幕恋 『高杉晋作 最終幕』
2009年12月23日 携帯アプリ「晋作さん、お水を」
「すまんな」
木箱から取り出した労咳の薬を広げて、晋作さんに渡す。
たっぷりの水で、それをぐいっと飲み干す晋作さんを見て……残り少なくなった木箱の中に視線を落とす。
こんなにちゃんと薬も飲んでいるのに、晋作さんの様子は悪化するだけのような気がする…。最近、夜になってもずっと咳が止まらない事があるし……。
そんな思いを振り払って、わたしは晋作さんを見た。
「今日はゆっくり眠れた?」
言葉に、晋作さんが嬉しそうにわたしを見返してくる。
「心配かっ?」
「そ、それは、もちろん」
「じゃあ!何故オレと一緒に寝ないっ!」
「うっ…」
最近いっつもこればっかり言ってくる晋作さん。
「は、恥ずかしいでしょ!」
「一緒の布団で寝起きすれば、オレが寝てるか寝てないかもよく分かるだろうっ!?お前の不安も、オレの不満も!一気に解決だっ!」
ま……まぁ、そうなのかもしれないけどさぁ!?けど、わたしはそういう経験もない女子高生だよ!?そんな、簡単にハイそうですかーって流れられるモンじゃないでしょっ!?
もっとこー……雰囲気と言うか、こう順序というか!!!
なんかあるでしょ!?
……考えすぎ、なのかなぁ……?
「これ以上にいい手はないぞっ!!」
……けど、これが。晋作さんなんだよねぇ……。
「またそうやって、無茶苦茶な……」
こんなに嬉しそうな顔で言い切られて。無邪気に笑う晋作さんに…どうしてもわたしも口元がゆるむ。
「おっ!どうした!?何で笑ったんだ!面白い事でもあったのなら聞かせろっ!」
布団をばさっとめくって起き上がり、わたしに向かって胡坐をかく晋作さん。
「あ。ちゃんと寝てなきゃ!」
「大人しくしているのは、性に合わないんだっ!」
「それは……そうだろうけど……」
そんなことは、今までの晋作さんを見ていれば十分すぎるほどに明らかで。
なんて言ったものかと口をつぐむと、襖の開く音がした。
「晋作!」
突然桂さんが険しい表情で部屋に入ってきた。
いつもの彼らしくもない、珍しく焦った様子で。わたしと晋作さんは顔を見合わせた。
「どうした小五郎!」
「坂本くんが襲撃された」
端的な桂さんの言葉に晋作さんが息を呑み、「無事か!?」と問うと。
「坂本くん、中岡くんが危険なようだ。……あとの二人に関しては情報がない」
「相手は!?」
「不明だ」
「っそうか……!」
「一昨日に、大政奉還を成してしまったせいだろうな」
桂さんの言葉に、晋作さんも独り言のように呟く。
「…大方、見廻りか新撰組あたりか」
桂さんも、その方向で考えていたんだろう。頷くと、黙り込む。
わたしはというと。一昨年の……あの夜を思い出して、ぎゅっと手を握り締める。
流れた血。
そんな事、もう……起こらないのではないかと……信じたかった矢先の。出来事。
「どっちにしても、岩倉卿からの倒幕の勅命は無くなったんだ。しばらくは兵を挙げる事もない。晋作はその日が来るまで、胸を治すことだけを考えて養生するんだ」
諭すような桂さんの言葉に、晋作さんが鋭い視線を投げかけた。
……まぁ、こんな事聞かされて大人しくしてろって言うのが無理な人ではあるから……。
「兵を挙げて御役に立たなければいけない時に伏せっているのは、本意ではないだろう。とにかく、今は治すことだけを考えるのが、晋作の使命だよ」
「……!」
「わたしは、岩倉卿の所に行ってくる。……後は頼んだよ」
「は、はい」
桂さんは立ち上がりながらわたしに声をかけると、慌しく部屋を後にした。
その背を見送っていると、いつも通りの晋作さんの声。
「桂の、言うとおりだな」
「う、うん」
「よし!オレは全力で養生するぞっ!!この猶予が与えられたのも、天命なのかもなっ!!」
そう言って、がっはっはと元気に笑う晋作さん。
「そ、そんなに張り切って笑っちゃ、身体に悪いよっ」
ここの所ずっとそんな事ばかりを言っているわたしを、ぐいっと捕まえて。あたまをガシガシと乱暴に撫でてくる晋作さん。
「し、晋作さん、もう静かにしてないとっ!ちゃんと寝てっ!」
「お!?やっと一緒に寝る気になったか?!」
う……。
そんな嬉しそうに聞かなくても……っ!
