡単に二度目の災難が解決されてがっかり。
かんざしのエピソードはここで使わないのか、でがっかり。。(どうしよう。元の世界に戻る時に思い出として渡されたら(苦笑)泣くかも(ベタベタ))
そして何より。
せっかく寺…もとい神社、見つかったんですけどな展開にガッカリ。(笑)
龍でも召喚しろ。8人くらい仲間見つけて(メイン攻略キャラ、9人なのに!爆)
今日の選択肢
しがみついて止める(立ち絵なし)
ふざけないで
幕恋 『高杉晋作 第六話』
2009年12月6日 携帯アプリ「うわっ!くるなっ!!」
「高杉さん、がんばれ!」
あの後、すぐ高杉さんは帰ってきて。それから今までずっとわたしの部屋にいる。
で、何をしているかと言うと。
携帯のゲーム。
確かに圏外にはなっているけど、携帯自体に落としてあるゲームならできると思ってv
うーん。さすが文明の利器☆
案の定、珍しい物好きであるらしい高杉さんは子供のように夢中になってゲームをしている。
……しかも、わたしよりウマいでやんの……。
最初こそ下手っぴだったけど、いまやわたしだって見たことのない面を爆走中。
さらに、わたしが思いつかなかったような技を使ってどんどんクリアしていく。
「高杉さんってすごいですね!身体を動かすのが得意なのは…まぁ、わかりましたけど。頭もいいんだなぁ」
「ははは、なんだそれは!オレなんて大した事はないぞ!」
一瞬驚いた顔をした高杉さんが、笑う。
「謙遜ですか?」
「いや、謙遜じゃない。以前は他の奴らより頭がいいと、得意になっていたがな!」
「今は違うんですか?」
問うと、高杉さんはある人との出会いがそんな考えを変えたのだと答える。『吉田松陰先生』という人。高杉さんがあんまり目を輝かせて話すものだから、つい聞いてしまう。
「その人は、今どこに?」
言葉に、珍しく高杉さんが表情を曇らせて目を伏せた。
「死んだ。……打ち首になったんだ」
しまった、と思った。変なこと、聞いちゃった。
謝ると、高杉さんはふっと笑う。
「いや、気にすることはない。聞きたい事はなんでも聞けといったのは、オレだからな」
「……はい」
と、口では答えたものの。しっかり表情に「やってしまいました」と出ていたらしい。高杉さんが苦笑して言う。最近、何度も言ってくれているあんな風に。
「ほーら、そんな顔するな!」
確かに先生は亡くなったが、その志は高杉さんや桂さんの中に生きているから。と。
優しい表情で話す高杉さんにほっとするわたしに、少しだけ吉田先生の話をしてくれた。
彼の教えてくれたことの中には『飛耳長目』というものがあり。あらゆる物事に対して、常に敏感であり、多くの情報を得ることなのだという。(なるほど、なんだか高杉さん見てるとわかるような気もする…)多少の意味合いは違うけれど、わたしの荷物や…ゲーム。そしてわたしの知識だって、どこかで活かせる時がくる。と。励ましてくれる。
「お前は凄い!自信を持て!」
高杉さんに言われると、不思議で。嬉しい。心からそう言ってくれてるのが伝わって、温かい気持ちになる。
ふと、そんな中高杉さんが目をこする。
「目が痛いな…やりすぎたか?」
確かに、慣れないモノだしあれだけ集中してやってたら目だって疲れるよね。
遠くを見るほうがいいだろうと思って、わたしは夜の縁側に高杉さんを誘った。
「うわー!キレイな月!高杉さんも見て見て!」
わたし達は並んで縁側に腰掛けた。満月に近い大きな月がわたし達を照らし出す。星も霞んでしまうほど、晧々とした月。
しばらく月に見惚れて、そして。さっきから心の奥でずっと気になっていた件を、高杉さんに伝えることにした。
「あの、高杉さん。さっきのことなんですけど……」
「さっき?」
う……改めて蒸し返すの、勇気がいるなぁ……。怯みそうになる自分に「さっきちゃんと言うって決めたでしょ!?」と言い聞かせて、口を開く。
「さっき…その……。大久保さんと高杉さんのどっちか選べって言われた、あれです」
「あー!あれか!」
思い出した様子の高杉さんは、目に見えてわかるほどシュンとなる。
ああ……罪悪感(汗)
「あの答えは、我ながらかなりの痛手を負ったぞ!」
やっぱりやっぱり、全力でフォローしなきゃ!!!このまま誤解されたままっていうのは…ちょっとっ!その……心が苦しい……っ。
「は……恥ずかしかったんです!」
「恥ずかしかった?」
「だから…その……。本当は、わたし。高杉さんがいるから、長州藩邸がいいって。そう、言おうと思ったんです……」
「そうなのか?」
なんか……。また、段々恥ずかしくなってきたんだけどっ…!!!
イヤ、逃げちゃダメだ!!!ここまで言ったんだから、もう逃げれないでしょ!!!
「はい…。でも、周りにみんないたし、恥ずかしくて、苦し紛れにあんな……だから、あんな風に言っちゃって、ごめんなさい!」
謝って、スッキリした気持ちで高杉さんを見上げると。高杉さんは満面の笑顔で。
だから、わたしはやっぱり言ってよかったと確信する。
「気にするな。オレは嬉しい」
それだけ、高杉さんが答えてくれて。後は二人で一緒に、ただ黙って夜空を見上げる。
…しばらく無言だったけど、なんだかわたし達の周りの空気は穏やかで。
ずっとこうしてたいなって、純粋に思った。
「なぁ…」
しばらくの沈黙の後で、高杉さんが口を開く。わたしは隣の高杉さんを見上げるけど、彼は変わらず夜空に視線をやったままだ。
……なんだろう?
「お前、やっぱり元の世界に、帰りたいか?」
「え……」
突然すぎる質問に、言葉がつまる。
「正直に言え」
高杉さんに促されても、わたしは答えられないままだった。考えるまでも、ないことのハズ、なのに。
……もとの世界に帰るって事は、この世界とはサヨナラするってことで……。
わたしは。
「どうした?」
「わたしは……」
「ん?」
スカートの上で重ねた自分の手をぎゅっと握り締める。
「わたしは、高杉さんにもみんなにもとても良くしてもらって、ここが大好きです」
「ん」
「だけど……」
「帰りたいか」
「……はい」(うわ~~~~!!!!!ストーリーの中で答えちゃった!強制イベントだよ(爆)てっきり何か選択肢が出るかと~~~(笑)まぁ、でも当たり前か)
すごく。…何故かすごく複雑な思いで答えたわたしに、高杉さんは立ち上がり、月を背にわたしに言った。
「よし、わかった!お前はオレが必ず元の世界に帰してやる!」
「え」
あっさり、そんなことを言われて。わたしの心の中は余計に複雑になる。
嬉しいような……。それとも、違うような……?
「お前の望みを叶えてやれるのは、オレだけだ!このオレが必ずお前を帰してやる!」
「高杉さん…」
わたしも、思わず立ち上がって。高杉さんをじっと見つめる。
どうしよう。なんて言えばいいんだろう。自分の中がぐちゃぐちゃで何も言えない。
「…こら。そんな可愛い顔してたらこのまま抱きしめたくなるだろうが!」
「えっ!だっダメです!そんなっ!」
カッと、頬が熱くなる。そんなわたしに、高杉さんはいつものように「いつかはその気にさせる」からと……さっき言ったこととはまるで違うようなことを言って。わたしの頭をまたぐりぐり撫でる。
どう考えても、これは子供扱いだと思うのよね。
どう考えても、好きな相手にする行動じゃないと思うのよね?
……まぁ、だからと言って高杉さんにすごく真剣に迫られても困る……と、思うんだけど。。。
「お前が可愛いからしたくなるんだ!許せ!」
悪びれる様子もなくそう言う高杉さんに、いちいちドキドキする。
可愛いと、そう言われる度に嬉しくてくすぐったい。
そんな時だ。桂さんがわたし達に声をかけたのは。お風呂が沸いたことを教えてくれて「お邪魔だったかな?」と笑う。
桂さんに促された高杉さんが、また「一緒に入るか?」とかわたしをからかってから…一人去っていく。
少しだけ、ホッとした。桂さんが来てくれて。
高杉さんが、あんな風にわたしを見る度によくわからない感情が胸に広がる。
どうしていいのかわからなくて、しかも、自分でもどうしようもない気持ち。
振り回されたり、からかわれたり。マイペースな高杉さんにはいつだって敵わない。
それが、最近なんだか楽しかったり嬉しかったりして、それは。
もしかして、わたし、高杉さんのこと……。
翌朝。
スズメの声を目覚まし代わりに目を開けると、そこにはわたしを覗き込んでいる高杉さんの顔があった。
心臓が止まりそうなほどの衝撃に、なんとか平静を保とうと努力しながら口を開く。
「何してるんですか!」
「何って、お前の寝顔を見てた」
ってーーーーーー!!!なんてこと言うのっ!!
「なんでですか!」
「可愛かったからだ!」
朝からいけしゃあしゃあとっ!!!!起き抜けの心臓に悪いんですけどッ!!!!(泣)
「もう!勝手に部屋に入らないで下さい!」
高杉さんからじりじり離れて、慌てて服とか髪とか整える。……ううう……。自分の寝顔なんて見たことないけど、どう考えたって可愛いんじゃなくて間抜けなんじゃ……??
うう、恥ずかしいよぅ。。。
……ん?そういえば、なんか、反応ないなあ。高杉さん。
いつもだったら豪快に笑い飛ばすトコだと思うけど……。見やるとなにやら微妙な表情でわたしを見ている。
「……高杉さん?」
「お前……その他人行儀な言葉遣いなんだが、やめろ!!」
……え??
「聞けば、中岡の事は『慎ちゃん』と呼んでいるそうじゃないか!!」
……まぁた、どうでもいい情報を……。そもそもアレは慎ちゃんにハメられただけであって。
「オレだって晋ちゃんだ!ずるいぞ!」
「あ…」
まぁ、確かにそう言われてみれば……(苦笑)そうかも?
けど、この人……。
「もう!すねないで下さい!」
なんだか可愛いなぁ……。晋ちゃんを盗られた!とか言っている高杉さんが、年上(推定)とは思えない。
「お前の、その、特別っぽいじゃないか……!」
……別に、そんなつもりじゃないけどなぁ……。でも、高杉さんを『晋ちゃん』とはとても呼べないし…。ちょっとこの人には子供っぽ過ぎる、よね?
「それじゃあ……晋作さん……で、どうですか?」
わたしの提案に、高杉さんが目を輝かせて身体を乗り出してくる。
どうやら気に入ってくれたらしい。今後はそう呼ぶように、と念押しされて。そして。
口調ももっと砕けたものに変えるように、と言われる。
……ん~。なんだか難しいなぁ(笑)同級生の友達だと思って話すといいのかな?
「じゃあ今日はこのまま出かけるぞ!」
「え…?どこへ?」
「例の寺を探しに行く!」
笑ってそう言う晋作さんにわたしは付いていくことにした。
昼間の京都の人通りは多い。
素直な感想を漏らすと、チラリと横目でわたしを見ながら晋作さんが言う。
「まぁな。夜に出歩く奴なんて、ほとんどいない。ましてや若い娘なんかはな!」
「う…だから、あの時のことは反省してるってば!」
「だが、おかげで、オレはお前の怯える可愛い姿も見られたがな!」
あぁぁぁ!!!!どんな趣味してるんだろう!晋作さんはッ!!!
恥ずかしいやらなんやらで頭を抱えるわたしの横で彼はいつものように笑っている。
でも、こんな他愛のないやりとりが楽しくて。うん。すごく、幸せだと思う。
道中で土佐藩邸に行った帰りの慎ちゃんに出会う。そして気さくに声をかけてくれた慎ちゃんに対する晋作さんの態度は……明らかに、おかしかった(笑)
「そりゃ~お疲れだったね~『しんちゃん』」
「慎ちゃんって!どうしたッスか?高杉さん」
怪訝な顔をする慎ちゃんに、半眼の晋作さんはそらっと答える。
「別にどうもしないぜ。『しんちゃん』」
……イヤイヤイヤ。どうかしてるって……。そりゃ、慎ちゃんもビクつくよ。。。
晋作さん、よっぽど根に持ってるのね……。慎ちゃんに絡むとは…。
どうしようもない展開になりそうだったので、わたしは二人の間に割って入る。
「あ。ほら!!!あっちの方がなんだか賑やかだけどなんだろう!」
話題を逸らすための口実ではあったけど、確かに通りの少し離れた辺りは人が行き交っていて、なにやら賑やかだった。
慎ちゃんが「今日の夜、祭りがあるらしいっスよ」と、教えてくれる。
「いいなぁ、お祭りかぁ……」
わたしも、よく友達と一緒に行ってたなぁ…!
「じゃあおれ、そろそろ行くっス!」
わざわざ挨拶する為だけに声をかけてくれたらしい慎ちゃんが去っても、わたしはそのお祭りの準備が気になっていた。
「祭り、好きなのか?」
「うん、すっごく好き!」
答えると、また晋作さんは「未来にも祭りはあるのか」とか「どんな身分の人が行くのか」とか聞いて来る。……ん?どんな身分???
「お祭りは、身分とか関係なくてみんなが楽しむ為にあるの!」
答えると、晋作さんは神妙な顔をして考え込んだ。……なんだろ。
「…晋作さん?」
「よし!今晩の予定は決まったな!」
え??っていうことは、もしかして~!!!
「今晩は一緒に祭りに行くぞ!」
「ほんと!?嬉しいっ!」
「ははっ!お前のそんな顔が見れるなら、祭りくらいいくらでも行ってやる」
晋作さんも、嬉しそうに笑うから。わたしもすごく嬉しかった。
それが、どういうことなのか。知りもしなかったから。
結局なんの収穫もなく藩邸に戻ったわたしが、それでもご機嫌で廊下を歩いていると桂さんと遭遇した。
折角だから、とお祭りに桂さんも誘うと、帰ってきたのは意外な言葉だった。
「武士は祭りなど行くものではない」
だから自分は行かないし、晋作さんは桂さんが言ってもやめたりしないだろうから私から言って行かないようにしてくれ、と。お願い、されてしまった。
……武士は行かないものって。
…だったらどうして晋作さんは行こうって言ってくれたんだろ。……わたしが行きたいって言ったから…??
それくらいしか、理由が思いつかない。
でも、険しい顔をした桂さんを見たら、きっとそれがこの世界での当然のことなんだろうってことは良くわかった。
多分、お祭りに行ってはダメなんだ。
「……」
わたしは、晋作さんに無理ばかり言っているのかもしれない。わたしが知らないだけで、もしかしたら他にも。
そして、夜。
わたしは頭から布団にもぐりこんでいた。上手いこと言える自信なんてなかったし、第一どういう顔をしていいかわからない。
そんなワケで、仮病を選択したのだ。……そこへ。
「支度はできたか!祭りに行くぞ!」
わたしは、晋作さんにそう声をかけられても動かなかった。布団の中でじっとしている。
「おい!どうした!具合でも悪いのか!?」
明らかに慌てる声に、わたしは罪悪感を抱きながら声を絞り出す。
「その……ちょっと、熱が、あって」
「顔を出せ」
言われて……少し戸惑う。顔……出して、目を見て。嘘つける自信がない……。
晋作さんに敵わない。
続く沈黙。どうしようもない状況。
わたしは、そろ~っと、少しだけ顔を覗かせる。
「どれ」
晋作さんがわたしのおでこに自分のおでこをくっつける。動揺するわたしをよそに、晋作さんはおでこを離すと「熱なんかないじゃないか!」と言う。
いや……別の意味で身体が熱いですけど、わたし。。。
「まず、その布団から出てこい!」
晋作さんが強引にわたしを布団から引っ張り出してその上に正座させた。
「さあ、納得のいく説明をしろ!昼間あんなに楽しみにしてただろう!」
「それは…わたし、武士はお祭りに行ったらいけないんだって知らなかったから。晋作さん、そうでなくても偉い人なのに……」
ぽつりともらすと、晋作さんはそれは大きな溜息をついた。
「大方そんなことを言うのは小五郎だろう」
……ッバレてる!?
「いえ…その…!」
「お前はそんなこと気にしなくていい」
「でも……」
「いいか?祭りに行きたいのはこのオレ様なんだ」
あああああ……!!!!雲行きが怪しげな方向へ……。状況が違うけど似たようなパターンを私はもうこの数日で経験したはずだ…!
そして、だから晋作さんには敵わないと思っているワケで…!
「お前はオレに、無理矢理祭りに連れて行かれただけだ!行くぞ!!」
そう言うなり、晋作さんがわたしの手をとって立ち上がる。
そして(晋作さんの言葉を借りるなら『無理矢理』)連れて行かれたのだった。
繋いだ手が、温かくて。だから、これが悪いことだとわかっていても、わたしはとても嬉しかった。
神社につくと、わたしが知らないような屋台がたくさん並んでいて。
物珍しさでテンションがあがるわたしとは別に、晋作さんのテンションも高かった(笑)
確かに、晋作さんがお祭りに来たかった……と言うのは、口実ではなくて真実ではあったんだろうと思わせる。
汁粉屋や…他にも色々店をまわって。わたしはふと小物屋に目を留める。
見つけたのは、黄色と黒のかんざし。
そっと手に取って、笑う。
なんだか、晋作さんの着物の色合いに似てるんだよね~。それに、キレイ。
普段は当然こんな…かんざしなんて使ったりしないんだけど。何故だか無性に欲しくなった。
けど。
……わたし、当然だけどこの世界のお金がないんだよね~。。。
しょうがない。諦めてかんざしを元に戻すと後ろから晋作さんに声をかけられる。
「どうした?」
「ううん!なんでもないよ、行こ!」
その店を後にして、他にもたくさんある店を見て回る。知らない店を見てまわるのは凄く楽しくて。
だから、わたしは夢中になりすぎて晋作さんと完全にはぐれてしまった。
行き交う人ごみの中に、見慣れたあの姿が見つからない。
どうしよう…どうしたらいいんだろう…!!
彼の姿が見えない。ただそれだけでわたしは、急に心細くなった。……随分な刷り込みだ。
……とにかく、晋作さんを探さなきゃ!
「晋作さーん!!晋作さーん!!」
恥ずかしいのを堪えて叫んでみても、祭囃子や人ごみに掻き消されてしまう。
どうしよう…。はぐれた時の待ち合わせ場所とか決めておけば良かったけど、嬉しくてそんなことまで気が回らなかった……。
……怖い。
この間とは全然状況が違うのに、こんなにたくさんまわりに人が居るのに。どうしようもない孤独感を感じる。
歩き回ることしかできない、わたし。
その時。わたしは、数少ない顔見知り(?)にバッタリ遭遇する。
こんな所で、会いたくなかった顔に。
「あれ~?あんた、この間の……」
ッ!!!この間の酔っ払い二人組だ。なんで、こんな時にッ!!
「オレ達義理堅いんだよね~。ちゃんとお礼しなくちゃな?」
ニヤニヤ笑う男たち。
じりじりと後退るわたし…。
晋作さん……、晋作さんッ!!!!どうしよう!!!!
