翌日。
朝っぱらからやってきた高杉さんは、わたしのスクバの中身を物色中。
「きゃー!!ダメダメ!それ、下着なんだから!」(スクバに下着?合宿に来たならちゃんと別に色々持ってきただろう?大した期間じゃなかったんだっけ??)
かなり珍しいモノ好きであるらしい…のだが。
そう思うわたしの前で、急に高杉さんが静かになる。何かと思って見ると、わたしの竹刀を手に取ってマジマジと見つめていた。
最初はこれはわたしのものだとか、そんなことを話していて。実家が剣道の道場だから小さな頃から竹刀を持っている……なんてことを言ったら「ますます気に入った!」なんて言われて、困ってたんだけど。
ふと、真面目な表情に戻って高杉さんが呟く。
「未来は、女も剣を持たねばならないほど、荒れた世になってしまっているのか……」
しまったっ!!!!そう来るのかッ(笑)
どうやら多大な誤解を与えた様子っ!!!
慌てて、未来の日本は安全でとりあえず戦争もなく、誰も武器を持ち歩いていない!と説明すると、
「そうか。そうなのか。よかったなぁ……」
と、また子供のようなキラキラした笑顔で笑った。
「高杉さん、嬉しそうですね」
「当たり前だ!オレ達が今、こうやって戦っているのは、誰のためでもない。未来の日本のためなんだからな!」
皆がいつも安心して、笑っていられればいい。ただそれだけだ。
笑ってそう言う、高杉さんの顔は晴れやかで。
日頃は思わないわたし達の未来の生活が……確かにこの人達の手で拓かれたものなのだ、と少しだけ思って。
高杉さんをステキな人だ、と、ちょっとだけ、思った。

その後、寺田屋へ行くと言う高杉さんにわたしもついていくことにした。
以蔵のことも気になるし。龍馬さんもいるわけだし。
たどり着いたら、龍馬さんはあの人好きのする笑顔で出迎えてくれる。
ちょっと前に出会ったばっかりなのに、不自由がないか、とか気遣ってくれて。本当、いい人~♪
ま、対する以蔵は例のあの調子でそっけないワケですが。
「なんでお前が、ここにいるんだ」
とか言った以蔵をたしなめてくれる龍馬さん。…やっぱりいい人(笑)
それに、高杉さんも昨日の高杉さんたちの以蔵への応援は、わたしが言ったからなんだと口を挟んで助勢してくれる。
そんなこんなで高杉さんに褒めちぎられ、ちょっと照れてぼーっとしてるところに彼の嬉しそうな声が聞こえて現実に引き戻される。
「なにしろこいつは、オレ様の女だからな!」
「なっ!何を言い出すんですか!」(人を惚れっぽい女のようにっ!)
「照れのうてもいいぜよ」←龍馬(照れてないっ!てか、受け入れないでーーー!!!まだ出会ったばっかじゃん~!!!)
「……」←以蔵(ああっ!一番まともな反応!?けど、無言も怖い…(泣))
違うと反論しようにも「こう見えて、奥ゆかしいところもあってな!まぁ、聞き流してやってくれ」とか、どんどん自分の都合のいいように事実を捻じ曲げる高杉さん。
しかも、そこでいきなり話の方向転換が(苦笑)
恐らく今日ここへ来たことの本題であろう話を不意に切り出す高杉さんに、わたしももうこれ以上何も言えなくて。
……酷い誤解をそのままに、泣き寝入り。
「いい加減、坂本の冗談にも飽きたんだがなぁ」
「冗談?」←龍馬
「幕府が朝廷に、政治権を返したりするものか。よしんば、それが叶ったとしても、だ。慶喜公が、実権まで手放す筈がない!朝廷が蝕まれるだけじゃないのか!?」(スミマセン、史実とか詳しくないんで(笑)そのまんま抜粋)
いきなり繰り広げられるお話に、ポカーンとしていたわたしに気を遣って…なのか、聞かれたくない話だから、なのか二人は寺田屋の奥で会合をすることにして、わたしは縁側で日向ぼっこをして高杉さんを待つことに。
「ちゃんと大人しく待っているんだぞ?」
「大人しくって、子供じゃありませんから!」
「ははははは!そんなことは、わかってる!そもそも、オレはガキを口説く趣味はない!」
……サラっとカッコイイこと言いやがって~~~(笑)
そう言うなり高杉さんが奥の部屋へ消えていく。