「な、なってませんっ」
「じゃあ、まだ寝ないぞっ!」
もぉっ!!!!こういうところ、ホンット子供みたいなんだからッ!!!
全力で養生するんじゃなかったの……??(溜息)
わたしはあたまをグリグリされながら、どうやったらこの人は大人しく寝てくれるんだろうかと…そんなことばっかり、考えていた。
「よいしょっと」
今日は天気もいいから。昼間の間にわたしのお布団を干して、今夜は晋作さんにそっちのお布団で寝てもらおう。
ちゃんと干したお布団なら、少しは胸にもいいかもしれないし。
そう思って日当たりのいい縁側にお布団を持っていくと。
縁側に先客がいた。
庭を見ながら、ひとりで座る晋作さんの後姿。
わたしは。お布団を近くに置いて傍に行く。
「晋作さん?」
「お!どこ行ってたんだ?」
「どこって……。それより、寝てなくていいの?」
「客が来てるんだ!」
「客……?」
わたしは辺りを見回した。どこに、お客さんが?
後ろの部屋にも、庭にも誰も見えないけど……。と、キョロキョロするわたしに晋作さんが突きつけた。
目の前に、晋作さんに抱え上げられる……猫。
「ね……猫?」
晋作さんに抱かれて、幾分眠そうな猫はか弱げに「ニャー」と鳴いた。
真っ白い、子猫。
「庭に迷い込んでいたんだ!さっきまで庭で一緒に駆け回っていたんだが、疲れたのか今はオレ様の膝の上だ!……随分懐かれたもんだな」
こーのーひーとーはーッ!!!!!
「懐かれたとかじゃなくって、走り回ったの!?庭をッ!!?」
「おっ!?」
また無茶して!!!
「晋作さんっ!」
わたしがまた、ちゃんと寝てて!って言おうとしたら、晋作さんが笑い出す。
「あっはっはっ!!おまえ最近、小五郎みたいだぞっ!」
「えっ?」
「小五郎が藩邸の留守をお前に任せるようになったのも、頷けるな!」
「そ…そうなの?」
「ああ。小五郎のやつ、お前がいるから安心して外に出られると、いつも言ってるぞ」
……全然知らなかった。。。
そんな風に思ってくれてたんだ。
「以前隊服を揃えた時も、お前の働きは見事だったからなっ!しかし、あの小五郎が褒めるほどとは大したものだっ!」
満面の笑みの晋作さんが続ける。
「流石はオレの女だっ!えらいぞっ!」
「わっ!」
また頭をガシガシ撫でられる。そしてそのまま視線を膝の子猫に落とすと
「よーし!!お前もだっ!」
あああ…!!子猫ちゃんも晋作さんの被害にっ!!!
すると、ガシガシ撫でられるのがイヤだったのか子猫は晋作さんの膝から飛び降りて庭の方へ駆けて行く。
「あっ!待てっ!」
「ら、乱暴にするから…」
追いかけようとする晋作さんだけど。
わたしはやんわりと止める。
「晋作さん。あんまり走らない方がいいよ?」
「んっ?」
「多分さ、あの子もおうちに帰りたかったんだよ」
「…!……そうか」
振り返った晋作さんがわたしを見て。そうして、笑った。
「そうだな!」
どかっと縁側に座りなおして、ニッと笑ってわたしを見つめてくる。
「どんなに乱暴にしても、逃げないノラ猫も近くにいるんだがな!」
突然ガバッと晋作さんがわたしを抱きしめる。
「しっ、晋作さんっ?!」
「お前も、最初はノラ猫みたいなもんだったな」
「え?」
「帰る場所もなく、不安げにみーみー鳴いてただろう?」
み…みーみー??