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
その頃、晋作は少女が目を留めていた小物屋に立っていた。
自分がちょっと目を離したその隙に、少女はそこで何かを見つけて確かに微笑んでいた。
あんな顔をさせるものなら、是非与えてやりたいと思った。
……『帰りたい』と。
そう答えることすら躊躇うほどに、自分の望みを言葉にしない少女だ。
ならば、せめて表情からでも彼女の思いを汲み取りたい、と。そう思っていた。その矢先のあのカオ。
「さっきあいつが、可愛い~顔して見てたのは……お、これか!……ん?」
顔が。身体が熱くなるのがわかる。
自分の着物の柄を彷彿とさせる、そのかんざし。それを見て可愛らしく微笑む彼女。
それは、何を意味するのだろう……。
「オヤジ!これをくれ!」
その時の彼の中には、彼女の喜ぶ顔しか存在していなかった。きっと、これを渡せばまた笑ってくれるだろう。
いつものような、あの笑顔で。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
はい!とゆートコまでが第六話でしたーーーー!!!!!
毎度毎度夜中まで起きてて書いてるんですけど(むしろ明け方???)どうしよう(苦笑)
今回スゴいとこで終わっちゃいましたよ…(悲鳴)
た……助けてッ!!晋作さんっ(泣)
いやさ、あの笛の出番かッ!!?などと思いつつ(笑)
しかしまぁ。あのチンピラ。どうなんでしょうかねぇ……。バックが高杉晋作だと知ってて喧嘩吹っかけようとするのはお利口さんとは言えないような???(苦笑)別に、利用しようと思ってるワケでもなさそうだし。
あ…明日が気になるッ!!!はやく配信してくれぃっ(笑)
しんちゃん、しんちゃんとネチネチ言ってる晋作は萌えだ!!!と思いつつ、眠りにつきたいと思います(笑)
可愛い…。マジ可愛い……っ!!!
今日の選択肢
すねないで下さい(花)
汁粉屋
「高杉さん、がんばれ!」
あの後、すぐ高杉さんは帰ってきて。それから今までずっとわたしの部屋にいる。
で、何をしているかと言うと。
携帯のゲーム。
確かに圏外にはなっているけど、携帯自体に落としてあるゲームならできると思ってv
うーん。さすが文明の利器☆
案の定、珍しい物好きであるらしい高杉さんは子供のように夢中になってゲームをしている。
……しかも、わたしよりウマいでやんの……。
最初こそ下手っぴだったけど、いまやわたしだって見たことのない面を爆走中。
さらに、わたしが思いつかなかったような技を使ってどんどんクリアしていく。
「高杉さんってすごいですね!身体を動かすのが得意なのは…まぁ、わかりましたけど。頭もいいんだなぁ」
「ははは、なんだそれは!オレなんて大した事はないぞ!」
一瞬驚いた顔をした高杉さんが、笑う。
「謙遜ですか?」
「いや、謙遜じゃない。以前は他の奴らより頭がいいと、得意になっていたがな!」
「今は違うんですか?」
問うと、高杉さんはある人との出会いがそんな考えを変えたのだと答える。『吉田松陰先生』という人。高杉さんがあんまり目を輝かせて話すものだから、つい聞いてしまう。
「その人は、今どこに?」
言葉に、珍しく高杉さんが表情を曇らせて目を伏せた。
「死んだ。……打ち首になったんだ」
しまった、と思った。変なこと、聞いちゃった。
謝ると、高杉さんはふっと笑う。
「いや、気にすることはない。聞きたい事はなんでも聞けといったのは、オレだからな」
「……はい」
と、口では答えたものの。しっかり表情に「やってしまいました」と出ていたらしい。高杉さんが苦笑して言う。最近、何度も言ってくれているあんな風に。
「ほーら、そんな顔するな!」
確かに先生は亡くなったが、その志は高杉さんや桂さんの中に生きているから。と。
優しい表情で話す高杉さんにほっとするわたしに、少しだけ吉田先生の話をしてくれた。
彼の教えてくれたことの中には『飛耳長目』というものがあり。あらゆる物事に対して、常に敏感であり、多くの情報を得ることなのだという。(なるほど、なんだか高杉さん見てるとわかるような気もする…)多少の意味合いは違うけれど、わたしの荷物や…ゲーム。そしてわたしの知識だって、どこかで活かせる時がくる。と。励ましてくれる。
「お前は凄い!自信を持て!」
高杉さんに言われると、不思議で。嬉しい。心からそう言ってくれてるのが伝わって、温かい気持ちになる。
ふと、そんな中高杉さんが目をこする。
「目が痛いな…やりすぎたか?」
確かに、慣れないモノだしあれだけ集中してやってたら目だって疲れるよね。
遠くを見るほうがいいだろうと思って、わたしは夜の縁側に高杉さんを誘った。
「うわー!キレイな月!高杉さんも見て見て!」
わたし達は並んで縁側に腰掛けた。満月に近い大きな月がわたし達を照らし出す。星も霞んでしまうほど、晧々とした月。
しばらく月に見惚れて、そして。さっきから心の奥でずっと気になっていた件を、高杉さんに伝えることにした。
「あの、高杉さん。さっきのことなんですけど……」
「さっき?」
う……改めて蒸し返すの、勇気がいるなぁ……。怯みそうになる自分に「さっきちゃんと言うって決めたでしょ!?」と言い聞かせて、口を開く。
「さっき…その……。大久保さんと高杉さんのどっちか選べって言われた、あれです」
「あー!あれか!」
思い出した様子の高杉さんは、目に見えてわかるほどシュンとなる。
ああ……罪悪感(汗)
「あの答えは、我ながらかなりの痛手を負ったぞ!」
やっぱりやっぱり、全力でフォローしなきゃ!!!このまま誤解されたままっていうのは…ちょっとっ!その……心が苦しい……っ。
「は……恥ずかしかったんです!」
「恥ずかしかった?」
「だから…その……。本当は、わたし。高杉さんがいるから、長州藩邸がいいって。そう、言おうと思ったんです……」
「そうなのか?」
なんか……。また、段々恥ずかしくなってきたんだけどっ…!!!
イヤ、逃げちゃダメだ!!!ここまで言ったんだから、もう逃げれないでしょ!!!
「はい…。でも、周りにみんないたし、恥ずかしくて、苦し紛れにあんな……だから、あんな風に言っちゃって、ごめんなさい!」
謝って、スッキリした気持ちで高杉さんを見上げると。高杉さんは満面の笑顔で。
だから、わたしはやっぱり言ってよかったと確信する。
「気にするな。オレは嬉しい」
それだけ、高杉さんが答えてくれて。後は二人で一緒に、ただ黙って夜空を見上げる。
…しばらく無言だったけど、なんだかわたし達の周りの空気は穏やかで。
ずっとこうしてたいなって、純粋に思った。
「なぁ…」
しばらくの沈黙の後で、高杉さんが口を開く。わたしは隣の高杉さんを見上げるけど、彼は変わらず夜空に視線をやったままだ。
……なんだろう?
「お前、やっぱり元の世界に、帰りたいか?」
「え……」
突然すぎる質問に、言葉がつまる。
「正直に言え」
高杉さんに促されても、わたしは答えられないままだった。考えるまでも、ないことのハズ、なのに。
……もとの世界に帰るって事は、この世界とはサヨナラするってことで……。
わたしは。
「どうした?」
「わたしは……」
「ん?」
スカートの上で重ねた自分の手をぎゅっと握り締める。
「わたしは、高杉さんにもみんなにもとても良くしてもらって、ここが大好きです」
「ん」
「だけど……」
「帰りたいか」
「……はい」(うわ~~~~!!!!!ストーリーの中で答えちゃった!強制イベントだよ(爆)てっきり何か選択肢が出るかと~~~(笑)まぁ、でも当たり前か)
すごく。…何故かすごく複雑な思いで答えたわたしに、高杉さんは立ち上がり、月を背にわたしに言った。
「よし、わかった!お前はオレが必ず元の世界に帰してやる!」
「え」
あっさり、そんなことを言われて。わたしの心の中は余計に複雑になる。
嬉しいような……。それとも、違うような……?
「お前の望みを叶えてやれるのは、オレだけだ!このオレが必ずお前を帰してやる!」
「高杉さん…」
わたしも、思わず立ち上がって。高杉さんをじっと見つめる。
どうしよう。なんて言えばいいんだろう。自分の中がぐちゃぐちゃで何も言えない。
「…こら。そんな可愛い顔してたらこのまま抱きしめたくなるだろうが!」
「えっ!だっダメです!そんなっ!」
カッと、頬が熱くなる。そんなわたしに、高杉さんはいつものように「いつかはその気にさせる」からと……さっき言ったこととはまるで違うようなことを言って。わたしの頭をまたぐりぐり撫でる。
どう考えても、これは子供扱いだと思うのよね。
どう考えても、好きな相手にする行動じゃないと思うのよね?
……まぁ、だからと言って高杉さんにすごく真剣に迫られても困る……と、思うんだけど。。。
「お前が可愛いからしたくなるんだ!許せ!」
悪びれる様子もなくそう言う高杉さんに、いちいちドキドキする。
可愛いと、そう言われる度に嬉しくてくすぐったい。
そんな時だ。桂さんがわたし達に声をかけたのは。お風呂が沸いたことを教えてくれて「お邪魔だったかな?」と笑う。
桂さんに促された高杉さんが、また「一緒に入るか?」とかわたしをからかってから…一人去っていく。
少しだけ、ホッとした。桂さんが来てくれて。
高杉さんが、あんな風にわたしを見る度によくわからない感情が胸に広がる。
どうしていいのかわからなくて、しかも、自分でもどうしようもない気持ち。
振り回されたり、からかわれたり。マイペースな高杉さんにはいつだって敵わない。
それが、最近なんだか楽しかったり嬉しかったりして、それは。
もしかして、わたし、高杉さんのこと……。
翌朝。
スズメの声を目覚まし代わりに目を開けると、そこにはわたしを覗き込んでいる高杉さんの顔があった。
心臓が止まりそうなほどの衝撃に、なんとか平静を保とうと努力しながら口を開く。
「何してるんですか!」
「何って、お前の寝顔を見てた」
ってーーーーーー!!!なんてこと言うのっ!!
「なんでですか!」
「可愛かったからだ!」
朝からいけしゃあしゃあとっ!!!!起き抜けの心臓に悪いんですけどッ!!!!(泣)
「もう!勝手に部屋に入らないで下さい!」
高杉さんからじりじり離れて、慌てて服とか髪とか整える。……ううう……。自分の寝顔なんて見たことないけど、どう考えたって可愛いんじゃなくて間抜けなんじゃ……??
うう、恥ずかしいよぅ。。。
……ん?そういえば、なんか、反応ないなあ。高杉さん。
いつもだったら豪快に笑い飛ばすトコだと思うけど……。見やるとなにやら微妙な表情でわたしを見ている。
「……高杉さん?」
「お前……その他人行儀な言葉遣いなんだが、やめろ!!」
……え??
「聞けば、中岡の事は『慎ちゃん』と呼んでいるそうじゃないか!!」
……まぁた、どうでもいい情報を……。そもそもアレは慎ちゃんにハメられただけであって。
「オレだって晋ちゃんだ!ずるいぞ!」
「あ…」
まぁ、確かにそう言われてみれば……(苦笑)そうかも?
けど、この人……。
「もう!すねないで下さい!」
なんだか可愛いなぁ……。晋ちゃんを盗られた!とか言っている高杉さんが、年上(推定)とは思えない。
「お前の、その、特別っぽいじゃないか……!」
……別に、そんなつもりじゃないけどなぁ……。でも、高杉さんを『晋ちゃん』とはとても呼べないし…。ちょっとこの人には子供っぽ過ぎる、よね?
「それじゃあ……晋作さん……で、どうですか?」
わたしの提案に、高杉さんが目を輝かせて身体を乗り出してくる。
どうやら気に入ってくれたらしい。今後はそう呼ぶように、と念押しされて。そして。
口調ももっと砕けたものに変えるように、と言われる。
……ん~。なんだか難しいなぁ(笑)同級生の友達だと思って話すといいのかな?
「じゃあ今日はこのまま出かけるぞ!」
「え…?どこへ?」
「例の寺を探しに行く!」
笑ってそう言う晋作さんにわたしは付いていくことにした。
昼間の京都の人通りは多い。
素直な感想を漏らすと、チラリと横目でわたしを見ながら晋作さんが言う。
「まぁな。夜に出歩く奴なんて、ほとんどいない。ましてや若い娘なんかはな!」
「う…だから、あの時のことは反省してるってば!」
「だが、おかげで、オレはお前の怯える可愛い姿も見られたがな!」
あぁぁぁ!!!!どんな趣味してるんだろう!晋作さんはッ!!!
恥ずかしいやらなんやらで頭を抱えるわたしの横で彼はいつものように笑っている。
でも、こんな他愛のないやりとりが楽しくて。うん。すごく、幸せだと思う。
道中で土佐藩邸に行った帰りの慎ちゃんに出会う。そして気さくに声をかけてくれた慎ちゃんに対する晋作さんの態度は……明らかに、おかしかった(笑)
「そりゃ~お疲れだったね~『しんちゃん』」
「慎ちゃんって!どうしたッスか?高杉さん」
怪訝な顔をする慎ちゃんに、半眼の晋作さんはそらっと答える。
「別にどうもしないぜ。『しんちゃん』」
……イヤイヤイヤ。どうかしてるって……。そりゃ、慎ちゃんもビクつくよ。。。
晋作さん、よっぽど根に持ってるのね……。慎ちゃんに絡むとは…。
どうしようもない展開になりそうだったので、わたしは二人の間に割って入る。
「あ。ほら!!!あっちの方がなんだか賑やかだけどなんだろう!」
話題を逸らすための口実ではあったけど、確かに通りの少し離れた辺りは人が行き交っていて、なにやら賑やかだった。
慎ちゃんが「今日の夜、祭りがあるらしいっスよ」と、教えてくれる。
「いいなぁ、お祭りかぁ……」
わたしも、よく友達と一緒に行ってたなぁ…!
「じゃあおれ、そろそろ行くっス!」
わざわざ挨拶する為だけに声をかけてくれたらしい慎ちゃんが去っても、わたしはそのお祭りの準備が気になっていた。
「祭り、好きなのか?」
「うん、すっごく好き!」
答えると、また晋作さんは「未来にも祭りはあるのか」とか「どんな身分の人が行くのか」とか聞いて来る。……ん?どんな身分???
「お祭りは、身分とか関係なくてみんなが楽しむ為にあるの!」
答えると、晋作さんは神妙な顔をして考え込んだ。……なんだろ。
「…晋作さん?」
「よし!今晩の予定は決まったな!」
え??っていうことは、もしかして~!!!
「今晩は一緒に祭りに行くぞ!」
「ほんと!?嬉しいっ!」
「ははっ!お前のそんな顔が見れるなら、祭りくらいいくらでも行ってやる」
晋作さんも、嬉しそうに笑うから。わたしもすごく嬉しかった。
それが、どういうことなのか。知りもしなかったから。
結局なんの収穫もなく藩邸に戻ったわたしが、それでもご機嫌で廊下を歩いていると桂さんと遭遇した。
折角だから、とお祭りに桂さんも誘うと、帰ってきたのは意外な言葉だった。
「武士は祭りなど行くものではない」
だから自分は行かないし、晋作さんは桂さんが言ってもやめたりしないだろうから私から言って行かないようにしてくれ、と。お願い、されてしまった。
……武士は行かないものって。
…だったらどうして晋作さんは行こうって言ってくれたんだろ。……わたしが行きたいって言ったから…??
それくらいしか、理由が思いつかない。
でも、険しい顔をした桂さんを見たら、きっとそれがこの世界での当然のことなんだろうってことは良くわかった。
多分、お祭りに行ってはダメなんだ。
「……」
わたしは、晋作さんに無理ばかり言っているのかもしれない。わたしが知らないだけで、もしかしたら他にも。
そして、夜。
わたしは頭から布団にもぐりこんでいた。上手いこと言える自信なんてなかったし、第一どういう顔をしていいかわからない。
そんなワケで、仮病を選択したのだ。……そこへ。
「支度はできたか!祭りに行くぞ!」
わたしは、晋作さんにそう声をかけられても動かなかった。布団の中でじっとしている。
「おい!どうした!具合でも悪いのか!?」
明らかに慌てる声に、わたしは罪悪感を抱きながら声を絞り出す。
「その……ちょっと、熱が、あって」
「顔を出せ」
言われて……少し戸惑う。顔……出して、目を見て。嘘つける自信がない……。
晋作さんに敵わない。
続く沈黙。どうしようもない状況。
わたしは、そろ~っと、少しだけ顔を覗かせる。
「どれ」
晋作さんがわたしのおでこに自分のおでこをくっつける。動揺するわたしをよそに、晋作さんはおでこを離すと「熱なんかないじゃないか!」と言う。
いや……別の意味で身体が熱いですけど、わたし。。。
「まず、その布団から出てこい!」
晋作さんが強引にわたしを布団から引っ張り出してその上に正座させた。
「さあ、納得のいく説明をしろ!昼間あんなに楽しみにしてただろう!」
「それは…わたし、武士はお祭りに行ったらいけないんだって知らなかったから。晋作さん、そうでなくても偉い人なのに……」
ぽつりともらすと、晋作さんはそれは大きな溜息をついた。
「大方そんなことを言うのは小五郎だろう」
……ッバレてる!?
「いえ…その…!」
「お前はそんなこと気にしなくていい」
「でも……」
「いいか?祭りに行きたいのはこのオレ様なんだ」
あああああ……!!!!雲行きが怪しげな方向へ……。状況が違うけど似たようなパターンを私はもうこの数日で経験したはずだ…!
そして、だから晋作さんには敵わないと思っているワケで…!
「お前はオレに、無理矢理祭りに連れて行かれただけだ!行くぞ!!」
そう言うなり、晋作さんがわたしの手をとって立ち上がる。
そして(晋作さんの言葉を借りるなら『無理矢理』)連れて行かれたのだった。
繋いだ手が、温かくて。だから、これが悪いことだとわかっていても、わたしはとても嬉しかった。
神社につくと、わたしが知らないような屋台がたくさん並んでいて。
物珍しさでテンションがあがるわたしとは別に、晋作さんのテンションも高かった(笑)
確かに、晋作さんがお祭りに来たかった……と言うのは、口実ではなくて真実ではあったんだろうと思わせる。
汁粉屋や…他にも色々店をまわって。わたしはふと小物屋に目を留める。
見つけたのは、黄色と黒のかんざし。
そっと手に取って、笑う。
なんだか、晋作さんの着物の色合いに似てるんだよね~。それに、キレイ。
普段は当然こんな…かんざしなんて使ったりしないんだけど。何故だか無性に欲しくなった。
けど。
……わたし、当然だけどこの世界のお金がないんだよね~。。。
しょうがない。諦めてかんざしを元に戻すと後ろから晋作さんに声をかけられる。
「どうした?」
「ううん!なんでもないよ、行こ!」
その店を後にして、他にもたくさんある店を見て回る。知らない店を見てまわるのは凄く楽しくて。
だから、わたしは夢中になりすぎて晋作さんと完全にはぐれてしまった。
行き交う人ごみの中に、見慣れたあの姿が見つからない。
どうしよう…どうしたらいいんだろう…!!