しかし、わたしは自分で思っているよりも、もっとずっと子供だったらしい。


待ちくたびれたわたしは、退屈を紛らわす為にちょっとだけ外に出てみることに……(汗)

状況もわからず歩いていた今までと違って、とりあえず過去に来た(かもしれない)と思って歩いてみると、元の京都とは全然違う場所なのだと実感する。
そんなことを考えて歩いていると、ふいに後ろから声をかけられて…振り返った。
立っていたのは男の人、二人組で。(土方さんと沖田さんです~vvv)
わたしをじっくり見て「珍妙、珍妙」と連呼。(なんて失礼な。影で言いなさいよ(ぇ))
声をかけたのは(主人公は知りませんが)沖田さんで。
格好が珍しすぎたのでわざわざ声をかけてみたらしい。そんでもって、声をかけた割に二人で会話が成立してて、敵なら誰であれ斬る!とか言ってる土方さん達が恐ろしすぎて逃げ出すわたし。(イヤ、フツーに怪しいよ、この人たち(笑)そりゃ、制服着てるわたしの方がこの世界では怪しいんでしょうけども!!!)
しかし、それがマズかった……。
気がつけばすっかり暗くなる辺りと、すっかり迷子になるわたし……。
時間で言えば、そんなに遅くない時間帯だと思うけど通りには誰の姿も見えなくなっている。
不意に、大人しく待っているんだぞ?と、言った高杉さんの顔が脳裏をよぎる。
言うとおりにしておけば良かったな…とも思うけど、もう後の祭りだし。こんなに真っ暗だし。そもそも一昨日たまたま出会って、たまたま家に泊めただけの通りすがりの人間だし。
誰も探しになんて来てくれないよね……。
ここに来た瞬間から一人だったハズなのに、今、本当にそれを痛感して。
本当に悲しくなって涙が出そうになった。
と、前方からこっちに向かってやってくる、2つの人影。
よっし!これで道が聞ける!!!高杉さんのところへ戻れる!!!
そんな思いで二人組に声をかける……んだけど、今日はどうも二人組との相性が最悪の日だったらしい……。
道を聞いた瞬間に、声をかける相手を間違ったことに気付く。
返ってくる呂律のまわらない言葉と、香るお酒の匂い。
「やっぱりいいですっ!」
言って逃げ出すも、一人に腕を掴まれる。
イヤ~~~~!!!!ちょっと待ってナニ、このベタな展開~~~ッ(爆)
しかしそこは死に物狂い!わたしは腕を振り払って逃げ出した。
ピッチピッチの運動部所属女子高生と、酒喰らってる男だぞ!?そんなもんこっちが……!
ってコケたーーーッ!?(泣)(そんなどんくささに、自分との共通点を見出したくなかった……)
そして訪れる最大のピンチ。
助けて、なんて言って叫べる名前なんてわたしには限られてる、けど。
「…た…っ!高杉さーーんっ!!!」
そんな中で無意識に呼んだのは高杉さんで。言葉とほとんど同時にわたしに迫っていた男たちが怯む声が聞こえた。
そぉっと閉じていた目を開くとそこには。
「よぉ、待たせたな!」
月の光を背に、不敵に微笑う高杉さんが、いた。
ステレオタイプの悪役なのか(禁句)お約束の「誰だ、手前ぇは!!」とか言っちゃう相手に、高杉さんはニヤリと笑って口を開く。
「知らざあ言って聞かせやしょう。浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の…」
あぁ、これ、この間高杉さんが藩邸でやってた歌舞伎の……。
気が動転してるのか、この状況にそぐわないことに思い至ったわたし。……と、高杉さんの前で男が吠える。
「ふざけてんのか、手前ぇ!!」
「ふざけてるのは、お前らの方だろうがっ!!」
さぞや相手方もびっくりしたでしょう…。気持ちよさそうに口上してた高杉さんの空気が一瞬にして冷たく変わって、怒鳴られて。
「このオレの女を追いまわしやがって、ただで済むと、思うなよ!!」
刀を抜いて、ビッと相手に向かって構えた。
相手は酒に酔った男…ではあったけど。それなりに使えるほうだったらしい。高杉さんの構えを見て、剣術に長けた人間だと気付いて慌ててる。