「な、ないてないと思うけど」
「いやっ!鳴いてた!オレ様には聞こえたんだっ!」
わたしは晋作さんに抱きしめられたまま。その言葉に少し驚く。
目をつぶって、晋作さんの背に手を回す。
「聞こえてた?」
「ああ!しっかりな。不安で堪らないという、お前の声だ。……それが聞こえたのがオレ様だけだったから、お前はオレのところへ来たんだろう?」
声が、優しい。
まるで……最初からわたしのことを特別に思っていてくれたような、そんな言い方に聞こえて。
胸の奥、どこかで小さな音が大きく広がっていく……。
「オレとお前が引き合わされたのは、天命だ」
「!」
「だから、オレ様とお前が引き合うのも当然なんだ!」
「……っあっ」
ぎゅっと、強く抱きしめられたわたしには、晋作さんの肩越しの空しか…見えなくなる。
どんどん距離がなくなる…わたしたちの影。
力のこもった腕が、わたしの背中で熱をおびていく。
「オレは……お前を、愛してる」
静かな……でも熱い、晋作さんの声。
「この身体で、おまえに一生かけてしてやれる事は───愛する事だ」
……わかってる。
わかってるよ?晋作さん。
あなたの……言葉は、ずっと。わたしにいつだってまっすぐに……気持ちを届けてくれた。
「…オレの想いを、残らずお前にやる。──オレの身体に宿る全てを」
ぐいっと身体を離されて、目の前…鼻先が触れそうなほどの距離に晋作さんの顔。
「オレを見ろっ!見続けろっ!!」
──吐息が混ざりそうな。
「忘れるな。この、俺の姿を」
──距離。
「お前に刻み付けたい」
──響く、声。
「オレが生きた証を、お前の中に残していく」
甘くて、強い言葉の後に。重ねられた晋作さんの熱い唇。
わたしはただ、目を閉じて。
その、言葉のない時間に……彼を感じる。
泣き出しそうなほど、幸せな時間。
「受け取れ……。この口付けに。───オレの全てを、込めるから」
何度も、何度も。重ねられるキスの間で、晋作さんが囁く。
「……愛してる……」
うん。
……うん。刻み付けるよ。
今の、この一瞬も。これからの、一瞬、一瞬も……。
───全て。
忘れないように。
いつか、貴方がわたしの前からいなくなる時が来ても。
わたしの中でずっと、貴方は生き続ける。
「オレはこの時代の中…、どんな最後を迎えるかは分からん。戦いに死ぬか、病に死ぬか。だがオレは!最後の時までオレの志を失わない!」
そうだね。
それが、晋作さんだと……思うよ。
わたしの、大好きな───。
「お前は、オレの姿を見続けろ!最後の、最後まで……高杉晋作の全てを、刻みつけろ」
揺らぐ視界の中、わたしの涙を無造作に拭って晋作さんが笑う。
「お前の視線を背に受けて俺は進む!振り返らず!迷わず!生き抜く!……お前の愛で、オレは永遠に、お前の中に在る」
ああ。
この人はなんて勝手なんだろう。
どんな事を言われたって、貴方が望むなら……わたしはそれを叶えたいと思う。
何があっても、叶えるから。
だから、その時が来るまではせめて一緒に居よう。
ずっと───ずっと。貴方の、傍に。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ハイ!そんなわけで最終幕ですvv花の終幕…でした。
チッ…。花とか風とか月とか……。英語とかと違ってエンディングの意味を推し量る事ができないのでなんかモヤモヤしますね……。
鳥は???鳥もありそうな終幕名ですけどね!?
さておき~!!!晋作さんの最終幕ですよッ!!!!長かったッ!!!!(泣)
別にこれのせいにするつもりはありませんが(笑)途中で風邪に倒れたり大変でした……。
いや、寝不足がダイレクトにくるタイプだってことは知ってたんですけどね…(苦笑)
晋作さん……っ。
最後の最後まで……キス止まりか……っ(がくーっ)
せめて押し倒すくらい…(爆)
まぁ、そこら辺(ラブラブなカンジ?)は配分が難しいだろうなぁ…とか思ったり。時代背景とか、ストーリー的に???
いや…時代背景がああだからこそ、昨今の草食男子なんざ存在しないだろ。とか思っちゃう…部分もあるんですけども。
ちょっと…ラブ度が思ったより上がらなくて残念……。
それならそれで、もっと……晋作さんの一方的なカンジじゃなくて主人公ちゃんからも仕掛けるような心の交流があっても良かったんじゃないのかな…なんて思っちゃうけど。
晋作さんが押しまくってて、主人公が大抵受けだから……押されまくってて抗えなかった一方通行な感じが強いわ~(苦笑)
……って、アレですよ!?このストーリー書き起こしの中では主人公も……かなり捏造して想わせてるんですけどね。……あたしが物足りなかったんで……。
ま、そんなわけで。幕恋レヴューも終幕…です(笑)
次は武市さん…攻略してみたいですけど、でも!!!こんな書き方しないんでっ!!!