彼の姿が見えない。ただそれだけでわたしは、急に心細くなった。……随分な刷り込みだ。
……とにかく、晋作さんを探さなきゃ!
「晋作さーん!!晋作さーん!!」
恥ずかしいのを堪えて叫んでみても、祭囃子や人ごみに掻き消されてしまう。
どうしよう…。はぐれた時の待ち合わせ場所とか決めておけば良かったけど、嬉しくてそんなことまで気が回らなかった……。
……怖い。
この間とは全然状況が違うのに、こんなにたくさんまわりに人が居るのに。どうしようもない孤独感を感じる。
歩き回ることしかできない、わたし。
その時。わたしは、数少ない顔見知り(?)にバッタリ遭遇する。
こんな所で、会いたくなかった顔に。
「あれ~?あんた、この間の……」
ッ!!!この間の酔っ払い二人組だ。なんで、こんな時にッ!!
「オレ達義理堅いんだよね~。ちゃんとお礼しなくちゃな?」
ニヤニヤ笑う男たち。
じりじりと後退るわたし…。
晋作さん……、晋作さんッ!!!!どうしよう!!!!
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
その頃、晋作は少女が目を留めていた小物屋に立っていた。
自分がちょっと目を離したその隙に、少女はそこで何かを見つけて確かに微笑んでいた。
あんな顔をさせるものなら、是非与えてやりたいと思った。
……『帰りたい』と。
そう答えることすら躊躇うほどに、自分の望みを言葉にしない少女だ。
ならば、せめて表情からでも彼女の思いを汲み取りたい、と。そう思っていた。その矢先のあのカオ。
「さっきあいつが、可愛い~顔して見てたのは……お、これか!……ん?」
顔が。身体が熱くなるのがわかる。
自分の着物の柄を彷彿とさせる、そのかんざし。それを見て可愛らしく微笑む彼女。
それは、何を意味するのだろう……。
「オヤジ!これをくれ!」
その時の彼の中には、彼女の喜ぶ顔しか存在していなかった。きっと、これを渡せばまた笑ってくれるだろう。
いつものような、あの笑顔で。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
はい!とゆートコまでが第六話でしたーーーー!!!!!
毎度毎度夜中まで起きてて書いてるんですけど(むしろ明け方???)どうしよう(苦笑)
今回スゴいとこで終わっちゃいましたよ…(悲鳴)
た……助けてッ!!晋作さんっ(泣)
いやさ、あの笛の出番かッ!!?などと思いつつ(笑)
しかしまぁ。あのチンピラ。どうなんでしょうかねぇ……。バックが高杉晋作だと知ってて喧嘩吹っかけようとするのはお利口さんとは言えないような???(苦笑)別に、利用しようと思ってるワケでもなさそうだし。
あ…明日が気になるッ!!!はやく配信してくれぃっ(笑)
しんちゃん、しんちゃんとネチネチ言ってる晋作は萌えだ!!!と思いつつ、眠りにつきたいと思います(笑)
可愛い…。マジ可愛い……っ!!!
今日の選択肢
すねないで下さい(花)
汁粉屋
幕恋 『高杉晋作 第五話』
2009年12月5日 携帯アプリ翌日。廊下を歩いていたら、入り口の方から誰かの話し声が聞こえる。
気になってひょいっと入り口を覗いて見ると、坂本さんと武市さんの姿が見えた。
「おはようございますっ!」
目が合って、元気よくご挨拶!一日の始まりは元気な挨拶から~ってね~!
二人とも笑って挨拶を返してくれた。しかも、元気がいいって褒められた!!
今日はいいことありそう~♪
「…龍馬、どうした?」
武市さんが、ふと坂本さんにそう問い掛けた。
坂本さん、武市さんをガン見してたから……気になったみたい。
「こん子と話す時は、武市もいい顔をすると思ってのう」(おおお!?)
「そ、そんな事はない!」(おおお……)
「にしし!すみにおけんのう」
坂本さんも何を言い出すやら(苦笑)武市さんが困ってるし。
「随分と賑やかだね」
そんな中、桂さんが現れてわたしは二人の案内役を仰せつかる。案内する道中でもこの二人はさっきの会話を続けている。
「武市、桂さんに救われたのう」
「もう、黙っていろ」
「えぇじゃないか」
「龍馬!」
…こんなこと話してるとわたしと大して年が変わらないような気すらしてくるよ。二人に背中を向けたままでくすくす笑っていると、坂本さんがわたしに声をかけてきた。
「藩邸での生活は、もう慣れたんかのう?」
「はい。お蔭様で。…あ。だけど」
『だけど?』
二人に同時に聞き返されて、やっぱりくすくす笑いながらわたしは答えた。
「高杉さんには、振り回されっぱなしです」
言葉に二人はすっかり関心を示した様子で、どんな風に振り回されるのか…とか、詳しく聞いて来る。わたしはわたしで、溜まった鬱憤を晴らすかのようにここ数日であったことを二人に聞いてもらう事にする。
朝っぱらからいきなり部屋に来て、寝てるわたしの横で荷物を物色されたこと。あっちこっちに連れて行こうとすること。何かって言うとわたしをからかって遊ぶこと。
「もう、本当に困りますっ!」
「困っちょる言いよるわりに、楽しそうだのう」
「あぁ、確かに」
一瞬、言葉に詰まった。……こっ、この人達までっ!!
「そ、そんなこと、ありません」
だから、若干反論する言葉が知りつぼみ気味だったのもしょうがない、と、思う。
坂本さんは、わたしを見ながらいつも通りの優しい口調で続ける。
「高杉さんのこと、嫌いではないんじゃろう?」
投げかけられた坂本さんのその言葉に、答える言葉を持たなかった。
確かに、高杉さんのことは嫌いじゃない…。でも、あんなに振り回されてるのに?
いや、けど確かにあの人、いい人で。嫌いなんていう人の方が珍しいんじゃないのかな…。
だから。
「よぉ、早いな!」
廊下に響いた声に、心臓が口から出そうになる。…高杉さんだ。
あまりのタイミングのよさに、自分の鼓動が随分早くなっているのがわかる。も、もう!!!龍馬さんが変なことを言うからッ!!
「ん?顔が赤いぞ?どうした?」
当然。そんなわたしの心境なんて知る由もない高杉さんは無遠慮にわたしの顔を覗き込んできて。もはやどんな顔をすればいいのかもわからないくらいパニックになったわたしは、高杉さんの視線を避けるようにさらに顔を伏せる。
「おい、おまえら」
言葉の響きと衣擦れの音で高杉さんが坂本さんと武市さんの方を振り返ったのがわかって、内心ほっとする。が。
「まさかとは思うが。オレの女に、手を出しちゃいないだろうな!」
言葉に瞬時に全力でわたしは答える!
「高杉さんの女じゃありませんっ!」
「いつもながら否定が早いな!」
当たり前だ!この調子でどんどん既成事実を作られてなるものかっ!!
そんな手にはのらないんだからっ!
「わたしはまだ、高杉さんの女なんかじゃありません」
きっぱり言い放つわたしの前で「ほぉ?」と高杉さんが笑う。
「な、……なんですか…」
「『まだ』な?」
「え??」
高杉さんの言葉の意味がわからなくて、頭の周りでハテナが飛ぶ。
「『まだ』だが、『いずれは』ってことだな?」
「っ!そんなこと言ってません!」
ダメだ。この人に勝つのは無理な気がするっ(泣)口では絶対勝てなさそうな高杉さんからせめてもの抵抗でプイッと顔を背けると、彼は逆にスッと顔を近づけてきた。
「いつもの元気が出たようだな」
「え?」
反射的に高杉さんを見ると、さっきまでの調子とは違う真剣な眼差しがそこにあった。
「昨日も言ったが、お前は笑っている方がいい」(高杉さん、カッコイイ(号泣))
至近距離の真っ直ぐな視線に。トクン、と、心臓が跳ねた気がした。
この人は、本当に心臓に悪い人だ。一緒にいると、落ち着く暇がない…と思う。
「あっついのう」
「あぁ。だが取り込み中に申し訳ないが、そろそろ会合に入りませんか?」
っ!!!!
わ、忘れてたっ!!!!坂本さんと武市さんがいたんじゃないっ!!!!わたわたするわたしをよそに、高杉さんは「ああ、そうだな」とか平然と言って部屋に入っていく。
わたしに「いい子で待ってろよ?」と、言い残して。
さて。そうして高杉さんたちがお話をしている間、いきなりわたしは暇になった。
が。高杉さんにも桂さんにも外に出たらダメだと釘をさされてるし。現役女子高生のわたしにできる『なにか』なんて限られている。
そんなわけで!
わたしは藩邸の人を捕まえて掃除道具の場所を教えてもらい、掃除をして待っていることにした。何もしないでいるのも退屈だしね!
掃除道具の場所を教えてもらう間、捕まえたお兄さんから「実は藩邸の人たちは高杉さんのお気に入りであるわたしに興味津々なのだ」とかそんな事実を教えてもらったり。
それから、お兄さんの話を聞いていて思ったのは。みんな高杉さんを本当に慕っているんだってこと。
「我等は皆、カシラを尊敬し信頼しています」
言ったお兄さんのキラキラした瞳がとても印象的で。そして、そんな風に皆から慕われる高杉さんが本当にすごいんだと、実感した。
…なかなかないよね。みんなに、こんなに好かれる人も。
お兄さんと別れて掃除をし始めてからは、自然にそんな高杉さんのことを考えていた。
龍馬さんに、「嫌いじゃないんだろう」って言われたっけ。
落ち葉を掃きながら、思う。
そりゃ嫌いじゃ、ないよ。
行き場のないわたしをここに置いてくれて。なんだかんだ言って、よくしてくれてるし。藩邸の人たちにも好かれているし…。ピンチの時には助けにきてくれて。
わたし。
高杉さんのこと、どう思っているんだろう……。
そういえば今日は、さっきちょっと顔を合わせただけで全然喋ってないなぁ…。
なんだかちょっと……寂しいな……と思うわたしは、もう随分高杉さんに影響されているのかもしれない。
「会いたいな……」
ぽつ、と呟いた時。
「よぉ、何ボーッとしてるんだ!」
聞きたかった声が間近で聞こえて、わたしは思ったよりもずっと大きな声で相手の名前を叫ぶ。
「たっ高杉さん!」
「なんだ、大声出して!」
心底びっくりしたらしい(それはわたしだって同じだけど)高杉さんが目を丸くしている。
「かっ、会合じゃなかったんですか」
「ははっ!まだ終わっちゃいないがお前が寂しがっているんじゃないかと思ってな!」
図星を指されすぎて、わたしはドキドキしていた。
ひょ、ひょっとして、さっきの聞かれてたんじゃないよね??と、ビクビクしながら高杉さんを見るけど、顔を見る限り面白がっている風でもからかう様子でもないし…どうやらそれはなさそうだ。……ちょっと安心。
そういえば。
「あの…会合、抜けてきちゃってよかったんですか?」
問うと、わたしが寂しがってると思うと会合どころじゃなかったからな。と、さっきと同じ答え。……いいのかなぁ~?いつも抜けちゃってるような…??
し、しかもっ、それって、ひょっとしてわたしが高杉さんの邪魔してるっ?
「わ、わたしは別に、寂しがってなんか……」
「なーんて……」
「え?」
「寂しかったのは、オレの方だ」
言うと、不意に高杉さんがその大きな手でわたしの頭をグリグリ撫で回す。
「お、驚くじゃないですか」
「別に、驚かすつもりはなかったんだが惚れさせるつもりは、いつでもあるぞ!」
……またぁ……。
もうこの手の問答で高杉さんに勝てないことは、今までの攻防を見ても明らかだ。
ただわたしは、どうすればいいのかがひたすらわからない。
「安心してオレに惚れろ!」
とか言っちゃう高杉さんが、ある意味羨ましすぎる……。
「もうじき会合も終わるから、それまでに面白い遊びでも考えておけ!」
なーんて軽く言いながら、高杉さんは屋敷の方に戻っていった。会いたいと思った時にきてくれて。ほんのちょっとだけど話せて。…ちょっとだけ、嬉しくなってしまったのは、悔しいのでナイショだ。
高杉さんが会合に戻った後、わたしは一所懸命高杉さんに言われた『遊び』を考えていた。
どうせだから高杉さんが驚くような、すっごく楽しんでくれるような、そんなのがいいな~と思って。
この世界の人がどんな遊びを楽しむのかわかんないけど。
高杉さんが笑ってくれるのは、悪くない、と。思う。
そうして、そんなふうに一所懸命。彼の為に考えている自分に気付いて。苦笑した。
しばらくして会合が終わったことを教えられて、わたしは縁側で寛いでいるみんなにお茶やお菓子を持っていった。
そこで、偶然の再会が待っていようとは露ほども思わずに。
「ん?お前はいつぞやの」
「っ!!!なんで大久保さんがいるんですか!」
気っ…気まずいっ!!!初対面があんな出会いだったから、すごく……気まずいっ!もう会うこともないかな~とか思ってたのにっ!
そんなわたし達をみて、周りのみんなが首をかしげている。
「大久保さんとは、そんなに面識がありましたか?」
武市さんがそう聞くと、大久保さんは例のあのデカい態度&上から目線で口を開く。
「面識も何も、会ってやるのはこれがまだ二度目だ」
はわわわわわっ!!!!
お願いだからもうそれ以上ツッコまないで~~~~!!!!!
初日のやりとりが頭の中で思い起こされて軽いパニックに陥りそうだ…!
「それにしちゃあ、仲良しさんじゃのお」(だから、坂本さんわたしが誰にでも尻尾振るような発言はちょっと…)
「これのどこが仲良しに見える」
「仲良しじゃありません!」
『あ……』
坂本さんの言葉に対する反応やら、その後の反応やら。あまりにピッタリ揃いすぎて気まずくなる…。
が。ここから大久保さんが、出会った時のあの出来事を事細かにみんなに話し始めたのだ。
ああああああっ!!!穴があったら入りたいっ!
「そもそもこれは、初対面で私を怒鳴りつけた小娘だぞ」
……ハイ。
「挙句の果てに、このわたしに向かって何様だ、器が小さいなどと…」
……ハイ、ソウデスネ。なんか、そんなこと言った覚えが……。
だって、あの時は以蔵のことで必死だったんだもん…。
武市さんや桂さんがドン引きするその空気の中で、一人おかしそうに笑ったのが高杉さんだった。
「あーっはっはっは!さすがオレが惚れた女だ!」
「笑い事ではないよ?晋作。これではいくつ命があっても足りない」
桂さんがそう言って溜息をつけば、龍馬さんも「確かに、ほうじゃのう」と頷く。
「だが、高杉さんが、何故こん子を気に入ったのかわかるような気がするぜよ」
「はっはっはっ!そうだろう!そうだろう!」
高杉さんは龍馬さんの言葉に嬉しそうに頷いてるし。
いや、もぉ、ほんと意味がわからないんでやめてください。。。
「ふん、まあ暇つぶし程度にはなるだろうから、土佐藩邸に来てもいいぞ」
このうえこの状況を引っ掻き回すか!!!(怒)という心中を隠して、ありがたぁい大久保さんの申し出を丁重にお断りする。
「気を使うな。素直に喜べ」
相変わらずの上から目線だなぁ……(苦笑)なんか、わたし、この人とはずっとこうやって合わないままのような気がするんだよなぁ…。
「おい、嫌なら嫌と、言ってやれ」
高杉さんは高杉さんで、そんなふうに事を荒立てるようなことを言ってくるし。
そもそも、それをしたから今さんざん大久保さんに言われたワケで。
「嫌ってほどでも、ないような…」
そんなわけで、わたしは今回必死で取り繕う。
すると、大久保さんが満足そうに笑った。
「素晴らしい人間の傍に在りたいと欲するのは、人の自然な欲求だ。私の所に来たいと願うのも、至極当然だな」
イヤ、願ってないし。(ビシッ)
「そ、そうなのか!」
イヤ、だから。高杉さんも人の話を……。
オタオタするわたしの周りで、話がどんどん進んでいく。
「ふふん。ならばハッキリと、こいつの口から言わせればいい。私と高杉くんのどちらがいいか……ひいては土佐藩邸と長州藩邸のどちらがいいか、だ」
イヤイヤイヤ。
なんだか、話が変な方向に進んでない???そんな話、してなかったよね??
「そもそも、女が男を選ぶなんて聞いたことがない」
武市さんの(現代人のわたしにとってはカッチーンとくる)言葉すら、二人には届かないようで。
「どっちなんだ!」
「さあ、正直に私を選んでいいぞ」
ズイズイと回答を迫られて、頭がパンクしそうになる。ナニソレ、ナニソレ、ナニソレ!?
なんでわたしが、どっちかを選ぶの!?
てか、今そんなこと選ぶ状況??(泣)
完全に頭に血が上った状況でわたしが出した答えは。
「わたし、桂さんが優しいから…長州藩邸がいいですっ!」
「え…?」
桂さんの間の抜けた声だけが場に落ちて、そして。
「ははは!お互いに振られたな!」
大久保さんがそんなふうに言ってるけど。どっちも選んでないんですけど。
……選んでないのに、どうして大久保さんが勝利者みたいに見えるんだろう…?