「遅いっ!!後悔は、あの世でしやがれっ!!」
高杉さんの言葉と殺気に、本気を感じる。これは……ヤバ…い!?
「ダメーっ!!」
わたしは、刀を振り下ろそうとした高杉さんに思い切りしがみついた。
「高杉さん!!斬っちゃダメっ!!」(女子高生にナニ見せるですかーーーッ!!!)
「なんだ!何故止める!」
「そんなことしたらダメっ!」(うなされる!!(泣))
「バカ野郎!!お前のためだろうが!!」
「でもっ」
そんな押し問答をわたしと高杉さんで繰り広げるうちに、相手を『高杉晋作』だと知った男たちが逃げ出した。……それはもぉ、すっごい速さで。
襲われた状況を回避したこと、高杉さんが来てくれたこと、誰も怪我をしなかったこと……色んなイミでほっとして、わたしの目に涙が滲む。
「おい、大丈夫だったか?」
今はもう、いつものように。高杉さんがそう聞いてくる。
「あ、あまり無茶しないで下さい!」
「無茶?オレがいつ無茶をしたんだ?」
特に相手の命を奪うつもりでもなかったし、何が無茶なんだ…?とか首をひねってた高杉さんが、不意ににやぁっと笑う。
「なんだ、オレのことがそんなに心配だったのか!そうならそうと、言えばいい!」
…なんて都合のいい解釈ばっかりできる頭なんだ……(苦笑)
そうも思ったけど、確かにその要素もなくはなかったのであえて何も言わずに。
わたし達は夜の大通りを歩き始めた。
いつか、わたしの肩に高杉さんの腕が回り、身体を引き寄せられる。
高杉さんは歩きながら。戸惑うわたしを見ることもなく、言う。
「いいか?だから、オレの側にいつも居ろ」
「はい……だけど……」
「ん?なんだ?」
「どうしてわたしがいる場所が、わかったんですか?」
素朴な疑問に、高杉さんは大笑いする。
「惚れた女の居場所くらい、わからなくてどうする。それにな……」(キュンv)
「それに?」
「お前を最初に襲うのは、このオレ様だ!!」(あぁ。さっきちょっと感動して損した(笑))
「なっ!!」
「いいか?お前は誰にもやらんぞ!」
言って笑いながら、わたしの肩をバンバン叩く高杉さん。
……惚れさせてやるとか言うわりに、ふざけてばかりなんだから!
と。
そこで、気付いた。わたしに触れる、高杉さんの腕と。身体。
まだ少し肌寒い夜、なのに。
彼の身体が熱くて。そして、汗ばんでいる。
「ん?どうした?」
「…うぅん。なんでもないです」
「なんだ、おかしな奴だな」
そう言って真っ直ぐ前を見つめる高杉さんの横顔をそっと、盗み見る。
高杉さんは「惚れた女の居場所なんて」とか、冗談のように言ったけど。
ひょっとして、すごく走って、一所懸命に探してくれたのかもしれない……。
そう思い至って、なんだか申し訳ないような、嬉しいような。
そんな複雑な気持ちを抱えている自分に気付いた……。


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ハイ。
そんな甘酸っぱい感じで、第参話終了です。
こんだけ長いストーリー書いてたら、莫大な時間がかかって大変です。暇な時しか出来ないですね…(苦笑)
ちょっと今回、小説風味にしてるワケなんですけど(時々端折って、時々捏造してますけど)、コレって大丈夫なんだろうか…。色々と。いや、さわりがあればソッコー削除しますんで、こっそりコメントへ…(低姿勢)

高杉さん、超カッコ可愛いんですけど~~~!!!ギャップに萌えるんですけど~!!
子供←→大人とか、笑顔←→真剣とかv振り幅大きくてキュンキュンするッ!
正直、赤い糸診断だけを頼りにやってましたけど(そうじゃなかったら、好みは意外と武市さんでした(爆))、それ以上にイイ…(泣)
スゴいよ『幕恋』
スゴいけど、……これ、ホントに二週間ほど書けるの?あたし…(苦悩)


今日の選択肢
子供じゃありませんから(花)
無茶しないでください(多分、「来るのが遅いです」が花)

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