まぁ…楽しかったです。物足りなさは残りますけども~~~っ!!!
「すまんな」
木箱から取り出した労咳の薬を広げて、晋作さんに渡す。
たっぷりの水で、それをぐいっと飲み干す晋作さんを見て……残り少なくなった木箱の中に視線を落とす。
こんなにちゃんと薬も飲んでいるのに、晋作さんの様子は悪化するだけのような気がする…。最近、夜になってもずっと咳が止まらない事があるし……。
そんな思いを振り払って、わたしは晋作さんを見た。
「今日はゆっくり眠れた?」
言葉に、晋作さんが嬉しそうにわたしを見返してくる。
「心配かっ?」
「そ、それは、もちろん」
「じゃあ!何故オレと一緒に寝ないっ!」
「うっ…」
最近いっつもこればっかり言ってくる晋作さん。
「は、恥ずかしいでしょ!」
「一緒の布団で寝起きすれば、オレが寝てるか寝てないかもよく分かるだろうっ!?お前の不安も、オレの不満も!一気に解決だっ!」
ま……まぁ、そうなのかもしれないけどさぁ!?けど、わたしはそういう経験もない女子高生だよ!?そんな、簡単にハイそうですかーって流れられるモンじゃないでしょっ!?
もっとこー……雰囲気と言うか、こう順序というか!!!
なんかあるでしょ!?
……考えすぎ、なのかなぁ……?
「これ以上にいい手はないぞっ!!」
……けど、これが。晋作さんなんだよねぇ……。
「またそうやって、無茶苦茶な……」
こんなに嬉しそうな顔で言い切られて。無邪気に笑う晋作さんに…どうしてもわたしも口元がゆるむ。
「おっ!どうした!?何で笑ったんだ!面白い事でもあったのなら聞かせろっ!」
布団をばさっとめくって起き上がり、わたしに向かって胡坐をかく晋作さん。
「あ。ちゃんと寝てなきゃ!」
「大人しくしているのは、性に合わないんだっ!」
「それは……そうだろうけど……」
そんなことは、今までの晋作さんを見ていれば十分すぎるほどに明らかで。
なんて言ったものかと口をつぐむと、襖の開く音がした。
「晋作!」
突然桂さんが険しい表情で部屋に入ってきた。
いつもの彼らしくもない、珍しく焦った様子で。わたしと晋作さんは顔を見合わせた。
「どうした小五郎!」
「坂本くんが襲撃された」
端的な桂さんの言葉に晋作さんが息を呑み、「無事か!?」と問うと。
「坂本くん、中岡くんが危険なようだ。……あとの二人に関しては情報がない」
「相手は!?」
「不明だ」
「っそうか……!」
「一昨日に、大政奉還を成してしまったせいだろうな」
桂さんの言葉に、晋作さんも独り言のように呟く。
「…大方、見廻りか新撰組あたりか」
桂さんも、その方向で考えていたんだろう。頷くと、黙り込む。
わたしはというと。一昨年の……あの夜を思い出して、ぎゅっと手を握り締める。
流れた血。
そんな事、もう……起こらないのではないかと……信じたかった矢先の。出来事。
「どっちにしても、岩倉卿からの倒幕の勅命は無くなったんだ。しばらくは兵を挙げる事もない。晋作はその日が来るまで、胸を治すことだけを考えて養生するんだ」
諭すような桂さんの言葉に、晋作さんが鋭い視線を投げかけた。
……まぁ、こんな事聞かされて大人しくしてろって言うのが無理な人ではあるから……。
「兵を挙げて御役に立たなければいけない時に伏せっているのは、本意ではないだろう。とにかく、今は治すことだけを考えるのが、晋作の使命だよ」
「……!」
「わたしは、岩倉卿の所に行ってくる。……後は頼んだよ」
「は、はい」
桂さんは立ち上がりながらわたしに声をかけると、慌しく部屋を後にした。
その背を見送っていると、いつも通りの晋作さんの声。
「桂の、言うとおりだな」
「う、うん」
「よし!オレは全力で養生するぞっ!!この猶予が与えられたのも、天命なのかもなっ!!」
そう言って、がっはっはと元気に笑う晋作さん。
「そ、そんなに張り切って笑っちゃ、身体に悪いよっ」
ここの所ずっとそんな事ばかりを言っているわたしを、ぐいっと捕まえて。あたまをガシガシと乱暴に撫でてくる晋作さん。
「し、晋作さん、もう静かにしてないとっ!ちゃんと寝てっ!」
「お!?やっと一緒に寝る気になったか?!」
う……。
そんな嬉しそうに聞かなくても……っ!