そんなことに気をとられている間に、高杉さんは桂さんに「わたしは渡さない!」とか言い出す始末。
本当は、高杉さんのところがいいって、言いたかったのに……。恥ずかしすぎて、思わず桂さんの名前出しちゃった。
私、バカだな……。
高杉さん、怒っちゃったかな……。なんだかちょっと怖いよ……。
つきん、と。胸の奥が痛んだ。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「のぉ、高杉さん、ちくっといいじゃろうか?」
帰り際。龍馬は晋作に声をかけた。
「ん?どうした?坂本」
「なに、大したことじゃないきに。そこまで付き合ってくれ」
「ああ、構わないぞ!行くか!」
暮れかかる空。
門のところで手を振って坂本を見送る少女を背に、二人はフラリと通りを歩く。
それからいくらも行かないうちに、龍馬が切り出した。
「これからあの子を、どうするつもりじゃ」
「どうする?」
「ああ、いや。最初に見つけて、連れてきたのはワシじゃったからちくと気になってのう」
「ああ、そう言う事か……」
ふいと晋作が龍馬から視線を逸らした。
「まだあいつに、どうしたいか聞いてないからわからないな……」
晋作の答えに龍馬が目を見開く。
「まぁだ、聞いておらんのか?」
「……そうだな」
龍馬の問いに答える晋作の歯切れはとても悪い。日頃が快活なだけに不気味なほどだ。
「らしくないのう。帰ると言われるんが怖いんか?」
一瞬、晋作が息を飲むのがわかった。誤魔化すように、明るく続けたことも。
「ははは!坂本、あんた容赦のない奴だな!!」
笑い声に力がない。
だからこそ、釘をさしておかなければならない、と思ったのだ。少しでも早く。からかって、遊んでいたのだと。そう言って思い出にできるうちに。
「あの娘は、近く居なくなる子じゃ」
「……」
「本気になったら、いかんぜよ」
「……わかっている」
龍馬の忠告に、晋作は普通に答えて。だから、一瞬龍馬はほっとする。
この大事な時期に自分を見失われては、困る。
だが。
「……わかっては、いる」
言葉を、言い直したかのように聞こえた。……しかし、それは大違いだ。
「わかっているが、もう遅いんだ!オレはもうあいつでなけりゃダメなんだ!あいつ以外には、いらない!…あいつがいい!あいつだけが、欲しいんだっ!」
「…高杉さん」
「あいつでなけりゃ……ダメなんだ……」
この感情の止め方を知らない。消し方も知らない。……知りたくもない。
自分だってよくわからない。たかだか会って数日だ。こんな執着を覚えることの方がどうかしている。そんなことは『わかっている』そう。『わかってはいる』のだ。
行き場のない思いと、どうしようもない現状に言葉を詰まらせた晋作の肩を龍馬がポンと叩く。
「こがな巡り合わせも、あるもんなんじゃのお」
「出逢っちまったんだ、仕方ない」
坂本の苦笑に釣られて、晋作も苦笑する。
「だが、高杉さん。おんしはそれでのうても胸の件があるんやき、無理したらダメじゃよ?」
ああ。わかっている。
そして、どこまでも優しいこの男に感謝する。
「何かあったら。いつでも言ってくれ。相談にのるぜよ」
どこまでも、どこまでも。優しい男は何度か晋作を振り返りながら夕闇に消えていく。
「わかってる……自分の身体の事は、誰よりも…な」
失う明日を思うよりは、あいつと笑い合う明日を。
…それだけで、それを思うだけで救われる。
晋作は彼女の待つ藩邸へ足を向けた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「うーん。お菓子じゃ遊べないしなぁ……」
自分の部屋に戻ってスクバを引っくり返して、色々探してみたけれど。出てくるのはせいぜいお菓子ばっかり。
合宿中にみんなで食べようと思って用意したものだ。
結局『遊び』なんて思いつかなくて、高杉さんが帰って来るのを待っている間に考えるのを続行することにしたのだ。
と、唐突にさっきの自分を思い出した。
高杉さんと大久保さんを秤にかけて、ちゃんと高杉さんを選べなかったわたし。
さすがに……素直じゃなかったな…………。
高杉さんにはすごく良くしてもらってるのに。
よし!高杉さんが帰ってきたらちゃんと言おう!さっきは恥ずかしかっただけなんだって!
心の中でそう決意してしまうと、すごくスッキリした。
早く高杉さん帰ってこないかなぁ~???と、心待ちにしている自分がいる。
待っている。待っているから。……早くいつものあの笑顔に会いたい。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ハイ、というワケで!第五話でしたー!!!
なんだか高杉さんが大変です……(汗)イベント用アイテムが『粉薬』(購入済み)だったことから何か持病をお持ちなのかな~?とは思ってましたけど。本当に深刻そうで笑うに笑えません(むしろ笑うな)
あああああ……待っている主人公ちゃんのもとに早く帰ってきてッ!!!
こんな終わり方じゃ続きが気になって仕方ないよッ!!!みたいな(笑)
しかしまぁ、そういう伏線を抱えているから当初『未来』に対してすごい興味を持っていたのかな。とか。ストレートな感情表現はいつ何があっても後悔しない為の高杉さんの生き方なのかな、とか。そう思って若干納得。
正直坂本さんにカミングアウトしてる時は「どんだけ~(古ッ)」な気分でしたけど、その後の病の件でゾクゾクしました。
ああ……。応えてあげたい(爆)
今日の選択肢
そんなこと言ってません!(花)
驚くじゃないですか
気になってひょいっと入り口を覗いて見ると、坂本さんと武市さんの姿が見えた。
「おはようございますっ!」
目が合って、元気よくご挨拶!一日の始まりは元気な挨拶から~ってね~!
二人とも笑って挨拶を返してくれた。しかも、元気がいいって褒められた!!
今日はいいことありそう~♪
「…龍馬、どうした?」
武市さんが、ふと坂本さんにそう問い掛けた。
坂本さん、武市さんをガン見してたから……気になったみたい。
「こん子と話す時は、武市もいい顔をすると思ってのう」(おおお!?)
「そ、そんな事はない!」(おおお……)
「にしし!すみにおけんのう」
坂本さんも何を言い出すやら(苦笑)武市さんが困ってるし。
「随分と賑やかだね」
そんな中、桂さんが現れてわたしは二人の案内役を仰せつかる。案内する道中でもこの二人はさっきの会話を続けている。
「武市、桂さんに救われたのう」
「もう、黙っていろ」
「えぇじゃないか」
「龍馬!」
…こんなこと話してるとわたしと大して年が変わらないような気すらしてくるよ。二人に背中を向けたままでくすくす笑っていると、坂本さんがわたしに声をかけてきた。
「藩邸での生活は、もう慣れたんかのう?」
「はい。お蔭様で。…あ。だけど」
『だけど?』
二人に同時に聞き返されて、やっぱりくすくす笑いながらわたしは答えた。
「高杉さんには、振り回されっぱなしです」
言葉に二人はすっかり関心を示した様子で、どんな風に振り回されるのか…とか、詳しく聞いて来る。わたしはわたしで、溜まった鬱憤を晴らすかのようにここ数日であったことを二人に聞いてもらう事にする。
朝っぱらからいきなり部屋に来て、寝てるわたしの横で荷物を物色されたこと。あっちこっちに連れて行こうとすること。何かって言うとわたしをからかって遊ぶこと。
「もう、本当に困りますっ!」
「困っちょる言いよるわりに、楽しそうだのう」
「あぁ、確かに」
一瞬、言葉に詰まった。……こっ、この人達までっ!!
「そ、そんなこと、ありません」
だから、若干反論する言葉が知りつぼみ気味だったのもしょうがない、と、思う。
坂本さんは、わたしを見ながらいつも通りの優しい口調で続ける。
「高杉さんのこと、嫌いではないんじゃろう?」
投げかけられた坂本さんのその言葉に、答える言葉を持たなかった。
確かに、高杉さんのことは嫌いじゃない…。でも、あんなに振り回されてるのに?
いや、けど確かにあの人、いい人で。嫌いなんていう人の方が珍しいんじゃないのかな…。
だから。
「よぉ、早いな!」
廊下に響いた声に、心臓が口から出そうになる。…高杉さんだ。
あまりのタイミングのよさに、自分の鼓動が随分早くなっているのがわかる。も、もう!!!龍馬さんが変なことを言うからッ!!
「ん?顔が赤いぞ?どうした?」
当然。そんなわたしの心境なんて知る由もない高杉さんは無遠慮にわたしの顔を覗き込んできて。もはやどんな顔をすればいいのかもわからないくらいパニックになったわたしは、高杉さんの視線を避けるようにさらに顔を伏せる。
「おい、おまえら」
言葉の響きと衣擦れの音で高杉さんが坂本さんと武市さんの方を振り返ったのがわかって、内心ほっとする。が。
「まさかとは思うが。オレの女に、手を出しちゃいないだろうな!」
言葉に瞬時に全力でわたしは答える!
「高杉さんの女じゃありませんっ!」
「いつもながら否定が早いな!」
当たり前だ!この調子でどんどん既成事実を作られてなるものかっ!!
そんな手にはのらないんだからっ!
「わたしはまだ、高杉さんの女なんかじゃありません」
きっぱり言い放つわたしの前で「ほぉ?」と高杉さんが笑う。
「な、……なんですか…」
「『まだ』な?」
「え??」
高杉さんの言葉の意味がわからなくて、頭の周りでハテナが飛ぶ。
「『まだ』だが、『いずれは』ってことだな?」
「っ!そんなこと言ってません!」
ダメだ。この人に勝つのは無理な気がするっ(泣)口では絶対勝てなさそうな高杉さんからせめてもの抵抗でプイッと顔を背けると、彼は逆にスッと顔を近づけてきた。
「いつもの元気が出たようだな」
「え?」
反射的に高杉さんを見ると、さっきまでの調子とは違う真剣な眼差しがそこにあった。
「昨日も言ったが、お前は笑っている方がいい」(高杉さん、カッコイイ(号泣))
至近距離の真っ直ぐな視線に。トクン、と、心臓が跳ねた気がした。
この人は、本当に心臓に悪い人だ。一緒にいると、落ち着く暇がない…と思う。
「あっついのう」
「あぁ。だが取り込み中に申し訳ないが、そろそろ会合に入りませんか?」
っ!!!!
わ、忘れてたっ!!!!坂本さんと武市さんがいたんじゃないっ!!!!わたわたするわたしをよそに、高杉さんは「ああ、そうだな」とか平然と言って部屋に入っていく。
わたしに「いい子で待ってろよ?」と、言い残して。
さて。そうして高杉さんたちがお話をしている間、いきなりわたしは暇になった。
が。高杉さんにも桂さんにも外に出たらダメだと釘をさされてるし。現役女子高生のわたしにできる『なにか』なんて限られている。
そんなわけで!
わたしは藩邸の人を捕まえて掃除道具の場所を教えてもらい、掃除をして待っていることにした。何もしないでいるのも退屈だしね!
掃除道具の場所を教えてもらう間、捕まえたお兄さんから「実は藩邸の人たちは高杉さんのお気に入りであるわたしに興味津々なのだ」とかそんな事実を教えてもらったり。
それから、お兄さんの話を聞いていて思ったのは。みんな高杉さんを本当に慕っているんだってこと。
「我等は皆、カシラを尊敬し信頼しています」
言ったお兄さんのキラキラした瞳がとても印象的で。そして、そんな風に皆から慕われる高杉さんが本当にすごいんだと、実感した。
…なかなかないよね。みんなに、こんなに好かれる人も。
お兄さんと別れて掃除をし始めてからは、自然にそんな高杉さんのことを考えていた。
龍馬さんに、「嫌いじゃないんだろう」って言われたっけ。
落ち葉を掃きながら、思う。
そりゃ嫌いじゃ、ないよ。
行き場のないわたしをここに置いてくれて。なんだかんだ言って、よくしてくれてるし。藩邸の人たちにも好かれているし…。ピンチの時には助けにきてくれて。
わたし。
高杉さんのこと、どう思っているんだろう……。
そういえば今日は、さっきちょっと顔を合わせただけで全然喋ってないなぁ…。
なんだかちょっと……寂しいな……と思うわたしは、もう随分高杉さんに影響されているのかもしれない。
「会いたいな……」
ぽつ、と呟いた時。
「よぉ、何ボーッとしてるんだ!」
聞きたかった声が間近で聞こえて、わたしは思ったよりもずっと大きな声で相手の名前を叫ぶ。
「たっ高杉さん!」
「なんだ、大声出して!」
心底びっくりしたらしい(それはわたしだって同じだけど)高杉さんが目を丸くしている。
「かっ、会合じゃなかったんですか」
「ははっ!まだ終わっちゃいないがお前が寂しがっているんじゃないかと思ってな!」
図星を指されすぎて、わたしはドキドキしていた。
ひょ、ひょっとして、さっきの聞かれてたんじゃないよね??と、ビクビクしながら高杉さんを見るけど、顔を見る限り面白がっている風でもからかう様子でもないし…どうやらそれはなさそうだ。……ちょっと安心。
そういえば。
「あの…会合、抜けてきちゃってよかったんですか?」
問うと、わたしが寂しがってると思うと会合どころじゃなかったからな。と、さっきと同じ答え。……いいのかなぁ~?いつも抜けちゃってるような…??
し、しかもっ、それって、ひょっとしてわたしが高杉さんの邪魔してるっ?
「わ、わたしは別に、寂しがってなんか……」
「なーんて……」
「え?」
「寂しかったのは、オレの方だ」
言うと、不意に高杉さんがその大きな手でわたしの頭をグリグリ撫で回す。
「お、驚くじゃないですか」
「別に、驚かすつもりはなかったんだが惚れさせるつもりは、いつでもあるぞ!」
……またぁ……。
もうこの手の問答で高杉さんに勝てないことは、今までの攻防を見ても明らかだ。
ただわたしは、どうすればいいのかがひたすらわからない。
「安心してオレに惚れろ!」
とか言っちゃう高杉さんが、ある意味羨ましすぎる……。
「もうじき会合も終わるから、それまでに面白い遊びでも考えておけ!」
なーんて軽く言いながら、高杉さんは屋敷の方に戻っていった。会いたいと思った時にきてくれて。ほんのちょっとだけど話せて。…ちょっとだけ、嬉しくなってしまったのは、悔しいのでナイショだ。
高杉さんが会合に戻った後、わたしは一所懸命高杉さんに言われた『遊び』を考えていた。
どうせだから高杉さんが驚くような、すっごく楽しんでくれるような、そんなのがいいな~と思って。
この世界の人がどんな遊びを楽しむのかわかんないけど。
高杉さんが笑ってくれるのは、悪くない、と。思う。
そうして、そんなふうに一所懸命。彼の為に考えている自分に気付いて。苦笑した。
しばらくして会合が終わったことを教えられて、わたしは縁側で寛いでいるみんなにお茶やお菓子を持っていった。
そこで、偶然の再会が待っていようとは露ほども思わずに。
「ん?お前はいつぞやの」
「っ!!!なんで大久保さんがいるんですか!」
気っ…気まずいっ!!!初対面があんな出会いだったから、すごく……気まずいっ!もう会うこともないかな~とか思ってたのにっ!
そんなわたし達をみて、周りのみんなが首をかしげている。
「大久保さんとは、そんなに面識がありましたか?」
武市さんがそう聞くと、大久保さんは例のあのデカい態度&上から目線で口を開く。
「面識も何も、会ってやるのはこれがまだ二度目だ」
はわわわわわっ!!!!
お願いだからもうそれ以上ツッコまないで~~~~!!!!!
初日のやりとりが頭の中で思い起こされて軽いパニックに陥りそうだ…!
「それにしちゃあ、仲良しさんじゃのお」(だから、坂本さんわたしが誰にでも尻尾振るような発言はちょっと…)
「これのどこが仲良しに見える」
「仲良しじゃありません!」
『あ……』
坂本さんの言葉に対する反応やら、その後の反応やら。あまりにピッタリ揃いすぎて気まずくなる…。
が。ここから大久保さんが、出会った時のあの出来事を事細かにみんなに話し始めたのだ。
ああああああっ!!!穴があったら入りたいっ!
「そもそもこれは、初対面で私を怒鳴りつけた小娘だぞ」
……ハイ。
「挙句の果てに、このわたしに向かって何様だ、器が小さいなどと…」
……ハイ、ソウデスネ。なんか、そんなこと言った覚えが……。
だって、あの時は以蔵のことで必死だったんだもん…。
武市さんや桂さんがドン引きするその空気の中で、一人おかしそうに笑ったのが高杉さんだった。
「あーっはっはっは!さすがオレが惚れた女だ!」
「笑い事ではないよ?晋作。これではいくつ命があっても足りない」
桂さんがそう言って溜息をつけば、龍馬さんも「確かに、ほうじゃのう」と頷く。
「だが、高杉さんが、何故こん子を気に入ったのかわかるような気がするぜよ」
「はっはっはっ!そうだろう!そうだろう!」
高杉さんは龍馬さんの言葉に嬉しそうに頷いてるし。
いや、もぉ、ほんと意味がわからないんでやめてください。。。
「ふん、まあ暇つぶし程度にはなるだろうから、土佐藩邸に来てもいいぞ」
このうえこの状況を引っ掻き回すか!!!(怒)という心中を隠して、ありがたぁい大久保さんの申し出を丁重にお断りする。
「気を使うな。素直に喜べ」
相変わらずの上から目線だなぁ……(苦笑)なんか、わたし、この人とはずっとこうやって合わないままのような気がするんだよなぁ…。
「おい、嫌なら嫌と、言ってやれ」
高杉さんは高杉さんで、そんなふうに事を荒立てるようなことを言ってくるし。
そもそも、それをしたから今さんざん大久保さんに言われたワケで。
「嫌ってほどでも、ないような…」
そんなわけで、わたしは今回必死で取り繕う。
すると、大久保さんが満足そうに笑った。
「素晴らしい人間の傍に在りたいと欲するのは、人の自然な欲求だ。私の所に来たいと願うのも、至極当然だな」
イヤ、願ってないし。(ビシッ)
「そ、そうなのか!」
イヤ、だから。高杉さんも人の話を……。
オタオタするわたしの周りで、話がどんどん進んでいく。
「ふふん。ならばハッキリと、こいつの口から言わせればいい。私と高杉くんのどちらがいいか……ひいては土佐藩邸と長州藩邸のどちらがいいか、だ」
イヤイヤイヤ。
なんだか、話が変な方向に進んでない???そんな話、してなかったよね??
「そもそも、女が男を選ぶなんて聞いたことがない」
武市さんの(現代人のわたしにとってはカッチーンとくる)言葉すら、二人には届かないようで。
「どっちなんだ!」
「さあ、正直に私を選んでいいぞ」
ズイズイと回答を迫られて、頭がパンクしそうになる。ナニソレ、ナニソレ、ナニソレ!?
なんでわたしが、どっちかを選ぶの!?
てか、今そんなこと選ぶ状況??(泣)
完全に頭に血が上った状況でわたしが出した答えは。
「わたし、桂さんが優しいから…長州藩邸がいいですっ!」
「え…?」
桂さんの間の抜けた声だけが場に落ちて、そして。
「ははは!お互いに振られたな!」
大久保さんがそんなふうに言ってるけど。どっちも選んでないんですけど。
……選んでないのに、どうして大久保さんが勝利者みたいに見えるんだろう…?