「な、なってませんっ」
「じゃあ、まだ寝ないぞっ!」
もぉっ!!!!こういうところ、ホンット子供みたいなんだからッ!!!
全力で養生するんじゃなかったの……??(溜息)
わたしはあたまをグリグリされながら、どうやったらこの人は大人しく寝てくれるんだろうかと…そんなことばっかり、考えていた。
「よいしょっと」
今日は天気もいいから。昼間の間にわたしのお布団を干して、今夜は晋作さんにそっちのお布団で寝てもらおう。
ちゃんと干したお布団なら、少しは胸にもいいかもしれないし。
そう思って日当たりのいい縁側にお布団を持っていくと。
縁側に先客がいた。
庭を見ながら、ひとりで座る晋作さんの後姿。
わたしは。お布団を近くに置いて傍に行く。
「晋作さん?」
「お!どこ行ってたんだ?」
「どこって……。それより、寝てなくていいの?」
「客が来てるんだ!」
「客……?」
わたしは辺りを見回した。どこに、お客さんが?
後ろの部屋にも、庭にも誰も見えないけど……。と、キョロキョロするわたしに晋作さんが突きつけた。
目の前に、晋作さんに抱え上げられる……猫。
「ね……猫?」
晋作さんに抱かれて、幾分眠そうな猫はか弱げに「ニャー」と鳴いた。
真っ白い、子猫。
「庭に迷い込んでいたんだ!さっきまで庭で一緒に駆け回っていたんだが、疲れたのか今はオレ様の膝の上だ!……随分懐かれたもんだな」
こーのーひーとーはーッ!!!!!
「懐かれたとかじゃなくって、走り回ったの!?庭をッ!!?」
「おっ!?」
また無茶して!!!
「晋作さんっ!」
わたしがまた、ちゃんと寝てて!って言おうとしたら、晋作さんが笑い出す。
「あっはっはっ!!おまえ最近、小五郎みたいだぞっ!」
「えっ?」
「小五郎が藩邸の留守をお前に任せるようになったのも、頷けるな!」
「そ…そうなの?」
「ああ。小五郎のやつ、お前がいるから安心して外に出られると、いつも言ってるぞ」
……全然知らなかった。。。
そんな風に思ってくれてたんだ。
「以前隊服を揃えた時も、お前の働きは見事だったからなっ!しかし、あの小五郎が褒めるほどとは大したものだっ!」
満面の笑みの晋作さんが続ける。
「流石はオレの女だっ!えらいぞっ!」
「わっ!」
また頭をガシガシ撫でられる。そしてそのまま視線を膝の子猫に落とすと
「よーし!!お前もだっ!」
あああ…!!子猫ちゃんも晋作さんの被害にっ!!!
すると、ガシガシ撫でられるのがイヤだったのか子猫は晋作さんの膝から飛び降りて庭の方へ駆けて行く。
「あっ!待てっ!」
「ら、乱暴にするから…」
追いかけようとする晋作さんだけど。
わたしはやんわりと止める。
「晋作さん。あんまり走らない方がいいよ?」
「んっ?」
「多分さ、あの子もおうちに帰りたかったんだよ」
「…!……そうか」
振り返った晋作さんがわたしを見て。そうして、笑った。
「そうだな!」
どかっと縁側に座りなおして、ニッと笑ってわたしを見つめてくる。
「どんなに乱暴にしても、逃げないノラ猫も近くにいるんだがな!」
突然ガバッと晋作さんがわたしを抱きしめる。
「しっ、晋作さんっ?!」
「お前も、最初はノラ猫みたいなもんだったな」
「え?」
「帰る場所もなく、不安げにみーみー鳴いてただろう?」
み…みーみー??