そんなことに気をとられている間に、高杉さんは桂さんに「わたしは渡さない!」とか言い出す始末。
本当は、高杉さんのところがいいって、言いたかったのに……。恥ずかしすぎて、思わず桂さんの名前出しちゃった。
私、バカだな……。
高杉さん、怒っちゃったかな……。なんだかちょっと怖いよ……。
つきん、と。胸の奥が痛んだ。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「のぉ、高杉さん、ちくっといいじゃろうか?」
帰り際。龍馬は晋作に声をかけた。
「ん?どうした?坂本」
「なに、大したことじゃないきに。そこまで付き合ってくれ」
「ああ、構わないぞ!行くか!」
暮れかかる空。
門のところで手を振って坂本を見送る少女を背に、二人はフラリと通りを歩く。
それからいくらも行かないうちに、龍馬が切り出した。
「これからあの子を、どうするつもりじゃ」
「どうする?」
「ああ、いや。最初に見つけて、連れてきたのはワシじゃったからちくと気になってのう」
「ああ、そう言う事か……」
ふいと晋作が龍馬から視線を逸らした。
「まだあいつに、どうしたいか聞いてないからわからないな……」
晋作の答えに龍馬が目を見開く。
「まぁだ、聞いておらんのか?」
「……そうだな」
龍馬の問いに答える晋作の歯切れはとても悪い。日頃が快活なだけに不気味なほどだ。
「らしくないのう。帰ると言われるんが怖いんか?」
一瞬、晋作が息を飲むのがわかった。誤魔化すように、明るく続けたことも。
「ははは!坂本、あんた容赦のない奴だな!!」
笑い声に力がない。
だからこそ、釘をさしておかなければならない、と思ったのだ。少しでも早く。からかって、遊んでいたのだと。そう言って思い出にできるうちに。
「あの娘は、近く居なくなる子じゃ」
「……」
「本気になったら、いかんぜよ」
「……わかっている」
龍馬の忠告に、晋作は普通に答えて。だから、一瞬龍馬はほっとする。
この大事な時期に自分を見失われては、困る。
だが。
「……わかっては、いる」
言葉を、言い直したかのように聞こえた。……しかし、それは大違いだ。
「わかっているが、もう遅いんだ!オレはもうあいつでなけりゃダメなんだ!あいつ以外には、いらない!…あいつがいい!あいつだけが、欲しいんだっ!」
「…高杉さん」
「あいつでなけりゃ……ダメなんだ……」
この感情の止め方を知らない。消し方も知らない。……知りたくもない。
自分だってよくわからない。たかだか会って数日だ。こんな執着を覚えることの方がどうかしている。そんなことは『わかっている』そう。『わかってはいる』のだ。
行き場のない思いと、どうしようもない現状に言葉を詰まらせた晋作の肩を龍馬がポンと叩く。
「こがな巡り合わせも、あるもんなんじゃのお」
「出逢っちまったんだ、仕方ない」
坂本の苦笑に釣られて、晋作も苦笑する。
「だが、高杉さん。おんしはそれでのうても胸の件があるんやき、無理したらダメじゃよ?」
ああ。わかっている。
そして、どこまでも優しいこの男に感謝する。
「何かあったら。いつでも言ってくれ。相談にのるぜよ」
どこまでも、どこまでも。優しい男は何度か晋作を振り返りながら夕闇に消えていく。
「わかってる……自分の身体の事は、誰よりも…な」
失う明日を思うよりは、あいつと笑い合う明日を。
…それだけで、それを思うだけで救われる。
晋作は彼女の待つ藩邸へ足を向けた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「うーん。お菓子じゃ遊べないしなぁ……」
自分の部屋に戻ってスクバを引っくり返して、色々探してみたけれど。出てくるのはせいぜいお菓子ばっかり。
合宿中にみんなで食べようと思って用意したものだ。
結局『遊び』なんて思いつかなくて、高杉さんが帰って来るのを待っている間に考えるのを続行することにしたのだ。
と、唐突にさっきの自分を思い出した。
高杉さんと大久保さんを秤にかけて、ちゃんと高杉さんを選べなかったわたし。
さすがに……素直じゃなかったな…………。
高杉さんにはすごく良くしてもらってるのに。
よし!高杉さんが帰ってきたらちゃんと言おう!さっきは恥ずかしかっただけなんだって!
心の中でそう決意してしまうと、すごくスッキリした。
早く高杉さん帰ってこないかなぁ~???と、心待ちにしている自分がいる。
待っている。待っているから。……早くいつものあの笑顔に会いたい。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ハイ、というワケで!第五話でしたー!!!
なんだか高杉さんが大変です……(汗)イベント用アイテムが『粉薬』(購入済み)だったことから何か持病をお持ちなのかな~?とは思ってましたけど。本当に深刻そうで笑うに笑えません(むしろ笑うな)
あああああ……待っている主人公ちゃんのもとに早く帰ってきてッ!!!
こんな終わり方じゃ続きが気になって仕方ないよッ!!!みたいな(笑)
しかしまぁ、そういう伏線を抱えているから当初『未来』に対してすごい興味を持っていたのかな。とか。ストレートな感情表現はいつ何があっても後悔しない為の高杉さんの生き方なのかな、とか。そう思って若干納得。
正直坂本さんにカミングアウトしてる時は「どんだけ~(古ッ)」な気分でしたけど、その後の病の件でゾクゾクしました。
ああ……。応えてあげたい(爆)
今日の選択肢
そんなこと言ってません!(花)
驚くじゃないですか
幕恋 『高杉晋作 第四話』
2009年12月4日 携帯アプリ翌日の朝。
実は以蔵の一件から藩邸に泊まっていた武市さんと中岡さん(以下慎ちゃんで…(汗))が、寺田屋に帰っていった。
…なんだか、大事な会合があるから…とかなんとか。毎日毎日大変だなぁ…。
そんな中で、慎ちゃんが気になる言葉を残していった。
「昨日の夜、桂さん…すごい心配してたっスよ。だから、頑張って下さいっス」
…イミわかんないし。
心配→頑張れって話がつながってないじゃん。。。
「え…?それ、どういう意味……」
聞き返そうとしたら、強引に。迫力のある笑顔を浮かべた桂さんに遮られ……。明らかに「しまった!!」という顔をした慎ちゃんが、脱兎のごとく逃げていく。
……嫌な予感……(汗)
彼らを見送ってわたしも一度自分の部屋に戻ろうとした、その時。
その笑顔そのままで、桂さんに呼び止められて。…わたしは、桂さんに促されるまま歩いていき……高杉さんのもとまで案内された。
「よぉ!調子はどうだ?」
と…いつもの調子の高杉さん。
一瞬で、昨夜の高杉さんを思い出す。助けに、来てくれたんだよね…。この人。
何の義理もないはずの、まだ出会って何日かの、わたしを。
そう思ったら、なんだか急に恥ずかしくなって。わたしは慌てて高杉さんから視線を逸らした。
その時、横から桂さんが座るように促してきたので、なんとなく正座をして桂さんを見つめる。
……桂さんもわたしを真っ直ぐに見つめてて、しばし、沈黙。
…うぅ…慎ちゃんの言葉が妙に気になる。。。な、なんだろう。この沈黙は……。
「昨日、一人で外を出歩いていたそうだね」
沈黙の割に軽く、笑顔で尋ねられて。わたしもそれにつられて簡単に口を開いた。
高杉さんを待っていて、退屈だったから外に出てしまったこと。
それから……イロイロ、あったこと。
わたしから話を聞いていくにつれ、桂さんの雰囲気が変わっていくのがわかって、かなり、怖い。
そうだ…。探しにきてくれた高杉さんとは別に、桂さんもすごく心配してくれてたのだと。慎ちゃんが言ってた。
「ここは君が思っているよりも危険なんだ」「君の格好は人目を引く」(だったら服くらい用意してくださいよ…)「夜中に知らぬ男に声をかけるとは滑稽極まりない」「晋作が現れなかったら、命を落としていたかもしれないんだよ?」
桂さんが言う一言一言が、とても重くて。わたしは、俯くことしか出来なかった。
……当たり前だ。だからこんなのは、言われて当然で。
でも、わたしだって、そんなに危険だなんて思ってなくて…だから。
「あー!もうそれくらいにしてやれよ!どう見たって、反省してるじゃないか」
高杉さんが横から助け舟を出してくれるものの、桂さんは余計に強い口調で続ける。
今度は高杉さんが、わたしにはここに関する知識がないことや、土地勘がないことを知っていてなんで放置したのか…とか怒られてる……。
うぅ…、ごめんね…高杉さん……。
が、しかし。そこはさすがの高杉さん(?)突然立ち上がり「あ!そうだっ!!」と叫ぶ。
「何かあっても身を守れるように、こいつと剣の稽古をする約束をしていたんだ!」
え…!?初耳。
戸惑うわたしを尻目に、がしっと腕を掴んで高杉さんが廊下に飛び出した。
…ごめんなさーいっ!!!!桂さぁん!!!!
わたしは、心の中だけで全力で謝っておいた。
「あのままじゃ、日が暮れちまうとこだった!」
廊下に出るなり、高杉さんが快活に笑う。
「これ後で、余計に怒られませんか?」
「そうなったら、その時に考える!!」
…なんて、行き当たりばったりな…(汗)
でもそう返すと、じゃあ説教と庭で素振りとどっちが良かったんだ?と素で問い返された。
……そ、そんなの、……素振りの方が…まだイイ(苦笑)
しぶしぶそう答えると、高杉さんがにんまり笑う。
「お前は、いつも俺と一緒に居たいんだもんな?」
「そっ!そんなこと言ってませんっ!」
いきなりの高杉さんの攻撃に、顔が一気に赤くなるのが自分でもわかった。
「どうした?顔が赤いぞ?風邪でもひいたか」
……こっ……この人っ……!!!
「無理するな!今すぐ安静にして寝ないとな!もちろん、俺が添い寝してやるぞ!」
わかっててやってる!!!!
絶ぇっ対わかっててからかわれてる!!!!
「…!竹刀取ってきますっ!」
そう言い、わたしは顔を背けて大股で部屋に向かう。
「あんま、無理すんなよーっ!」
後ろから、ひょうひょうとした声をかけられて。悔しかったから「してませんっ!」と返しておく。
少し歩いてから、まだ熱い頬に手をあてた。
高杉さんにとってはからかってるだけのつもりでも。こんな風にドキドキさせられてたらこっちの身がもたないよ……。
こっそり、わたしは溜息をついた。
竹刀を取って庭に行くと、そこではもう高杉さんが素振りをしていて。
……なんだろ、昨日も思ったけど高杉さんって…構えとかそういうのすごくキレー。形がすごく決まってて、思わず目を奪われる。
素直にそう思って褒めたら。
「惚れ直したか?」
いつもの笑顔でそんな風に言ってくる。……いつもいつもやられてると思ったら大間違いよっ!?
「惚れ直したというより……ちょっと、悔しくなりました」
「悔しくなった!?なんでだ?」
高杉さんは心底不思議そうに聞き返す。
…そりゃあ。わたしだって結構小さな頃から剣道やってきてるワケだし。それは、好きだったからで。
それを、自分より形がきれいな人を見たりすれば羨ましいし、悔しい。
「もっともっと、上達したいって思うんです」
言って、笑うと高杉さんも笑ってくれる。
「うん。さすがオレが惚れた女だ!!オレは今、無性に嬉しいぞ!」
あぁ…。ほんと、高杉さんの好みがよくわからない…!始終こんなこと言ってるけど、本気なのかなぁ……(苦笑)
「さてと。素振り始めるか」
だって、さっきそんなこと言ったと思ったら、何事もなかったかのように素振りさせますからね。。。
まぁ、いいんですけどね。。。
……いい先生がそばにいれば、わたしももう少し上達できるかもしれない。
そんなわけで、しばらく高杉さんと素振りをしていたら……不意に、さっきの高杉さんと桂さんとのやりとりを思い出した。
…気になりだしたら止まらなくて。素振りをしながら問い掛ける。
あんな感じで話を中断しても良かったのか。こう…二人の仲的に…とか~。
だけど、高杉さんはいつものように笑い飛ばして「絶対大丈夫だ!」と言う。
…絶対の根拠って、なんなんだろう……?そう問えば、高杉さんから意外な問いが返ってきた。
「なぁ、オレと小五郎って、似ていると思うか?」
高杉さんと……桂さん???
素振りを止めて、考えてみる。ん~……そうだなぁ。
「似てるかも」
「ほぉ!似てると言われたのは、初めてだ!」
「そうなんですか?」
聞くと、うんうんと高杉さんが頷く。
「だが、どこが似てる?」
どこ……。どこ、かぁ。どこかって言われると困るけど。
見た目も雰囲気も全然違うし、一見正反対くらいに見えちゃいそうだけど。
だけど、なんだろう。
「同じ感じがするんです。ん~。空気っていうのかな?向かっている方向って言うか…」
なんか、うまく表わせない。上手い言葉が浮かばないっ!
伝わってるのかなぁ…と思って高杉さんを見上げると照れたように笑う彼がいた。
「向かっている方向か……。なんだか嬉しいもんだな!そんな風に言われるのは」
本当に、嬉しそう。こっちも嬉しくなるような笑顔。
「思ったことを言っただけですよ?」
「時に、お前にはそう言った相手はいないのか?」(禁句だろ~~!高杉さん!!!)
たぶん、なんの気なくかけられた高杉さんの言葉に、自分でも身体が凍りつくのがわかった。
真っ先に浮かんだのは、カナちゃん。……どうしてるんだろう……。きっと、心配してるよね……。クラスでも、部活でも。いつも一緒で一番仲良かったカナちゃん。
……今まで思い出さなかったのが不思議なくらいだ……。
や、思い出したくなかっただけ、なのかも知れないけど。
思い出し始めたらどんどん悲しくなって、わたしは高杉さんに答えることも出来ずに俯くしかできなかった。
そんなわたしに気付いて、慌てて高杉さんがフォローしてくれる。
「悩む暇があるなら、解決の為に動け!動いてから悩め!」
オレは、お前の笑った顔が好きだから。
そんな風に。
これは高杉さんなりに、一所懸命励ましてくれてるんだよね…。ん。あんまり心配かけちゃ、ダメだ!
「あの、高杉さん…ありが…」
「よーし、こういう時は風呂だ!!」
「は!?」
ナニ??この唐突な展開!?
「風呂に入って悩みも汗も全部流せ!さあ、一緒に入るぞ!!」
「は、入りません!!」
お礼言おうと思ったのに…!そんな間もなくツッコむ羽目になって。いつもの調子でそう返すと、高杉さんがニヤリと笑った。
「よーし、いつものおまえらしい調子がでてきたな?いつもそれでいろ!」
「あ…」
確かに……そう、かも??
すごく複雑な気分でいると、その間に高杉さんは「誰か、風呂の用意をしろーっ!」とか叫びながら、一人で行ってしまった。
そんな彼の背を見送って。思う。
高杉さんはスゴい人だなぁ……わたしなんかいつも振り回されてばっかりで、付き合うのには相当なパワーが必要そうだ。
そう考えてふっと笑ったわたしに、後ろから声がかかる。
振り返ると、立っていたのは桂さんで。
反射的にさっきの一件を謝ろうとしたわたしを遮って桂さんは微笑んだ。そして、そのままわたしに向かって手を差し出す。……その手のひらに、小さな笛のようなものがあった。
「これ…?」
「もう、昨夜のようなことはないと思いますが…もしもの時はこれをお使いなさい」
そうして、笛をわたしに渡してくれる。
「言ってしまうとね、これは晋作が用意させたのだよ」
「え?」
「幾分、ふざけているように見えたりも、するかもしれないけどね。晋作はああ見えて、とても思慮深い男なんだ。先々のことを、常に考えているんだよ」(とか言ってわたしに渡すってことは、先々にこれを使わないといけないような、ピンチイベントが転がってると…(苦笑))
え?…あれ?さっきは桂さん、高杉さんに考えが足りないとかイロイロ…怒ってたのに。
え???なんで?頭が混乱してくる。。。
そんなわたしには構わず、桂さんは紐を通して首からさげておくように、と伝えて去っていった。
……なんだか、不思議な関係。高杉さんと、桂さんって。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
晋作は、部屋で一人考え込んでいた。思い浮かぶのは、さっきの少女の悲しげなカオ。
突然たった一人で、過去に放り出された少女。不安にならない方がどうかしている。
……泣き出しそうなカオに。そんなカオをさせたことに、心が痛んだ。
今、自分に出来ることはなんなのか。
彼女の言う寺を探して帰してやればいいのだろうか。
…きっと。
帰る方法が見つかれば喜ぶだろう。
寺を見つけて。……あいつを、帰す……?
思い至った結論に、異を唱える自分を。晋作はもう十分自覚している。
帰したくないと。離したくないと。どこかで思う自分がいるのは、紛れもない事実だ。
けれど、帰したくないと自分勝手に願うなら。救わなければならないモノがある。
(過去に、たった一人。……その寂しさを、オレが埋めてやれるのか?)
出会って数日。縁もゆかりもない男。いきなり親兄弟の代わりになれるハズもない。
どうすれば……あの。
向日葵のような明るい笑顔を、守ることができるのだろう……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「よし!できた!」
わたしは、さっきの笛の穴に紐を通して、自分の首にかけた。
…高杉さんが、わたしのために用意してくれた笛。なんだか、お守りみたいで嬉しい。
小さな笛を、手のひらでぎゅっと握り締める。
……それだけで、なんだか安心できるような気がした。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
と、言うわけで。四話でしたぁ!
晋作さんが既にわりかし本気なトコに若干の違和感を覚えなくもないですが~。まぁ、花を連発している今の主人公ちゃんなら、多少納得???
もうちょっと、高杉さんが主人公を気にする理由のエピソードを入れてれば良かったと思いますけどね~♪
つぅか、現段階でこんな甘いのに……この先どうなるんだろ。まだ十日くらいあるんだよ???そして、その頃までこのレヴューを続けられるのか!!!
うやぁ…。極限への挑戦やね~(爆)
今日の選択肢vv
す、素振りです(花)
ちょっと悔しくなりました(花)
似てるかも(花)
ぱーへくと☆(笑)
実は以蔵の一件から藩邸に泊まっていた武市さんと中岡さん(以下慎ちゃんで…(汗))が、寺田屋に帰っていった。
…なんだか、大事な会合があるから…とかなんとか。毎日毎日大変だなぁ…。
そんな中で、慎ちゃんが気になる言葉を残していった。
「昨日の夜、桂さん…すごい心配してたっスよ。だから、頑張って下さいっス」
…イミわかんないし。
心配→頑張れって話がつながってないじゃん。。。
「え…?それ、どういう意味……」
聞き返そうとしたら、強引に。迫力のある笑顔を浮かべた桂さんに遮られ……。明らかに「しまった!!」という顔をした慎ちゃんが、脱兎のごとく逃げていく。
……嫌な予感……(汗)
彼らを見送ってわたしも一度自分の部屋に戻ろうとした、その時。
その笑顔そのままで、桂さんに呼び止められて。…わたしは、桂さんに促されるまま歩いていき……高杉さんのもとまで案内された。
「よぉ!調子はどうだ?」
と…いつもの調子の高杉さん。
一瞬で、昨夜の高杉さんを思い出す。助けに、来てくれたんだよね…。この人。
何の義理もないはずの、まだ出会って何日かの、わたしを。
そう思ったら、なんだか急に恥ずかしくなって。わたしは慌てて高杉さんから視線を逸らした。
その時、横から桂さんが座るように促してきたので、なんとなく正座をして桂さんを見つめる。
……桂さんもわたしを真っ直ぐに見つめてて、しばし、沈黙。
…うぅ…慎ちゃんの言葉が妙に気になる。。。な、なんだろう。この沈黙は……。
「昨日、一人で外を出歩いていたそうだね」
沈黙の割に軽く、笑顔で尋ねられて。わたしもそれにつられて簡単に口を開いた。
高杉さんを待っていて、退屈だったから外に出てしまったこと。
それから……イロイロ、あったこと。
わたしから話を聞いていくにつれ、桂さんの雰囲気が変わっていくのがわかって、かなり、怖い。
そうだ…。探しにきてくれた高杉さんとは別に、桂さんもすごく心配してくれてたのだと。慎ちゃんが言ってた。
「ここは君が思っているよりも危険なんだ」「君の格好は人目を引く」(だったら服くらい用意してくださいよ…)「夜中に知らぬ男に声をかけるとは滑稽極まりない」「晋作が現れなかったら、命を落としていたかもしれないんだよ?」
桂さんが言う一言一言が、とても重くて。わたしは、俯くことしか出来なかった。
……当たり前だ。だからこんなのは、言われて当然で。
でも、わたしだって、そんなに危険だなんて思ってなくて…だから。
「あー!もうそれくらいにしてやれよ!どう見たって、反省してるじゃないか」
高杉さんが横から助け舟を出してくれるものの、桂さんは余計に強い口調で続ける。
今度は高杉さんが、わたしにはここに関する知識がないことや、土地勘がないことを知っていてなんで放置したのか…とか怒られてる……。
うぅ…、ごめんね…高杉さん……。
が、しかし。そこはさすがの高杉さん(?)突然立ち上がり「あ!そうだっ!!」と叫ぶ。
「何かあっても身を守れるように、こいつと剣の稽古をする約束をしていたんだ!」
え…!?初耳。
戸惑うわたしを尻目に、がしっと腕を掴んで高杉さんが廊下に飛び出した。
…ごめんなさーいっ!!!!桂さぁん!!!!
わたしは、心の中だけで全力で謝っておいた。
「あのままじゃ、日が暮れちまうとこだった!」
廊下に出るなり、高杉さんが快活に笑う。
「これ後で、余計に怒られませんか?」
「そうなったら、その時に考える!!」
…なんて、行き当たりばったりな…(汗)
でもそう返すと、じゃあ説教と庭で素振りとどっちが良かったんだ?と素で問い返された。
……そ、そんなの、……素振りの方が…まだイイ(苦笑)
しぶしぶそう答えると、高杉さんがにんまり笑う。
「お前は、いつも俺と一緒に居たいんだもんな?」
「そっ!そんなこと言ってませんっ!」
いきなりの高杉さんの攻撃に、顔が一気に赤くなるのが自分でもわかった。
「どうした?顔が赤いぞ?風邪でもひいたか」
……こっ……この人っ……!!!
「無理するな!今すぐ安静にして寝ないとな!もちろん、俺が添い寝してやるぞ!」
わかっててやってる!!!!
絶ぇっ対わかっててからかわれてる!!!!
「…!竹刀取ってきますっ!」
そう言い、わたしは顔を背けて大股で部屋に向かう。
「あんま、無理すんなよーっ!」
後ろから、ひょうひょうとした声をかけられて。悔しかったから「してませんっ!」と返しておく。
少し歩いてから、まだ熱い頬に手をあてた。
高杉さんにとってはからかってるだけのつもりでも。こんな風にドキドキさせられてたらこっちの身がもたないよ……。
こっそり、わたしは溜息をついた。
竹刀を取って庭に行くと、そこではもう高杉さんが素振りをしていて。
……なんだろ、昨日も思ったけど高杉さんって…構えとかそういうのすごくキレー。形がすごく決まってて、思わず目を奪われる。
素直にそう思って褒めたら。
「惚れ直したか?」
いつもの笑顔でそんな風に言ってくる。……いつもいつもやられてると思ったら大間違いよっ!?
「惚れ直したというより……ちょっと、悔しくなりました」
「悔しくなった!?なんでだ?」
高杉さんは心底不思議そうに聞き返す。
…そりゃあ。わたしだって結構小さな頃から剣道やってきてるワケだし。それは、好きだったからで。
それを、自分より形がきれいな人を見たりすれば羨ましいし、悔しい。
「もっともっと、上達したいって思うんです」
言って、笑うと高杉さんも笑ってくれる。
「うん。さすがオレが惚れた女だ!!オレは今、無性に嬉しいぞ!」
あぁ…。ほんと、高杉さんの好みがよくわからない…!始終こんなこと言ってるけど、本気なのかなぁ……(苦笑)
「さてと。素振り始めるか」
だって、さっきそんなこと言ったと思ったら、何事もなかったかのように素振りさせますからね。。。
まぁ、いいんですけどね。。。
……いい先生がそばにいれば、わたしももう少し上達できるかもしれない。
そんなわけで、しばらく高杉さんと素振りをしていたら……不意に、さっきの高杉さんと桂さんとのやりとりを思い出した。
…気になりだしたら止まらなくて。素振りをしながら問い掛ける。
あんな感じで話を中断しても良かったのか。こう…二人の仲的に…とか~。
だけど、高杉さんはいつものように笑い飛ばして「絶対大丈夫だ!」と言う。
…絶対の根拠って、なんなんだろう……?そう問えば、高杉さんから意外な問いが返ってきた。
「なぁ、オレと小五郎って、似ていると思うか?」
高杉さんと……桂さん???
素振りを止めて、考えてみる。ん~……そうだなぁ。
「似てるかも」
「ほぉ!似てると言われたのは、初めてだ!」
「そうなんですか?」
聞くと、うんうんと高杉さんが頷く。
「だが、どこが似てる?」
どこ……。どこ、かぁ。どこかって言われると困るけど。
見た目も雰囲気も全然違うし、一見正反対くらいに見えちゃいそうだけど。
だけど、なんだろう。
「同じ感じがするんです。ん~。空気っていうのかな?向かっている方向って言うか…」
なんか、うまく表わせない。上手い言葉が浮かばないっ!
伝わってるのかなぁ…と思って高杉さんを見上げると照れたように笑う彼がいた。
「向かっている方向か……。なんだか嬉しいもんだな!そんな風に言われるのは」
本当に、嬉しそう。こっちも嬉しくなるような笑顔。
「思ったことを言っただけですよ?」
「時に、お前にはそう言った相手はいないのか?」(禁句だろ~~!高杉さん!!!)
たぶん、なんの気なくかけられた高杉さんの言葉に、自分でも身体が凍りつくのがわかった。
真っ先に浮かんだのは、カナちゃん。……どうしてるんだろう……。きっと、心配してるよね……。クラスでも、部活でも。いつも一緒で一番仲良かったカナちゃん。
……今まで思い出さなかったのが不思議なくらいだ……。
や、思い出したくなかっただけ、なのかも知れないけど。
思い出し始めたらどんどん悲しくなって、わたしは高杉さんに答えることも出来ずに俯くしかできなかった。
そんなわたしに気付いて、慌てて高杉さんがフォローしてくれる。
「悩む暇があるなら、解決の為に動け!動いてから悩め!」
オレは、お前の笑った顔が好きだから。
そんな風に。
これは高杉さんなりに、一所懸命励ましてくれてるんだよね…。ん。あんまり心配かけちゃ、ダメだ!
「あの、高杉さん…ありが…」
「よーし、こういう時は風呂だ!!」
「は!?」
ナニ??この唐突な展開!?
「風呂に入って悩みも汗も全部流せ!さあ、一緒に入るぞ!!」
「は、入りません!!」
お礼言おうと思ったのに…!そんな間もなくツッコむ羽目になって。いつもの調子でそう返すと、高杉さんがニヤリと笑った。
「よーし、いつものおまえらしい調子がでてきたな?いつもそれでいろ!」
「あ…」
確かに……そう、かも??
すごく複雑な気分でいると、その間に高杉さんは「誰か、風呂の用意をしろーっ!」とか叫びながら、一人で行ってしまった。
そんな彼の背を見送って。思う。
高杉さんはスゴい人だなぁ……わたしなんかいつも振り回されてばっかりで、付き合うのには相当なパワーが必要そうだ。
そう考えてふっと笑ったわたしに、後ろから声がかかる。
振り返ると、立っていたのは桂さんで。
反射的にさっきの一件を謝ろうとしたわたしを遮って桂さんは微笑んだ。そして、そのままわたしに向かって手を差し出す。……その手のひらに、小さな笛のようなものがあった。
「これ…?」
「もう、昨夜のようなことはないと思いますが…もしもの時はこれをお使いなさい」
そうして、笛をわたしに渡してくれる。
「言ってしまうとね、これは晋作が用意させたのだよ」
「え?」
「幾分、ふざけているように見えたりも、するかもしれないけどね。晋作はああ見えて、とても思慮深い男なんだ。先々のことを、常に考えているんだよ」(とか言ってわたしに渡すってことは、先々にこれを使わないといけないような、ピンチイベントが転がってると…(苦笑))
え?…あれ?さっきは桂さん、高杉さんに考えが足りないとかイロイロ…怒ってたのに。
え???なんで?頭が混乱してくる。。。
そんなわたしには構わず、桂さんは紐を通して首からさげておくように、と伝えて去っていった。
……なんだか、不思議な関係。高杉さんと、桂さんって。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
晋作は、部屋で一人考え込んでいた。思い浮かぶのは、さっきの少女の悲しげなカオ。
突然たった一人で、過去に放り出された少女。不安にならない方がどうかしている。
……泣き出しそうなカオに。そんなカオをさせたことに、心が痛んだ。
今、自分に出来ることはなんなのか。
彼女の言う寺を探して帰してやればいいのだろうか。
…きっと。
帰る方法が見つかれば喜ぶだろう。
寺を見つけて。……あいつを、帰す……?
思い至った結論に、異を唱える自分を。晋作はもう十分自覚している。
帰したくないと。離したくないと。どこかで思う自分がいるのは、紛れもない事実だ。
けれど、帰したくないと自分勝手に願うなら。救わなければならないモノがある。
(過去に、たった一人。……その寂しさを、オレが埋めてやれるのか?)
出会って数日。縁もゆかりもない男。いきなり親兄弟の代わりになれるハズもない。
どうすれば……あの。
向日葵のような明るい笑顔を、守ることができるのだろう……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「よし!できた!」
わたしは、さっきの笛の穴に紐を通して、自分の首にかけた。
…高杉さんが、わたしのために用意してくれた笛。なんだか、お守りみたいで嬉しい。
小さな笛を、手のひらでぎゅっと握り締める。
……それだけで、なんだか安心できるような気がした。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
と、言うわけで。四話でしたぁ!
晋作さんが既にわりかし本気なトコに若干の違和感を覚えなくもないですが~。まぁ、花を連発している今の主人公ちゃんなら、多少納得???
もうちょっと、高杉さんが主人公を気にする理由のエピソードを入れてれば良かったと思いますけどね~♪
つぅか、現段階でこんな甘いのに……この先どうなるんだろ。まだ十日くらいあるんだよ???そして、その頃までこのレヴューを続けられるのか!!!
うやぁ…。極限への挑戦やね~(爆)
今日の選択肢vv
す、素振りです(花)
ちょっと悔しくなりました(花)
似てるかも(花)
ぱーへくと☆(笑)
幕恋 『高杉晋作 第参話』
2009年12月3日 携帯アプリ翌日。
朝っぱらからやってきた高杉さんは、わたしのスクバの中身を物色中。
「きゃー!!ダメダメ!それ、下着なんだから!」(スクバに下着?合宿に来たならちゃんと別に色々持ってきただろう?大した期間じゃなかったんだっけ??)
かなり珍しいモノ好きであるらしい…のだが。
そう思うわたしの前で、急に高杉さんが静かになる。何かと思って見ると、わたしの竹刀を手に取ってマジマジと見つめていた。
最初はこれはわたしのものだとか、そんなことを話していて。実家が剣道の道場だから小さな頃から竹刀を持っている……なんてことを言ったら「ますます気に入った!」なんて言われて、困ってたんだけど。
ふと、真面目な表情に戻って高杉さんが呟く。
「未来は、女も剣を持たねばならないほど、荒れた世になってしまっているのか……」
しまったっ!!!!そう来るのかッ(笑)
どうやら多大な誤解を与えた様子っ!!!
慌てて、未来の日本は安全でとりあえず戦争もなく、誰も武器を持ち歩いていない!と説明すると、
「そうか。そうなのか。よかったなぁ……」
と、また子供のようなキラキラした笑顔で笑った。
「高杉さん、嬉しそうですね」
「当たり前だ!オレ達が今、こうやって戦っているのは、誰のためでもない。未来の日本のためなんだからな!」
皆がいつも安心して、笑っていられればいい。ただそれだけだ。
笑ってそう言う、高杉さんの顔は晴れやかで。
日頃は思わないわたし達の未来の生活が……確かにこの人達の手で拓かれたものなのだ、と少しだけ思って。
高杉さんをステキな人だ、と、ちょっとだけ、思った。
その後、寺田屋へ行くと言う高杉さんにわたしもついていくことにした。
以蔵のことも気になるし。龍馬さんもいるわけだし。
たどり着いたら、龍馬さんはあの人好きのする笑顔で出迎えてくれる。
ちょっと前に出会ったばっかりなのに、不自由がないか、とか気遣ってくれて。本当、いい人~♪
ま、対する以蔵は例のあの調子でそっけないワケですが。
「なんでお前が、ここにいるんだ」
とか言った以蔵をたしなめてくれる龍馬さん。…やっぱりいい人(笑)
それに、高杉さんも昨日の高杉さんたちの以蔵への応援は、わたしが言ったからなんだと口を挟んで助勢してくれる。
そんなこんなで高杉さんに褒めちぎられ、ちょっと照れてぼーっとしてるところに彼の嬉しそうな声が聞こえて現実に引き戻される。
「なにしろこいつは、オレ様の女だからな!」
「なっ!何を言い出すんですか!」(人を惚れっぽい女のようにっ!)
「照れのうてもいいぜよ」←龍馬(照れてないっ!てか、受け入れないでーーー!!!まだ出会ったばっかじゃん~!!!)
「……」←以蔵(ああっ!一番まともな反応!?けど、無言も怖い…(泣))
違うと反論しようにも「こう見えて、奥ゆかしいところもあってな!まぁ、聞き流してやってくれ」とか、どんどん自分の都合のいいように事実を捻じ曲げる高杉さん。
しかも、そこでいきなり話の方向転換が(苦笑)
恐らく今日ここへ来たことの本題であろう話を不意に切り出す高杉さんに、わたしももうこれ以上何も言えなくて。
……酷い誤解をそのままに、泣き寝入り。
「いい加減、坂本の冗談にも飽きたんだがなぁ」
「冗談?」←龍馬
「幕府が朝廷に、政治権を返したりするものか。よしんば、それが叶ったとしても、だ。慶喜公が、実権まで手放す筈がない!朝廷が蝕まれるだけじゃないのか!?」(スミマセン、史実とか詳しくないんで(笑)そのまんま抜粋)
いきなり繰り広げられるお話に、ポカーンとしていたわたしに気を遣って…なのか、聞かれたくない話だから、なのか二人は寺田屋の奥で会合をすることにして、わたしは縁側で日向ぼっこをして高杉さんを待つことに。
「ちゃんと大人しく待っているんだぞ?」
「大人しくって、子供じゃありませんから!」
「ははははは!そんなことは、わかってる!そもそも、オレはガキを口説く趣味はない!」
……サラっとカッコイイこと言いやがって~~~(笑)
そう言うなり高杉さんが奥の部屋へ消えていく。
しかし、わたしは自分で思っているよりも、もっとずっと子供だったらしい。
待ちくたびれたわたしは、退屈を紛らわす為にちょっとだけ外に出てみることに……(汗)
状況もわからず歩いていた今までと違って、とりあえず過去に来た(かもしれない)と思って歩いてみると、元の京都とは全然違う場所なのだと実感する。
そんなことを考えて歩いていると、ふいに後ろから声をかけられて…振り返った。
立っていたのは男の人、二人組で。(土方さんと沖田さんです~vvv)
わたしをじっくり見て「珍妙、珍妙」と連呼。(なんて失礼な。影で言いなさいよ(ぇ))
声をかけたのは(主人公は知りませんが)沖田さんで。
格好が珍しすぎたのでわざわざ声をかけてみたらしい。そんでもって、声をかけた割に二人で会話が成立してて、敵なら誰であれ斬る!とか言ってる土方さん達が恐ろしすぎて逃げ出すわたし。(イヤ、フツーに怪しいよ、この人たち(笑)そりゃ、制服着てるわたしの方がこの世界では怪しいんでしょうけども!!!)
しかし、それがマズかった……。
気がつけばすっかり暗くなる辺りと、すっかり迷子になるわたし……。
時間で言えば、そんなに遅くない時間帯だと思うけど通りには誰の姿も見えなくなっている。
不意に、大人しく待っているんだぞ?と、言った高杉さんの顔が脳裏をよぎる。
言うとおりにしておけば良かったな…とも思うけど、もう後の祭りだし。こんなに真っ暗だし。そもそも一昨日たまたま出会って、たまたま家に泊めただけの通りすがりの人間だし。
誰も探しになんて来てくれないよね……。
ここに来た瞬間から一人だったハズなのに、今、本当にそれを痛感して。
本当に悲しくなって涙が出そうになった。
と、前方からこっちに向かってやってくる、2つの人影。
よっし!これで道が聞ける!!!高杉さんのところへ戻れる!!!
そんな思いで二人組に声をかける……んだけど、今日はどうも二人組との相性が最悪の日だったらしい……。
道を聞いた瞬間に、声をかける相手を間違ったことに気付く。
返ってくる呂律のまわらない言葉と、香るお酒の匂い。
「やっぱりいいですっ!」
言って逃げ出すも、一人に腕を掴まれる。
イヤ~~~~!!!!ちょっと待ってナニ、このベタな展開~~~ッ(爆)
しかしそこは死に物狂い!わたしは腕を振り払って逃げ出した。
ピッチピッチの運動部所属女子高生と、酒喰らってる男だぞ!?そんなもんこっちが……!
ってコケたーーーッ!?(泣)(そんなどんくささに、自分との共通点を見出したくなかった……)
そして訪れる最大のピンチ。
助けて、なんて言って叫べる名前なんてわたしには限られてる、けど。
「…た…っ!高杉さーーんっ!!!」
そんな中で無意識に呼んだのは高杉さんで。言葉とほとんど同時にわたしに迫っていた男たちが怯む声が聞こえた。
そぉっと閉じていた目を開くとそこには。
「よぉ、待たせたな!」
月の光を背に、不敵に微笑う高杉さんが、いた。
ステレオタイプの悪役なのか(禁句)お約束の「誰だ、手前ぇは!!」とか言っちゃう相手に、高杉さんはニヤリと笑って口を開く。
「知らざあ言って聞かせやしょう。浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の…」
あぁ、これ、この間高杉さんが藩邸でやってた歌舞伎の……。
気が動転してるのか、この状況にそぐわないことに思い至ったわたし。……と、高杉さんの前で男が吠える。
「ふざけてんのか、手前ぇ!!」
「ふざけてるのは、お前らの方だろうがっ!!」
さぞや相手方もびっくりしたでしょう…。気持ちよさそうに口上してた高杉さんの空気が一瞬にして冷たく変わって、怒鳴られて。
「このオレの女を追いまわしやがって、ただで済むと、思うなよ!!」
刀を抜いて、ビッと相手に向かって構えた。
相手は酒に酔った男…ではあったけど。それなりに使えるほうだったらしい。高杉さんの構えを見て、剣術に長けた人間だと気付いて慌ててる。
「遅いっ!!後悔は、あの世でしやがれっ!!」
高杉さんの言葉と殺気に、本気を感じる。これは……ヤバ…い!?