「な、ないてないと思うけど」
「いやっ!鳴いてた!オレ様には聞こえたんだっ!」
わたしは晋作さんに抱きしめられたまま。その言葉に少し驚く。
目をつぶって、晋作さんの背に手を回す。
「聞こえてた?」
「ああ!しっかりな。不安で堪らないという、お前の声だ。……それが聞こえたのがオレ様だけだったから、お前はオレのところへ来たんだろう?」
声が、優しい。
まるで……最初からわたしのことを特別に思っていてくれたような、そんな言い方に聞こえて。
胸の奥、どこかで小さな音が大きく広がっていく……。
「オレとお前が引き合わされたのは、天命だ」
「!」
「だから、オレ様とお前が引き合うのも当然なんだ!」
「……っあっ」
ぎゅっと、強く抱きしめられたわたしには、晋作さんの肩越しの空しか…見えなくなる。
どんどん距離がなくなる…わたしたちの影。
力のこもった腕が、わたしの背中で熱をおびていく。
「オレは……お前を、愛してる」
静かな……でも熱い、晋作さんの声。
「この身体で、おまえに一生かけてしてやれる事は───愛する事だ」
……わかってる。
わかってるよ?晋作さん。
あなたの……言葉は、ずっと。わたしにいつだってまっすぐに……気持ちを届けてくれた。
「…オレの想いを、残らずお前にやる。──オレの身体に宿る全てを」
ぐいっと身体を離されて、目の前…鼻先が触れそうなほどの距離に晋作さんの顔。
「オレを見ろっ!見続けろっ!!」
──吐息が混ざりそうな。
「忘れるな。この、俺の姿を」
──距離。
「お前に刻み付けたい」
──響く、声。
「オレが生きた証を、お前の中に残していく」
甘くて、強い言葉の後に。重ねられた晋作さんの熱い唇。
わたしはただ、目を閉じて。
その、言葉のない時間に……彼を感じる。
泣き出しそうなほど、幸せな時間。
「受け取れ……。この口付けに。───オレの全てを、込めるから」
何度も、何度も。重ねられるキスの間で、晋作さんが囁く。
「……愛してる……」
うん。
……うん。刻み付けるよ。
今の、この一瞬も。これからの、一瞬、一瞬も……。
───全て。
忘れないように。
いつか、貴方がわたしの前からいなくなる時が来ても。
わたしの中でずっと、貴方は生き続ける。
「オレはこの時代の中…、どんな最後を迎えるかは分からん。戦いに死ぬか、病に死ぬか。だがオレは!最後の時までオレの志を失わない!」
そうだね。
それが、晋作さんだと……思うよ。
わたしの、大好きな───。
「お前は、オレの姿を見続けろ!最後の、最後まで……高杉晋作の全てを、刻みつけろ」
揺らぐ視界の中、わたしの涙を無造作に拭って晋作さんが笑う。
「お前の視線を背に受けて俺は進む!振り返らず!迷わず!生き抜く!……お前の愛で、オレは永遠に、お前の中に在る」
ああ。
この人はなんて勝手なんだろう。
どんな事を言われたって、貴方が望むなら……わたしはそれを叶えたいと思う。
何があっても、叶えるから。
だから、その時が来るまではせめて一緒に居よう。
ずっと───ずっと。貴方の、傍に。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ハイ!そんなわけで最終幕ですvv花の終幕…でした。
チッ…。花とか風とか月とか……。英語とかと違ってエンディングの意味を推し量る事ができないのでなんかモヤモヤしますね……。
鳥は???鳥もありそうな終幕名ですけどね!?
さておき~!!!晋作さんの最終幕ですよッ!!!!長かったッ!!!!(泣)
別にこれのせいにするつもりはありませんが(笑)途中で風邪に倒れたり大変でした……。
いや、寝不足がダイレクトにくるタイプだってことは知ってたんですけどね…(苦笑)
晋作さん……っ。
最後の最後まで……キス止まりか……っ(がくーっ)
せめて押し倒すくらい…(爆)
まぁ、そこら辺(ラブラブなカンジ?)は配分が難しいだろうなぁ…とか思ったり。時代背景とか、ストーリー的に???
いや…時代背景がああだからこそ、昨今の草食男子なんざ存在しないだろ。とか思っちゃう…部分もあるんですけども。
ちょっと…ラブ度が思ったより上がらなくて残念……。
それならそれで、もっと……晋作さんの一方的なカンジじゃなくて主人公ちゃんからも仕掛けるような心の交流があっても良かったんじゃないのかな…なんて思っちゃうけど。
晋作さんが押しまくってて、主人公が大抵受けだから……押されまくってて抗えなかった一方通行な感じが強いわ~(苦笑)
……って、アレですよ!?このストーリー書き起こしの中では主人公も……かなり捏造して想わせてるんですけどね。……あたしが物足りなかったんで……。
ま、そんなわけで。幕恋レヴューも終幕…です(笑)
次は武市さん…攻略してみたいですけど、でも!!!こんな書き方しないんでっ!!!
まぁ…楽しかったです。物足りなさは残りますけども~~~っ!!!
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