「ダメーっ!!」
わたしは、刀を振り下ろそうとした高杉さんに思い切りしがみついた。
「高杉さん!!斬っちゃダメっ!!」(女子高生にナニ見せるですかーーーッ!!!)
「なんだ!何故止める!」
「そんなことしたらダメっ!」(うなされる!!(泣))
「バカ野郎!!お前のためだろうが!!」
「でもっ」
そんな押し問答をわたしと高杉さんで繰り広げるうちに、相手を『高杉晋作』だと知った男たちが逃げ出した。……それはもぉ、すっごい速さで。
襲われた状況を回避したこと、高杉さんが来てくれたこと、誰も怪我をしなかったこと……色んなイミでほっとして、わたしの目に涙が滲む。
「おい、大丈夫だったか?」
今はもう、いつものように。高杉さんがそう聞いてくる。
「あ、あまり無茶しないで下さい!」
「無茶?オレがいつ無茶をしたんだ?」
特に相手の命を奪うつもりでもなかったし、何が無茶なんだ…?とか首をひねってた高杉さんが、不意ににやぁっと笑う。
「なんだ、オレのことがそんなに心配だったのか!そうならそうと、言えばいい!」
…なんて都合のいい解釈ばっかりできる頭なんだ……(苦笑)
そうも思ったけど、確かにその要素もなくはなかったのであえて何も言わずに。
わたし達は夜の大通りを歩き始めた。
いつか、わたしの肩に高杉さんの腕が回り、身体を引き寄せられる。
高杉さんは歩きながら。戸惑うわたしを見ることもなく、言う。
「いいか?だから、オレの側にいつも居ろ」
「はい……だけど……」
「ん?なんだ?」
「どうしてわたしがいる場所が、わかったんですか?」
素朴な疑問に、高杉さんは大笑いする。
「惚れた女の居場所くらい、わからなくてどうする。それにな……」(キュンv)
「それに?」
「お前を最初に襲うのは、このオレ様だ!!」(あぁ。さっきちょっと感動して損した(笑))
「なっ!!」
「いいか?お前は誰にもやらんぞ!」
言って笑いながら、わたしの肩をバンバン叩く高杉さん。
……惚れさせてやるとか言うわりに、ふざけてばかりなんだから!
と。
そこで、気付いた。わたしに触れる、高杉さんの腕と。身体。
まだ少し肌寒い夜、なのに。
彼の身体が熱くて。そして、汗ばんでいる。
「ん?どうした?」
「…うぅん。なんでもないです」
「なんだ、おかしな奴だな」
そう言って真っ直ぐ前を見つめる高杉さんの横顔をそっと、盗み見る。
高杉さんは「惚れた女の居場所なんて」とか、冗談のように言ったけど。
ひょっとして、すごく走って、一所懸命に探してくれたのかもしれない……。
そう思い至って、なんだか申し訳ないような、嬉しいような。
そんな複雑な気持ちを抱えている自分に気付いた……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ハイ。
そんな甘酸っぱい感じで、第参話終了です。
こんだけ長いストーリー書いてたら、莫大な時間がかかって大変です。暇な時しか出来ないですね…(苦笑)
ちょっと今回、小説風味にしてるワケなんですけど(時々端折って、時々捏造してますけど)、コレって大丈夫なんだろうか…。色々と。いや、さわりがあればソッコー削除しますんで、こっそりコメントへ…(低姿勢)
高杉さん、超カッコ可愛いんですけど~~~!!!ギャップに萌えるんですけど~!!
子供←→大人とか、笑顔←→真剣とかv振り幅大きくてキュンキュンするッ!
正直、赤い糸診断だけを頼りにやってましたけど(そうじゃなかったら、好みは意外と武市さんでした(爆))、それ以上にイイ…(泣)
スゴいよ『幕恋』
スゴいけど、……これ、ホントに二週間ほど書けるの?あたし…(苦悩)
今日の選択肢
子供じゃありませんから(花)
無茶しないでください(多分、「来るのが遅いです」が花)
朝っぱらからやってきた高杉さんは、わたしのスクバの中身を物色中。
「きゃー!!ダメダメ!それ、下着なんだから!」(スクバに下着?合宿に来たならちゃんと別に色々持ってきただろう?大した期間じゃなかったんだっけ??)
かなり珍しいモノ好きであるらしい…のだが。
そう思うわたしの前で、急に高杉さんが静かになる。何かと思って見ると、わたしの竹刀を手に取ってマジマジと見つめていた。
最初はこれはわたしのものだとか、そんなことを話していて。実家が剣道の道場だから小さな頃から竹刀を持っている……なんてことを言ったら「ますます気に入った!」なんて言われて、困ってたんだけど。
ふと、真面目な表情に戻って高杉さんが呟く。
「未来は、女も剣を持たねばならないほど、荒れた世になってしまっているのか……」
しまったっ!!!!そう来るのかッ(笑)
どうやら多大な誤解を与えた様子っ!!!
慌てて、未来の日本は安全でとりあえず戦争もなく、誰も武器を持ち歩いていない!と説明すると、
「そうか。そうなのか。よかったなぁ……」
と、また子供のようなキラキラした笑顔で笑った。
「高杉さん、嬉しそうですね」
「当たり前だ!オレ達が今、こうやって戦っているのは、誰のためでもない。未来の日本のためなんだからな!」
皆がいつも安心して、笑っていられればいい。ただそれだけだ。
笑ってそう言う、高杉さんの顔は晴れやかで。
日頃は思わないわたし達の未来の生活が……確かにこの人達の手で拓かれたものなのだ、と少しだけ思って。
高杉さんをステキな人だ、と、ちょっとだけ、思った。
その後、寺田屋へ行くと言う高杉さんにわたしもついていくことにした。
以蔵のことも気になるし。龍馬さんもいるわけだし。
たどり着いたら、龍馬さんはあの人好きのする笑顔で出迎えてくれる。
ちょっと前に出会ったばっかりなのに、不自由がないか、とか気遣ってくれて。本当、いい人~♪
ま、対する以蔵は例のあの調子でそっけないワケですが。
「なんでお前が、ここにいるんだ」
とか言った以蔵をたしなめてくれる龍馬さん。…やっぱりいい人(笑)
それに、高杉さんも昨日の高杉さんたちの以蔵への応援は、わたしが言ったからなんだと口を挟んで助勢してくれる。
そんなこんなで高杉さんに褒めちぎられ、ちょっと照れてぼーっとしてるところに彼の嬉しそうな声が聞こえて現実に引き戻される。
「なにしろこいつは、オレ様の女だからな!」
「なっ!何を言い出すんですか!」(人を惚れっぽい女のようにっ!)
「照れのうてもいいぜよ」←龍馬(照れてないっ!てか、受け入れないでーーー!!!まだ出会ったばっかじゃん~!!!)
「……」←以蔵(ああっ!一番まともな反応!?けど、無言も怖い…(泣))
違うと反論しようにも「こう見えて、奥ゆかしいところもあってな!まぁ、聞き流してやってくれ」とか、どんどん自分の都合のいいように事実を捻じ曲げる高杉さん。
しかも、そこでいきなり話の方向転換が(苦笑)
恐らく今日ここへ来たことの本題であろう話を不意に切り出す高杉さんに、わたしももうこれ以上何も言えなくて。
……酷い誤解をそのままに、泣き寝入り。
「いい加減、坂本の冗談にも飽きたんだがなぁ」
「冗談?」←龍馬
「幕府が朝廷に、政治権を返したりするものか。よしんば、それが叶ったとしても、だ。慶喜公が、実権まで手放す筈がない!朝廷が蝕まれるだけじゃないのか!?」(スミマセン、史実とか詳しくないんで(笑)そのまんま抜粋)
いきなり繰り広げられるお話に、ポカーンとしていたわたしに気を遣って…なのか、聞かれたくない話だから、なのか二人は寺田屋の奥で会合をすることにして、わたしは縁側で日向ぼっこをして高杉さんを待つことに。
「ちゃんと大人しく待っているんだぞ?」
「大人しくって、子供じゃありませんから!」
「ははははは!そんなことは、わかってる!そもそも、オレはガキを口説く趣味はない!」
……サラっとカッコイイこと言いやがって~~~(笑)
そう言うなり高杉さんが奥の部屋へ消えていく。
しかし、わたしは自分で思っているよりも、もっとずっと子供だったらしい。
待ちくたびれたわたしは、退屈を紛らわす為にちょっとだけ外に出てみることに……(汗)
状況もわからず歩いていた今までと違って、とりあえず過去に来た(かもしれない)と思って歩いてみると、元の京都とは全然違う場所なのだと実感する。
そんなことを考えて歩いていると、ふいに後ろから声をかけられて…振り返った。
立っていたのは男の人、二人組で。(土方さんと沖田さんです~vvv)
わたしをじっくり見て「珍妙、珍妙」と連呼。(なんて失礼な。影で言いなさいよ(ぇ))
声をかけたのは(主人公は知りませんが)沖田さんで。
格好が珍しすぎたのでわざわざ声をかけてみたらしい。そんでもって、声をかけた割に二人で会話が成立してて、敵なら誰であれ斬る!とか言ってる土方さん達が恐ろしすぎて逃げ出すわたし。(イヤ、フツーに怪しいよ、この人たち(笑)そりゃ、制服着てるわたしの方がこの世界では怪しいんでしょうけども!!!)
しかし、それがマズかった……。
気がつけばすっかり暗くなる辺りと、すっかり迷子になるわたし……。
時間で言えば、そんなに遅くない時間帯だと思うけど通りには誰の姿も見えなくなっている。
不意に、大人しく待っているんだぞ?と、言った高杉さんの顔が脳裏をよぎる。
言うとおりにしておけば良かったな…とも思うけど、もう後の祭りだし。こんなに真っ暗だし。そもそも一昨日たまたま出会って、たまたま家に泊めただけの通りすがりの人間だし。
誰も探しになんて来てくれないよね……。
ここに来た瞬間から一人だったハズなのに、今、本当にそれを痛感して。
本当に悲しくなって涙が出そうになった。
と、前方からこっちに向かってやってくる、2つの人影。
よっし!これで道が聞ける!!!高杉さんのところへ戻れる!!!
そんな思いで二人組に声をかける……んだけど、今日はどうも二人組との相性が最悪の日だったらしい……。
道を聞いた瞬間に、声をかける相手を間違ったことに気付く。
返ってくる呂律のまわらない言葉と、香るお酒の匂い。
「やっぱりいいですっ!」
言って逃げ出すも、一人に腕を掴まれる。
イヤ~~~~!!!!ちょっと待ってナニ、このベタな展開~~~ッ(爆)
しかしそこは死に物狂い!わたしは腕を振り払って逃げ出した。
ピッチピッチの運動部所属女子高生と、酒喰らってる男だぞ!?そんなもんこっちが……!
ってコケたーーーッ!?(泣)(そんなどんくささに、自分との共通点を見出したくなかった……)
そして訪れる最大のピンチ。
助けて、なんて言って叫べる名前なんてわたしには限られてる、けど。
「…た…っ!高杉さーーんっ!!!」
そんな中で無意識に呼んだのは高杉さんで。言葉とほとんど同時にわたしに迫っていた男たちが怯む声が聞こえた。
そぉっと閉じていた目を開くとそこには。
「よぉ、待たせたな!」
月の光を背に、不敵に微笑う高杉さんが、いた。
ステレオタイプの悪役なのか(禁句)お約束の「誰だ、手前ぇは!!」とか言っちゃう相手に、高杉さんはニヤリと笑って口を開く。
「知らざあ言って聞かせやしょう。浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の…」
あぁ、これ、この間高杉さんが藩邸でやってた歌舞伎の……。
気が動転してるのか、この状況にそぐわないことに思い至ったわたし。……と、高杉さんの前で男が吠える。
「ふざけてんのか、手前ぇ!!」
「ふざけてるのは、お前らの方だろうがっ!!」
さぞや相手方もびっくりしたでしょう…。気持ちよさそうに口上してた高杉さんの空気が一瞬にして冷たく変わって、怒鳴られて。
「このオレの女を追いまわしやがって、ただで済むと、思うなよ!!」
刀を抜いて、ビッと相手に向かって構えた。
相手は酒に酔った男…ではあったけど。それなりに使えるほうだったらしい。高杉さんの構えを見て、剣術に長けた人間だと気付いて慌ててる。
「遅いっ!!後悔は、あの世でしやがれっ!!」
高杉さんの言葉と殺気に、本気を感じる。これは……ヤバ…い!?
「ダメーっ!!」
わたしは、刀を振り下ろそうとした高杉さんに思い切りしがみついた。
「高杉さん!!斬っちゃダメっ!!」(女子高生にナニ見せるですかーーーッ!!!)
「なんだ!何故止める!」
「そんなことしたらダメっ!」(うなされる!!(泣))
「バカ野郎!!お前のためだろうが!!」
「でもっ」
そんな押し問答をわたしと高杉さんで繰り広げるうちに、相手を『高杉晋作』だと知った男たちが逃げ出した。……それはもぉ、すっごい速さで。
襲われた状況を回避したこと、高杉さんが来てくれたこと、誰も怪我をしなかったこと……色んなイミでほっとして、わたしの目に涙が滲む。
「おい、大丈夫だったか?」
今はもう、いつものように。高杉さんがそう聞いてくる。
「あ、あまり無茶しないで下さい!」
「無茶?オレがいつ無茶をしたんだ?」
特に相手の命を奪うつもりでもなかったし、何が無茶なんだ…?とか首をひねってた高杉さんが、不意ににやぁっと笑う。
「なんだ、オレのことがそんなに心配だったのか!そうならそうと、言えばいい!」
…なんて都合のいい解釈ばっかりできる頭なんだ……(苦笑)
そうも思ったけど、確かにその要素もなくはなかったのであえて何も言わずに。
わたし達は夜の大通りを歩き始めた。
いつか、わたしの肩に高杉さんの腕が回り、身体を引き寄せられる。
高杉さんは歩きながら。戸惑うわたしを見ることもなく、言う。
「いいか?だから、オレの側にいつも居ろ」
「はい……だけど……」
「ん?なんだ?」
「どうしてわたしがいる場所が、わかったんですか?」
素朴な疑問に、高杉さんは大笑いする。
「惚れた女の居場所くらい、わからなくてどうする。それにな……」(キュンv)
「それに?」
「お前を最初に襲うのは、このオレ様だ!!」(あぁ。さっきちょっと感動して損した(笑))
「なっ!!」
「いいか?お前は誰にもやらんぞ!」
言って笑いながら、わたしの肩をバンバン叩く高杉さん。
……惚れさせてやるとか言うわりに、ふざけてばかりなんだから!
と。
そこで、気付いた。わたしに触れる、高杉さんの腕と。身体。
まだ少し肌寒い夜、なのに。
彼の身体が熱くて。そして、汗ばんでいる。
「ん?どうした?」
「…うぅん。なんでもないです」
「なんだ、おかしな奴だな」
そう言って真っ直ぐ前を見つめる高杉さんの横顔をそっと、盗み見る。
高杉さんは「惚れた女の居場所なんて」とか、冗談のように言ったけど。
ひょっとして、すごく走って、一所懸命に探してくれたのかもしれない……。
そう思い至って、なんだか申し訳ないような、嬉しいような。
そんな複雑な気持ちを抱えている自分に気付いた……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ハイ。
そんな甘酸っぱい感じで、第参話終了です。
こんだけ長いストーリー書いてたら、莫大な時間がかかって大変です。暇な時しか出来ないですね…(苦笑)
ちょっと今回、小説風味にしてるワケなんですけど(時々端折って、時々捏造してますけど)、コレって大丈夫なんだろうか…。色々と。いや、さわりがあればソッコー削除しますんで、こっそりコメントへ…(低姿勢)
高杉さん、超カッコ可愛いんですけど~~~!!!ギャップに萌えるんですけど~!!
子供←→大人とか、笑顔←→真剣とかv振り幅大きくてキュンキュンするッ!
正直、赤い糸診断だけを頼りにやってましたけど(そうじゃなかったら、好みは意外と武市さんでした(爆))、それ以上にイイ…(泣)
スゴいよ『幕恋』
スゴいけど、……これ、ホントに二週間ほど書けるの?あたし…(苦悩)
今日の選択肢
子供じゃありませんから(花)
無茶しないでください(多分、「来るのが遅いです」が花)
幕末志士の恋愛事情 『高杉晋作 第弐話』
2009年12月2日 携帯アプリイタい子…と思われること承知で……っ!
一人称『わたし』でストーリーとか、所感とか書いてみようかナ☆と。
途中で主人公、主人公、連呼されると冷めるんだよね……(あたしだったら)
そんなこんなで。いきなり弐話レビューv(壱話はッ!!?(苦笑))
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
高杉さんは、とっても変わった人で。わたしのご飯を食べる姿をガン見してたり。
しかもそれが「未来の日本人も箸が使えるのか!?」な観察だったり。
来た当初にも携帯とかボールペンとか月に行けるのか!!とか興味津々だったもんね。すごく自由な(考えも)感じで子供のようだ…(笑)
しかし、着眼点が違うな~と感心もしたり。。。
自分が未来人を見ても箸が使えるかどうかなんて観察しない……っていうか、気付かないと思うわ。
さておき、朝から高杉さんに観察されながらの楽しいご飯(笑)を終えわたしはタイムスリップした元凶…と思われるお寺を探すことに。
出かけようとした瞬間、桂さんに遭遇。
高杉さんは会合が控えているのだ、と告げられてわたしは一人で出かけようとするんだけど。
「まさか、一人で行くなんて言うんじゃないだろうな!」
と、高杉さん。
…おおっ!?それはもちろん行くつもりさ~!他にやることもナイしね~!とか思っていると。
「小五郎!小難しい話は任せた!」
言うなりわたしの手をとり高杉さん脱走。(そしてわたし、共犯)
…ただ単に会合をフケたかっただけかと思いきや。それだけでもなく。あてもなく歩く道すがらの会話から。
「遺恨のある会談の場だからな。オレみたいなのがいると、余計にややこしくしちまう」
意外と考えていらっしゃる様子な発言。(失礼な。。。)
「小五郎や坂本だったら、相手の感情に火を灯すことなく、上手くやる!」
火に油を注ぐ高杉さん本人のことは置いといて(笑)桂さんに対する信頼も垣間見える素敵なシーンですねvv
そんな風に話していたら、急に高杉さんに口を塞がれて路地裏に連れ込まれました!!
これは乙女のぴ~んちッ!!!!?(笑)
とか思ってたら、以蔵を追ってた人の群れから身を隠しただけでしたv
昨日、大久保さんからわたしを微妙にかばってくれた以蔵が追われていたことから、彼を助けたいと望む(ただの一般人の)わたしは奮起!も……叶わず、高杉さんによって藩邸に強制送還~(笑)
しかぁし!!!それで大人しくしているわたしじゃありません!
自分で以蔵の危機を救いたい(知らせたい)わたしは、高杉さんの注意が自分から離れたのをいいことに藩邸を抜け出そうとするんだけど、その途中普段とは違う高杉さんの姿を垣間見たワケです。
以蔵確保のために配下を使い、的確に指示を出し、彼らと同じく危険な状況の武市と中岡をかくまう……という、さっきまでの子供みたいな一面からは想像できない親分っプリ。
…フツーにカッコイイ……。
考えなしな自分を反省して、自室(?)に戻るわたし。
しばらくしてそこに、夕飯を持って高杉さん登場☆
これがまた、主人公の前ではフツーに子供っぽく戻ってる辺りも可愛い~♪んだ!
「岡田は無事だ!見つけて、寺田屋に放り込んどいたぞ!」とかあっけらかんと言ってのける。
そんな彼に「わたし、高杉さんって何にも考えてない人かと思ってた」とか「以蔵のこと嫌いだから亡き者にしようとしてんじゃないの?」とか思ってました…とかぽろっとぶっちゃけてしまうわたし。(言い過ぎ)
なのに高杉さんは「言わなきゃわかんなかったことだろ!(ごもっとも)」とそれを笑い飛ばし、あまつさえ「オレはお前を、さらに気に入ったぞ!」とか言い出す始末…。
え……『さらに』って、どこからの比較デスカ。。。昨日会ったばっかなのに。。。
戸惑うわたしを尻目に、まだまだ高杉さんの暴走は続く…。
「決めた。今からお前は、オレの女だ!」
「え!イヤです!」(瞬殺)
「即答だな!おい!」
「あ…。つい……」
「はっはっはっ!そういう所も、いいじゃないか!」(妙な趣味を発揮するな!)
「突然そんなこと言われても信じられません!」(当たり前だ)
「突然でなけりゃあ、いいのか?」(そういう問題じゃない!)
「えーと、そういうワケじゃ、ないんですけど…」
「ならば、どうすれば信じる?」
「えっ、どうすればって……。えーと、えーと、その…」
悩む純真な女子高生のわたしに、畳み掛けるような高杉さんのセリフ。
「なーに、安心していろ!オレが必ず、お前を口説き落としてやる!」
ヒィ~~~ィ!!!!(泣)カッコイイッ!!!!!
堂々と言っちゃえるあたりがオトコマエッ!!!!
「だ、大体、わたしのどこが気に入ったんですか!」
と、至極当然な疑問をぶつけると「ここにいろ」と言ったのに岡田を助けに出ようとしたわたし(お約束ですが、バレてました)を非常に高く買っている様子の高杉さん。
「そういう思い切りのよさ、中々ないもんだぞ?」(世間では考えナシとも…)
「そ…そうでしょうか…」
「とにかく、以蔵を助けようとする真っ直ぐなお前の、心意気に惚れた!」(惚れっぽ!)
「…そんなこと言われても…」
「ははは!お前はそのままでいい!必ず、オレに惚れさせてやる!」
って、だからその自信は一体どこから……と、半ば呆れるわたしの前で、少しだけ高杉さんが真剣な目をした。
「いいか?だから……」
突然、高杉さんの顔がわたしの目の前にズイッと寄る。
「お前は、オレだけを見ていろ」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
撃沈
やぁ~……(遠い目)最後、ちょっと妄想で情景入れちゃったv(オイ)
なんというか、お蔭様でこの辺までプレイした瞬間に『幕恋』お試しじゃなくて、本会員にならなきゃ!という気分に(苦笑)
『執恋』と違って、うまく使ってますね!!!お試し期間(笑)あっちは物語が進まないとラブくならないのでこうは行かないだろうな~と思います。
…あ。あと、高杉さん以外の攻略キャラがどうなのか知らないけど。
個人的には沖田総司もか~な~り~気になってますけど!
土方との会話見てたら可愛くてたまらないッ!!!けど、とりあえず高杉さんの続きが気になる~~~ッ!!!!
今回の選択肢はこちらv
「鶏肉の方が好き?」(花)
「信じられません」(多分、「他に好きな人はいないんですか?」が花)
一人称『わたし』でストーリーとか、所感とか書いてみようかナ☆と。
途中で主人公、主人公、連呼されると冷めるんだよね……(あたしだったら)
そんなこんなで。いきなり弐話レビューv(壱話はッ!!?(苦笑))
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
高杉さんは、とっても変わった人で。わたしのご飯を食べる姿をガン見してたり。
しかもそれが「未来の日本人も箸が使えるのか!?」な観察だったり。
来た当初にも携帯とかボールペンとか月に行けるのか!!とか興味津々だったもんね。すごく自由な(考えも)感じで子供のようだ…(笑)
しかし、着眼点が違うな~と感心もしたり。。。
自分が未来人を見ても箸が使えるかどうかなんて観察しない……っていうか、気付かないと思うわ。
さておき、朝から高杉さんに観察されながらの楽しいご飯(笑)を終えわたしはタイムスリップした元凶…と思われるお寺を探すことに。
出かけようとした瞬間、桂さんに遭遇。
高杉さんは会合が控えているのだ、と告げられてわたしは一人で出かけようとするんだけど。
「まさか、一人で行くなんて言うんじゃないだろうな!」
と、高杉さん。
…おおっ!?それはもちろん行くつもりさ~!他にやることもナイしね~!とか思っていると。
「小五郎!小難しい話は任せた!」
言うなりわたしの手をとり高杉さん脱走。(そしてわたし、共犯)
…ただ単に会合をフケたかっただけかと思いきや。それだけでもなく。あてもなく歩く道すがらの会話から。
「遺恨のある会談の場だからな。オレみたいなのがいると、余計にややこしくしちまう」
意外と考えていらっしゃる様子な発言。(失礼な。。。)
「小五郎や坂本だったら、相手の感情に火を灯すことなく、上手くやる!」
火に油を注ぐ高杉さん本人のことは置いといて(笑)桂さんに対する信頼も垣間見える素敵なシーンですねvv
そんな風に話していたら、急に高杉さんに口を塞がれて路地裏に連れ込まれました!!
これは乙女のぴ~んちッ!!!!?(笑)
とか思ってたら、以蔵を追ってた人の群れから身を隠しただけでしたv
昨日、大久保さんからわたしを微妙にかばってくれた以蔵が追われていたことから、彼を助けたいと望む(ただの一般人の)わたしは奮起!も……叶わず、高杉さんによって藩邸に強制送還~(笑)
しかぁし!!!それで大人しくしているわたしじゃありません!
自分で以蔵の危機を救いたい(知らせたい)わたしは、高杉さんの注意が自分から離れたのをいいことに藩邸を抜け出そうとするんだけど、その途中普段とは違う高杉さんの姿を垣間見たワケです。
以蔵確保のために配下を使い、的確に指示を出し、彼らと同じく危険な状況の武市と中岡をかくまう……という、さっきまでの子供みたいな一面からは想像できない親分っプリ。
…フツーにカッコイイ……。
考えなしな自分を反省して、自室(?)に戻るわたし。
しばらくしてそこに、夕飯を持って高杉さん登場☆
これがまた、主人公の前ではフツーに子供っぽく戻ってる辺りも可愛い~♪んだ!
「岡田は無事だ!見つけて、寺田屋に放り込んどいたぞ!」とかあっけらかんと言ってのける。
そんな彼に「わたし、高杉さんって何にも考えてない人かと思ってた」とか「以蔵のこと嫌いだから亡き者にしようとしてんじゃないの?」とか思ってました…とかぽろっとぶっちゃけてしまうわたし。(言い過ぎ)
なのに高杉さんは「言わなきゃわかんなかったことだろ!(ごもっとも)」とそれを笑い飛ばし、あまつさえ「オレはお前を、さらに気に入ったぞ!」とか言い出す始末…。
え……『さらに』って、どこからの比較デスカ。。。昨日会ったばっかなのに。。。
戸惑うわたしを尻目に、まだまだ高杉さんの暴走は続く…。
「決めた。今からお前は、オレの女だ!」
「え!イヤです!」(瞬殺)
「即答だな!おい!」
「あ…。つい……」
「はっはっはっ!そういう所も、いいじゃないか!」(妙な趣味を発揮するな!)
「突然そんなこと言われても信じられません!」(当たり前だ)
「突然でなけりゃあ、いいのか?」(そういう問題じゃない!)
「えーと、そういうワケじゃ、ないんですけど…」
「ならば、どうすれば信じる?」
「えっ、どうすればって……。えーと、えーと、その…」
悩む純真な女子高生のわたしに、畳み掛けるような高杉さんのセリフ。
「なーに、安心していろ!オレが必ず、お前を口説き落としてやる!」
ヒィ~~~ィ!!!!(泣)カッコイイッ!!!!!
堂々と言っちゃえるあたりがオトコマエッ!!!!
「だ、大体、わたしのどこが気に入ったんですか!」
と、至極当然な疑問をぶつけると「ここにいろ」と言ったのに岡田を助けに出ようとしたわたし(お約束ですが、バレてました)を非常に高く買っている様子の高杉さん。
「そういう思い切りのよさ、中々ないもんだぞ?」(世間では考えナシとも…)
「そ…そうでしょうか…」
「とにかく、以蔵を助けようとする真っ直ぐなお前の、心意気に惚れた!」(惚れっぽ!)
「…そんなこと言われても…」
「ははは!お前はそのままでいい!必ず、オレに惚れさせてやる!」
って、だからその自信は一体どこから……と、半ば呆れるわたしの前で、少しだけ高杉さんが真剣な目をした。
「いいか?だから……」
突然、高杉さんの顔がわたしの目の前にズイッと寄る。
「お前は、オレだけを見ていろ」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
撃沈
やぁ~……(遠い目)最後、ちょっと妄想で情景入れちゃったv(オイ)
なんというか、お蔭様でこの辺までプレイした瞬間に『幕恋』お試しじゃなくて、本会員にならなきゃ!という気分に(苦笑)
『執恋』と違って、うまく使ってますね!!!お試し期間(笑)あっちは物語が進まないとラブくならないのでこうは行かないだろうな~と思います。
…あ。あと、高杉さん以外の攻略キャラがどうなのか知らないけど。
個人的には沖田総司もか~な~り~気になってますけど!
土方との会話見てたら可愛くてたまらないッ!!!けど、とりあえず高杉さんの続きが気になる~~~ッ!!!!
今回の選択肢はこちらv
「鶏肉の方が好き?」(花)
「信じられません」(多分、「他に好きな人はいないんですか?」が花)
携帯アプリについてv
2009年12月1日 携帯アプリここで初めて言及しますが(笑)最近、携帯アプリに手を出しました♪
やった事がない方のために説明すると、乙女ゲームを小分けにしてプレイ制限(1日1章とか…)つけられて、何日もかけてちまちま進めて攻略していく……というゲームです(笑)乙女ゲー以外にも色々あるのかもしれませんが。。。
初めてやったのは『執事たちの恋愛事情』ですv
……正直。正~っ直ッ!!!初めてやった時はちょっと…バカにしてました。。。
なんだろな。一日で進められる分量が少ないし。その割りに二週間で一人攻略できるような形で。
ソレは内容薄いだろ。とも思ったし。
携帯らしく、主人公の服とかアクセとか、お金を払って買うことで相手(キャラ)が好感を持ってくれるという利用者から金をむしりとろうとする意図がミエミエの作り。←この点に関しては今でも思ってます(笑)
…だったんですけど~~~~~っ。
結構やってると、その少量の分量がお手軽で…(毎日仕事上がりにご飯作った後、プレイして~みたいなリズムが(爆))かつ、イベントアプリとか割と楽しくて(苦笑)
意外とハマってる自分がいました…(チーン)
当初攻略した中岡さんが…結構良かったんですよね…。続く真壁さんも良かった☆
しかも、わりかし…イイ感じに少ない文字数の中で(今回の場合は執事との恋愛がメインなんで)執事のなんたるかとか、お嬢様と執事の関係性とか…まぁ勉強になることもあったりで。(ソレ、中岡さんじゃなくて山科さんとかだよね…(笑))
うん。
結構良かったんですvvv容量は少ないけども、なかなかヨイ。
……んですが、すっごく残念な事がッ!!!!(泣)
執事が万人受けしそうなタイプだけじゃない……!!!
まぁしょうがないですよね…。
好みのキャラだけだったらむしろ気持ち悪いでしょうし。
でもっ!でもッ!!!!!
お義兄さん…ッ!!!!!「どれ(誰)でも執事、やれるだろう!」的なキャスティングはどうかとッ!!!(笑)
しかも、彼らを攻略しないと大本命の山科さんを攻略できないという…ッ(号泣)
…イタいからくりにヤラれているワケなのです。。。
どうしよう…。真壁のバトラーEND終わったら契約を切ろうか悩み中(笑)←デートアプリ見たいがために頑張って真壁につれない態度を取り続け中!(そうだ…このシステムもどうよ!?ラブENDとバトラーEND(恋愛絡まないEND)両方見ないと執事とデートすら出来んッ!!!!ウマすぎるよ、スタイルウォーカーッ!!!)
そんなこんなで悩みつつも、結構面白い感じですv
執事に癒されたいアナタ、是非プレイなさってくださいませvvv
自分、日頃は…彼らと同じ方向に立ってる業種なんで…癒されてるやら学ばせていただいてるやら……(ぼそり)
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
実は最近新しいゲームが発表されまして(苦笑)
『幕末志士の恋愛事情』…と、いう。。。
こっちは最近お試しでプレイしてたんですが、結構…てか、かなりイイッ!!(笑)
『執恋』(上のゲームです)はキャラの好き嫌いがはっきりしてましたけど、これは嫌なキャラがイナイんです~~~~っ(笑)
なんてステキなのッ!!!!
唯一の難点といえば、主人公がおバカすぎる……ってコトだけ、カナ??(大問題)
あたしは別段『歴女』でもナイし。むしろ学校の日本史のテストの際には「あたしは過去は振り返らないッ!!!」と豪語してましたし(ヲイ)
そんなあたしでも…もし主人公と同じ立場になったとしたら……さすがに『坂本龍馬』『岡田以蔵』『大久保利通』『桂小五郎』『高杉晋作』あたりの名前を聞いたら……「ちょっとマズい感じにどっか昔に来ちゃったなぁ~」とか思うよッ!?(笑)
さすがに有名だよッ!!!この人たちッ!!!
その名前が引っかからない女子高生なんて、勉強してなさスギだよッ!!!(てか、勉強の問題でもない気が…)
コホン。そんなワケで、自分が過去に飛ばされたとも思わない女子高生が主人公で、そこだけはすごく引っかかるんですけど。
それを除けばお相手キャラは魅力満載な感じですvvv『執恋』からこっちにシフトしてもいいなぁ~♪
赤い糸診断によると、高杉晋作と相性が良さそうなんで(爆)彼から攻略したいなぁ~と思ってますv武市さんとか、大久保さんも好みなんですけどッ!
新撰組も攻略できる…!?かもしれないしvvv
今後、機会があったらちょこちょこケータイから攻略UPしたいですvv
やった事がない方のために説明すると、乙女ゲームを小分けにしてプレイ制限(1日1章とか…)つけられて、何日もかけてちまちま進めて攻略していく……というゲームです(笑)乙女ゲー以外にも色々あるのかもしれませんが。。。
初めてやったのは『執事たちの恋愛事情』ですv
……正直。正~っ直ッ!!!初めてやった時はちょっと…バカにしてました。。。
なんだろな。一日で進められる分量が少ないし。その割りに二週間で一人攻略できるような形で。
ソレは内容薄いだろ。とも思ったし。
携帯らしく、主人公の服とかアクセとか、お金を払って買うことで相手(キャラ)が好感を持ってくれるという利用者から金をむしりとろうとする意図がミエミエの作り。←この点に関しては今でも思ってます(笑)
…だったんですけど~~~~~っ。
結構やってると、その少量の分量がお手軽で…(毎日仕事上がりにご飯作った後、プレイして~みたいなリズムが(爆))かつ、イベントアプリとか割と楽しくて(苦笑)
意外とハマってる自分がいました…(チーン)
当初攻略した中岡さんが…結構良かったんですよね…。続く真壁さんも良かった☆
しかも、わりかし…イイ感じに少ない文字数の中で(今回の場合は執事との恋愛がメインなんで)執事のなんたるかとか、お嬢様と執事の関係性とか…まぁ勉強になることもあったりで。(ソレ、中岡さんじゃなくて山科さんとかだよね…(笑))
うん。
結構良かったんですvvv容量は少ないけども、なかなかヨイ。
……んですが、すっごく残念な事がッ!!!!(泣)
執事が万人受けしそうなタイプだけじゃない……!!!
まぁしょうがないですよね…。
好みのキャラだけだったらむしろ気持ち悪いでしょうし。
でもっ!でもッ!!!!!
お義兄さん…ッ!!!!!「どれ(誰)でも執事、やれるだろう!」的なキャスティングはどうかとッ!!!(笑)
しかも、彼らを攻略しないと大本命の山科さんを攻略できないという…ッ(号泣)
…イタいからくりにヤラれているワケなのです。。。
どうしよう…。真壁のバトラーEND終わったら契約を切ろうか悩み中(笑)←デートアプリ見たいがために頑張って真壁につれない態度を取り続け中!(そうだ…このシステムもどうよ!?ラブENDとバトラーEND(恋愛絡まないEND)両方見ないと執事とデートすら出来んッ!!!!ウマすぎるよ、スタイルウォーカーッ!!!)
そんなこんなで悩みつつも、結構面白い感じですv
執事に癒されたいアナタ、是非プレイなさってくださいませvvv
自分、日頃は…彼らと同じ方向に立ってる業種なんで…癒されてるやら学ばせていただいてるやら……(ぼそり)
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
実は最近新しいゲームが発表されまして(苦笑)
『幕末志士の恋愛事情』…と、いう。。。
こっちは最近お試しでプレイしてたんですが、結構…てか、かなりイイッ!!(笑)
『執恋』(上のゲームです)はキャラの好き嫌いがはっきりしてましたけど、これは嫌なキャラがイナイんです~~~~っ(笑)
なんてステキなのッ!!!!
唯一の難点といえば、主人公がおバカすぎる……ってコトだけ、カナ??(大問題)
あたしは別段『歴女』でもナイし。むしろ学校の日本史のテストの際には「あたしは過去は振り返らないッ!!!」と豪語してましたし(ヲイ)
そんなあたしでも…もし主人公と同じ立場になったとしたら……さすがに『坂本龍馬』『岡田以蔵』『大久保利通』『桂小五郎』『高杉晋作』あたりの名前を聞いたら……「ちょっとマズい感じにどっか昔に来ちゃったなぁ~」とか思うよッ!?(笑)
さすがに有名だよッ!!!この人たちッ!!!
その名前が引っかからない女子高生なんて、勉強してなさスギだよッ!!!(てか、勉強の問題でもない気が…)
コホン。そんなワケで、自分が過去に飛ばされたとも思わない女子高生が主人公で、そこだけはすごく引っかかるんですけど。
それを除けばお相手キャラは魅力満載な感じですvvv『執恋』からこっちにシフトしてもいいなぁ~♪
赤い糸診断によると、高杉晋作と相性が良さそうなんで(爆)彼から攻略したいなぁ~と思ってますv武市さんとか、大久保さんも好みなんですけどッ!
新撰組も攻略できる…!?かもしれないしvvv
今後、機会があったらちょこちょこケータイから攻略UPしたいですvv
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